湘南モーツァルト愛好会
平成9年3月23日
モーツァルトとJ.S.バッハのオルガン曲
<休 憩>
パイプオルガン演奏 越原由香 井上太郎モーツァルトは少年時代からオルガンの演奏で人々を驚かせていた。例えば十三歳の時に旅先のヴェローナの教会で演奏した際には、現代のロックの人気歌手の出演さながらに、群集が熱狂したと報告されている。 モーツァルト自身「オルガンはあらゆる楽器の王様」と言っており、彼の死後、妻のコンタンツェは「モーツァルトの好きな楽器はオルガンでした。オルガンの演奏にかけては、あの人の右に出る者はいませんでした」と語っている。 しかし残念なことに、モーツァルトは厳密な意味でのオルガンの独奏曲は1曲も残していないのである。 オルガン・コンチェルトの形で書かれた教会ソナタのほかには、機械仕掛けの自動オルガンのための曲しかない。つまり彼は自分の即興演奏を五線譜に書き留めておかなかったのである。 今日のプログラムの3曲は、いずれも時計と連動する機械仕掛けのオルガンのための作品で、1790年から91年、つまり死の年かその前年に書かれたものである。これらは当時ウィーンにあった、英雄ラウドン元帥の霊廟のために書かれたもので、当時の広告によると毎時ごとに追悼音楽として鳴らされたという。 モーツァルトが1789年にライプツィヒを訪れ、バッハゆかりの聖トーマス教会のオルガンを弾いた時、かつてバッハの弟子であった老楽長は「師がよみがえったようだ」と言ったというエピソードが残されている。このようにモーツァルトはバッハの作品を徹底的に研究し、手本としたのである。 それでは個々の曲の解説に移ろう。 バッハ:トッカータとフーガ ニ短調 BWV.565パイプオルガンのあらゆる曲の中で最も有名なこの傑作には、20代前半のバッハの奔放な情熱のほとばしりがこめられている。ストコフスキーのオーケストラ編曲で聴かれた方も多いだろう。 モーツァルト:幻想曲 ヘ短調 K.594霊廟の音楽にふさわしいヘ短調の静かなアダージョで始まり、続いて勇壮なヘ長調のアレグロが繰り返され、再びアダージョに戻る、印象深い曲である。 バッハ編曲:コンチェルト ニ短調 BWV.596バッハは同時代のイタリアの作曲家ヴィヴァルディの作品に興味を持ち、オルガン独奏用に編曲を試みている中の一つで、原曲は《調和の霊感》作品3の11。アダージョを二つ含む四つの楽章よりなる。 バッハ:トリオ・ソナタ ハ短調 BWV.526三声部の三つの楽章よりなるこの曲は、変ホ長調の美しいラルゴを間に置き、両端楽章はハ短調で書かれている。曲想と構成が見事に調和した傑作。 モーツァルト:アダージョ ヘ長調 K.616恐らく楽器の制約のためと思われる高い音域だけで作られ、その天国的な響きは類がない、珠玉の名品。 バッハ:コラール「目覚めよと呼ぶ声あり」 BWV.645プロテスタントの礼拝で唱われたコラールを装飾する形の曲をバッハは沢山書いており、これもその一つ。原曲はカンタータ第140番の第4曲。中声部のコラールといきいきした上声部の対照が面白い。 バッハ:フーガ ト短調 BWV.578「小フーガ」として親しまれている曲。作曲者の20歳前後の作品と考えられている。 モーツァルト:幻想曲 ヘ短調 K.608一分の隙もない構成と、魅力的な楽想が渾然一体となった傑作。雄渾な開始に続いて美しいフーガが始まり、それが終わると変イ長調の静かなアンダンテがしばらく続き、再び冒頭の部分が繰り返される。 越原由香のプロフィール東京芸術大学音楽学部器楽オルガン卒業。オルガンを秋本道雄、酒井多賀志、ピアノを米元えりの各氏に師事。1992年よりピアノ、声楽オルガンによる演奏グループを結成して定期的に演奏会を開催。その他宗教曲を中心に合唱団の伴奏、通奏低音に参加。 現在カトリック神田教会オルガニスト、平和学園 オルガン講師、日本女子大学通信課程非常勤講師、 日本オルガニスト協会正会員。 |
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