第39回例会の内容紹介


平成9年9月13日

プログラム

ヴァイオリンとピアノのデュエット

ソナタ ト短調 K.301
ソナタ ホ短調 K.304
ソナタ ハ長調 K.296

ロンド ハ長調 K.373
ソナタ 変ロ長調 K.454



ヴァイオリン  鈴木 理恵子

ピアノ     松谷 園子



 曲目解説

              井上太郎  




モーツアルトのヴァイオリン・ソナタと今日普通に呼ばれている曲を、作者自身はヴァイオリンを伴うクラヴィアソナタと呼んでいた。それは彼がいつもクラヴィアを弾いていたからで、これらはソナタまたデュエットとするのが妥当であろう。

●ソナタ ト長調 K.301
 1778年1月から2月にかけて書かれたと考えられる4曲のソナタはいずれも2楽章形式で、繊細な美のつらなりを作り出している。中でもこの曲の人気は高い。
 第1楽章 アレグロ・コン・スピリートは、なだらかな開始が魅力的で、楽器相互の絡み合いが美しい。
 第2楽章 アレグロもト長調だが、中間にはト短調のシチリア舞曲風の部分がある。

●ソナタ ホ短調 K.304
 このジャンルで唯一短調で書かれたこの曲は、1778年にマンハイムで書き始められ、母を旅先で失ったパリで完成されたと考えられている。
 第1楽章 アレグロの冒頭にユニゾンで奏される主題は、聞き手に深い孤独感に引き込まずにはおかない。これと対照的な激しい性格のモチーフが、再現部冒頭で一緒になるところは、心をえぐるばかりである。
 第2楽章 テンポ・ディ・メヌエットの冒頭主題はモーツァルトの感じやすい魂のつぶやきのようである。中間にホ長調の部分があるが、憂いは晴れない。

●ソナタ ハ長調 K.296
 1778年3月に完成された、全3楽章よりなるこの曲は、マンハイムを後にしてパリに向かったときに、弟子の少女に贈ったもので、親しみやすく楽しい。
 第1楽章 アレグロ・ヴィヴァーチェの実に生き生きした音楽は時にユーモラスでもある。
 第2楽章 アンダンテ・ソステヌートは、クリスティアン・バッハのヘ長調のアリア《甘いそよ風》による変奏曲である。なだらかな音楽の流れが快い。 第3楽章 アレグロは、再びハ長調に戻り、活気に満ちた音楽が展開される。

●ロンド ハ長調 K.373
 この曲の自筆楽譜に書かれた1781年4月2日の日付は、ウイーンに来ていたコロレード大司教によって開かれた演奏会の1週間前に当たる。原曲はオーケストラの伴奏。酒脱な味わいのある素敵な作品である。

●ソナタ 変ロ長調 K.454
 イタリアの優れたヴァイオリン奏者ストリナサッキのために書かれたこのソナタは、1784年4月29日に皇帝ヨーゼフ二世臨席のもとにウイーンのケルントナー門劇場で初演されたもので、モーツアルトのこのジャンルにおける最高の作品の一つである。ところが、演奏会当日までにピアノのパートを書き上げる時間が無く、モーツァルトは楽譜無しで演奏したという。
 第一楽章はラルゴの堂々とした序奏で始まり、2つの楽器は黄金の均衡を保っている。アレグロの溌刺とした第一主題ではじまる。展開部は半音階と短調によって情熱的なロマンを感じさせる。再現部は単純でなく、推移部に現れた主題を駆使したポリフォニックな部分もあって、変化に富んでいる。
 第二楽章は変ホ長調で書かれたアンダンテで、ヴァイオリンが奏でる伸びやかな第一主題で始まる。展開部は哀感をたたえた変ロ長調で開始し、それがロ短調からハ短調と意表をつく転調を重ねていく。このあたりのロマンティックな美しさは特に印象深い。再現部の後半は一段と精妙さを深めている。
 第三楽章は親しみ易い主題のロンド。中間にト短調の部分が影を投げるが、終始なごやかな光に溢れる。


プロフィール



鈴木 理恵子



横浜市出身。桐朋学園大学音楽部、同研究科を経て1985年奨学金を受けアメリカ・アスペン音楽祭に参加。1987年にはニース音楽祭にゲスト・アーティストとして招かれ、世界のトップ・アーティストと共演した。インディアナ大学でギンゴールド氏に師事。アメリカ各地で演奏後、1991年帰国。日本デビュー後は各地でリサイタルを開き、人気は急上昇している。サイトウ・キネン・オーケストラのメンバー。現在、新日本フィルハーモニー交響楽団の副コンサートマスター。

松谷 園子



桐朋学園大学を卒業後、米国インディアナ州立大学のアーティスト・ディプロマコースを終了し1992年帰国。ピアノばかりでなく、チェンバロ奏者としても活躍。現在、桐朋学園大学非常勤講師。
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