− 土の話 −
通常 陶芸に使う土を 陶土 と呼ぶ。陶器は 粘土 磁器は陶石(石英を多く含む)から
作られる焼き物の土はその辺にある土はなんでも使えるわけではありません。焼いて締まる土で
ないと使えないのです。
今も栄えている焼き物の産地は必ず好い土が産出された所にある。その地の陶土の特徴を
して、焼き物を作っている。備前土などは備前地方以外ではほとんどとれなく、独特の土味を
生かした 焼き方が好まれている。
織部 角皿
私の好きな土はざっくりとした土味が出せて、織部や志野の色合いが上手く出せる美濃の土 五斗蒔土や志野土、
焼締めの土は何種類かの信楽の土をブレンドして、好きな緋色を出している。昨今の陶芸ブームのお陰で志野土でも
信楽土でも日本全国の土が容易に手に入る好い時代である。
−釉薬の話−
日本の釉薬は大きく分けて植物の灰を使った灰釉系と銅や鉄などを使った 鉱物系に分けられと言われ
ている。あの何とも言えない深緑色の織部はわたくしの最も好きな釉薬の一つである。 この織部は
600年前の茶人 古田織部が好んだ焼き物が織部好みと呼ばれ、今では緑色は酸化銅の色の焼き物を織部と
総称しています。作家は独自の釉薬と土 そして、焼き方でその個性を競っている。志野は当時日本では
造れなかった中国の白い焼き物白磁を真似て何とか白い焼き物を作りたいと願って、出来たものと言われる。
しかし白磁は全く違った白い焼き物が出来上がったのである。それが志野なのである。
長石という白い石を砕いて作った釉薬で、茶陶として愛されている志野これも桃山時代に完成されたと言われる。
あの国宝に指定されている 卯の花垣 の志野茶碗もその時代にできあがったと言われる。
科学万能の何でも出来る現代、まだあの志野茶碗を超えるものは今だ生まれていない。 私も志野が大好きで
は何度挑戦しても今だ 納得のいく志野は焼けていない。
松灰釉に代表される 土灰釉も実に味わいが深くておもしろい。 家内の実家 群馬の榛名山の麓に住む91才の
母親が風呂釜で焼いてくれた 栗の木の皮や,いがの灰、そして、その辺の木の枝を燃やした雑木灰を使った土灰を
使って釉薬を造っている。栗の灰から作る釉薬は柔らかい緑がかったクリーム色の実にいい味を出してくれる。
−窯の話 −
世の陶芸家達の殆どは超アナログ人間のようだ。 私は 最新のコンピュータ付きの電気窯で焼いている。
電気窯は炎がない
ので面白くないと言う方が多い ましてやコンピュータ など信用もしていないし、触れようともしないのである。
私は技術や育ちの 陶芸家 今のコンピュータのすばらしさは十分承知している。 使える好い道具は何でも使いたい。
確かに登窯や穴窯は 焼締めに関しては面白いものが出来ることも事実である。 備前や伊賀、信楽などの焼締は炎が直接
かかる登り窯や穴窯の薪窯には勝てない。しかし登窯だから好いものが出来ると信仰みたいに思い込んでいる人が
いるが、やはり好いもの好いしダメなものはダメである。
備前で緋襷(ひだすき)は電気窯が好いという有名な作家もいる。私も緋襷は難なく出すことができるので、
不自由はしていない。昔は志野は織部など釉薬をかけたものは 登窯や穴窯しかないので サヤ鉢を使って焼いていた。
今では煙の出ない電気窯やガス窯のほうが確実に焼けるのです。
窯の温度コントロールの大変さは並大抵のことではない。コンピュータを使って、自由に確実に温度制御が
出来ることは還暦を過ぎた人間にとって誠に有難いことである。 私の窯は 新柳北新 のコンピュータ付
きの電気窯SR−12EF200V12KV、ガスにて還元焼成。小型ながらシャトル付きなので老人には
誠に優しい窯である。