第154回例会の内容紹介


大塚能夫也(Fl)と仲間達によるフルート四重奏曲全4曲

2016.5.15 14:00〜17:00藤沢リラホール(第154回)

出演:大塚 能夫也(Fl) 高橋 和歌(Vn) 佐々木 真史(Va) 渡部 宏(Vc)

曲目:
♪ハイドン作曲   フルート四重奏曲  ニ長調  Op 5-1
♪モーツァルト作曲 フルート四重奏曲  ニ長調  K.285 
♪モーツァルト作曲 フルート四重奏曲  ト長調  K.285a
♪モーツァルト作曲 フルート四重奏曲 ハ長調  K.285b
♪モーツァルト作曲  フルート四重奏曲 イ長調  K.298


当日のプログラムより

 曲 目 解 説
                                               井上太郎

♪ハイドン:フルート四重奏曲作品5から第1番ニ長調
 フランツ・ヨーゼフ・ハイドン(1732-1809)は多岐のジャンルにわたって多数の作品を残したが、フルートのためにもいくつかの作品を書いている。彼は1761年から約30年にわたってハンガリーの大貴族エステルハージ家に副楽長、楽長として仕えたが、その間の1768年(モーツァルトが2度目に訪問していた)ウィーンで6曲のセットで出版されたのが作品5のフルート四重奏曲集であった。ハイドンは首都のウィーンではなく主としてエステルハージ家の本拠であったアイゼンシュタットなどで活躍していたが、次第にその名声はウィーンを越えて外国にも広まり、人々は争って彼の作品の楽譜を手に入れようとしたので、ハイドンは出版にも大いに力を入れている。ただこの作品5はハイドンが自ら編集したものではなく不詳の編者の編曲によっており、しかも6曲のうちハイドンの真作と確認されているものは第4番と第6番の2曲に過ぎず、それらはハイドンが若い時代に書いたディヴェルティメントの編曲である。
 曲は、軽快な第1楽章アレグロ・アッサイ、美しい第2楽章アダージョ、魅力あふれる第3楽章メヌエット及び軽快なフィナーレ第4楽章プレストからなっている。
 なお、ハイドンから多大の影響を受けたモーツァルトがハイドンに直接会って親交を深めるのは、モーツァルトがウィーンに定住を始めた1781年以降のことである
以上  吉野 忠彦

♪モーツァルト作曲:フルート四重奏曲 ニ長調 K.285
  この曲は1777年にマンハイムに滞在していたオランダ人でフルートをよくしたドジャンという人から3曲のフルート協奏曲と一緒に注文を受けたものとされ、自筆楽譜には1777年12月25日の記載があるという。
 第1楽章アレグロの爽快さは素晴らしい。輝くような第1主題は展開部で短調の陰りをおびるが、ほどなく明るみを取り戻す。この配置の巧みさはどうだろう。私はこの楽章を聞くたびに、モーツァルトの天才を思わずにはいられない。
 第2楽章に入ると短調の味わいが、弦楽器のピチカートに乗って身近となる。ロ短調のこの旋律は心の奥までしみるようだ。モーツァルト研究の大家アインシュタインはこの旋律を「グルックの《オルフェオ》の楽園への場面の前奏曲を除けば、かつてフルートのために書かれた最も美しい伴奏付の独奏曲」と言っている。
 やがて第3楽章にはいるが、この直前の譜面にアタッカとあるのは、爽快な世界に切れ目なく入れという指定で、第3楽章は再びヴァイオリンとフルートが活躍する。

♪モーツァルト作曲:フルート四重奏曲 ト長調 K.285a

 2楽章よりなるこの作品は資料の伝承が極めて乏しい。1792年にアルタリアから出版された時には、K.285の第2,3楽章となっていたほどだ。ようやく1936年になってサン=フォアとアインシュタインにより、この曲が独立した曲と認められ、K.285aの番号がつけられた。
 第1楽章はアンダンテで始まる。しかし出来としてはメヌエットのテンポ指定の第2楽章の方がよい。
♪モーツァルト作曲:フルート四重奏曲 ハ長調 K.285b
 この作品も確実な資料がなく諸説紛々だが、曲の出来はよく第1楽章の展開部での遠隔調への転調や、対位法の使い方など、作曲技法はK.285より凝っており、ドジャンの注文で書いた第二作と思える。
 第2楽章は六つの変奏曲で、楽器の配分が優れている。

♪モーツァルト作曲:フルート四重奏曲 イ長調 K.298
 この作品にはモーツァルト以外の人の筆で「1778年にモーツァルトが作曲したオリジナルな四重奏曲。ジャカン男爵から受領した作曲者の自筆楽譜」と記されていたものがあるが、これは信用できず、1780年代にウイーンで流行した旋律に基づくという説もある。後者ならば1786年に作られたものと考えられる。
 第1楽章は主題と3つの変奏曲で、アンダンテの主題はフルートによる。第1変奏はヴァイオリン、第2変奏はヴィオラ、第3変奏はチェロが主体。第3楽章はメヌエット、第4楽章はロンドで終わる。
 以上  井上太郎



◎演奏者のプロフィール


大塚 能夫也(おおつか のぶや) フルート
桐朋学園大学を経てドイツ国立マンハイム音楽大学院修了。プラハ芸術アカデミーでチェコフィル首席J・ヴァーレク教授の下で研鑽を積んだ。オーケストラ、室内楽等で活動を始め、南西ドイツ放送交響楽団、フランツ・リスト室内合奏団他で多くの公演、音楽祭に参加。またバーデンバーデンフィル他とも共演し、ドイツザールランド放送、チェコ国営放送等にも出演。プラハ、東京でのリサイタルでも好評を得ている。

高橋 和歌 (たかはし わか) ヴァイオリン
桐朋学園大学を卒業後、桐朋学園大学院大学修了。全日本学生音楽コンクール大阪大会の部第1位、江藤俊哉ヴァイオリンコンクール第2位、ルーマニア音楽コンクール弦楽器部門第1位、東京音楽コンクール弦楽部門入選等の受賞歴と、広島交響楽団、東京シティ・フィルハーモニック、桐朋アカデミー・オーケストラ、日本フィルハーモニー交響楽団等のオーケストラとの共演歴を持つ。

佐々木真史(ささき まさし) ヴィオラ
東京芸術大学卒業。1999年まで東京芸術大学管弦楽研究部講師を務め、その間、各地のオーケストラで客演首席奏者を務める。ハンブルクにて研修し深井硯章氏に師事。帰国後仙台フィルハーモニー管弦楽団首席奏者に就任し、2011年まで務める。現在、バッハ協会管弦楽団首席奏者。(公財)ニューフィルハーモニックオーケストラ千葉首席ヴィオラ奏者。

渡部 宏(わたなべ こう)  チェロ
東京藝大、ドイツ・フライブルグ音楽大学卒業。ミュンヘン音楽大学マイスター・クラス修了。ミュンヘン・バッハ・コレギウム、ミュンヘン放送管弦楽団、ハイドン・オーケストラ(伊)にて活躍。東京藝術大学講師、藝大フィルハーモニア首席を努める。東京ヴィヴァルディ合奏団音楽監督、「希望郷いわて文化大使」として岩手の文化紹介を担う。



Copyright(C)2010 SHONAN MOZARTIAN SOCIETY All rights reserved.