第153回例会の内容紹介


松村秀明と仲間達によるモーツァルトの交響曲(室内楽版)

2016.3.6 14:00〜17:00藤沢リラホール(第153回)

出演::松村 秀明(Pf)  片爪 大輔(Fl) 
     佐原 敦子(Vn) 灘尾 彩 (Vc)

曲目:
モーツァルト:モーツァルト作曲

♪歌劇「劇場支配人」序曲

♪交響曲第36番ハ長調「リンツ」K.425

♪交響曲第41番ハ長調「ジュピター」K.551


当日のプログラムより

 曲 目 解 説
                                               井上太郎

♪モーツァルト:歌劇「劇場支配人」序曲
 これは1786年1月、皇帝ヨーゼフ2世から依頼された作品でオーケストラの編成は弦楽器が5部つまり第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ビオラ、チェロ、コントラバス。管楽器はフルート、オーボエ、クラリネット、ファゴット、ホルン、トランペット、それにティンパニが入る充実した内容の序曲。

♪モーツァルト:交響曲第36番ハ長調「リンツ」K.425
  この作品には以前から、たった4日間で作ったという伝説がある。その根拠は父親宛ての1783年10月31日付の手紙で、それによるとモーツァルトは11月4日に旧知のトゥーン伯爵のためにここで音楽会を開くのだが、あいにく交響曲を1曲も持ってきていないので、大至急新曲を作るつもりだとある。しかしたった4日間で交響曲が作れるわけはない。彼は父親に旅先でもこんなに仕事をしているのだと言いたかっただけである。
 実際の仕事は10月27日にザルツブルグでミヒャエル・ハイドンからプレゼントされた交響曲を演奏したと考えられる。ハイドンはザルツブルクの大司教から作曲の注文を受けたのに、体をこわしてできなかったのをモーツァルトが代作する。そのお礼にもらった曲なのだが、伯爵はモーツァルトの交響曲と思って聞いただろう。つまり「リンツ」交響曲は4日間に作られたのではなく彼がリンツにいた11月中に作られたとするのが正しい。
 編成は弦5部にオーボエ、ファゴット、ホルン、トランペット各2とティンパニである。
第1楽章はリズミックなアダージョで始まる。モーツァルトが交響曲の序曲として書いた初めてのアダージョである。序奏の最後はハ長調のドミナント(ソ・シ・レ)の和音で止まる。そこからアレグロ・スピリトーソの第1主題が始まる。堂々たるものの中に微妙な転調が現れる。第2楽章はヘ長調のアンダンテ。荘重な趣を持つ素晴らしい楽章だ。第3楽章のメヌエットは力強い。第4楽章のプレストが416小節もあり、複雑、かつ変化に富む。この終楽章を見ても4日間で完成したとは信じられない。

♪交響曲第41番ハ長調「ジュピター」K.551
 モーツァルトの最後の3つの交響曲は、1788年の夏に集中的に作曲されている。特に最後の第40番と第41番の間には15日間のへだたりがあるだけで、この間にこの曲に集中したと考えられる。この3曲が、どこからの注文で書かれたのかは、現在のところ証拠が見つかっていない。しかし私は以前からロンドンでの演奏を目的に書いたものではないかと考えている。その理由はこうである。
(1)ヨーゼフ・ハイドンのイギリスでの成功を聞き、自分も同様に稼げると思ったこと。
(2)ウィーンを訪れたイギリスの友人たちが、モーツァルトのロンドン訪問を勧めていたこと。
(3)8月中旬までに書き上げてウィーンを立てば9月からのシーズンに間に合うこと。
 ロンドン訪問が実現しなかったのは、旅費の工面がつかなかったからであろう。しかしこの曲の評価は素晴らしく、彼の死後「ジュピター」の愛称がイギリス人によりつけられた。
 編成は弦5部にフルート、オーボエ、ファゴット、ホルン、トランペット各2にティンパニである。
 第1楽章アレグロ・ヴィヴァーチェの第1主題は、力強いユニゾンと上向旋律によりなる。ここに早くも第4楽章のフーガで使われる「ド・レ・ファ・ミ」の1部を暗示するものが現れているのだ。第2主題はそれと対照的なもので展開部で活躍する。第2楽章はイ長調のアンダンテ・カンタービレ。弱音器をつけたヴァイオリンが主役で、それに管楽器がからまる。第3楽章はアレグレットのメヌエット。下降半音階で作られた主題は洒落ている。トリオはイ短調になるが、ここにも第4楽章の主旋律が潜んでいる。第4楽章の冒頭では第1ヴァイオリンが「ド・レ・ファ・ミ」の主旋律を奏する。
 これを第1主題とし、以下第5主題まで出てくるが、それら全てが定旋律から出てきたものなのだ。その一つ一つがさながら音楽の精霊であるかのように、自由に飛びかい、身をくねらせて呼び合って流れてゆく。コーダでは、この5つが完璧な調和を見せる。これはまさに対位法の極致である。


◎演奏者のプロフィール


松村 秀明(まつむら ひであき)ピアノ. 
 慶応義塾大学法学部卒。洗足学園音楽大学附属指揮研究所マスターコースを修了後、アフィニス夏の音楽祭、紀尾井シンフォニエッタ東京(新日鉄文化財団指揮研究員)で研鑽を積む。これまでに指揮を秋山和慶、河地良智、増井信貴、湯浅勇治の各氏、ピアノを馬場幸希江、クラリネットを四戸世紀の各氏に師事。第11回アントニオ・ペドロッティ国際指揮者コンクール第3位入賞。洗足学園音楽大学非常勤講師。大阪響、神奈川フィル、九州響、京都市響、群馬響、仙台フィル、東響、都響、東京フィル、兵庫芸術文化センター管、広島響、山形響等を指揮したほか、読売日響の定期演奏会等に副指揮者として度々参加している。2012年にはイタリアのボルツァーノ=トレント・ハイドン管に招かれて3公演を指揮、好評を博す。

片爪 大輔(かたづめ だいすけ)フルート
栃木県出身。慶応義塾大学および東京藝術大学卒業。2008年東京藝術大学大学院修士課程修了。2007年第13回フルートコンヴェンション・コンクールピッコロ部門優勝。2011〜12年、新日本フィルハーモニー交響楽団契約団員を務める。現在、読売日本交響楽団フルート奏者。これまでにフルートを狩野嘉宏、佐藤直美、神田寛明、中川昌巳、中野冨雄、竹澤栄祐、金昌国の各氏に、室内楽を神田寛明氏に師事。


佐原 敦子(さはら あつこ)ヴァイオリン
 東京藝術大学卒業、同大学院修士課程修了。ヴァイオリンを霜佐紀子、澤和樹、和波孝禧、マラット・ビゼンガリエフの各氏に師事。文化庁芸術家在外研修員として2年間ウィーンに留学、ウィーン国立音楽大学大学院室内楽科修了。オーストリア国際室内楽音楽祭にて最優秀賞を受賞、ストラディヴァリウス・コンクール入賞、ウラルスク国際ヴァイオリン・コンクール優勝。日本各地をはじめ、アメリカ、イギリス、カザフスタン、インドでのリサイタルや演奏会に出演し、意欲的に活動している。現在、東京藝術大学大学院室内学科及び藝大フィルハーモニア非常勤講師、アンサンブルofトウキョウメンバー。

灘尾 彩(なだお あや)チェロ
鳥取県米子市生まれ。 洗足学園音楽大学ソリストコース修了。札幌ジュニアチェロ・コンクールにて優秀賞。大阪センチュリー交響楽団、東京弦楽合奏団、ポーランド室内管弦楽団と共演。これまでにチェロを倉田澄子、山内俊輔、藤森亮一、木越洋、毛利伯郎の各氏に師事。ダニエル・ミュラー・ショット、アラン・ムニエ、チャバ・オンツァイ、ゲオルク・ファウスト各氏のマスタークラスを受講。トウキョウ・モーツァルト・プレーヤーズおよびスーパー・チェロ・アンサンブル・トウキョウのメンバー。





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