第155回例会の内容紹介


木野雅之と仲間達による弦楽五重奏

2016.6.26 14:00〜17:00藤沢リラホール(第155回)

出演:木野雅之(Vn)、 田村昭博(Vn)、 内山隆達(Va)、富田大輔(Va)、 長南牧人(Vc)

曲目:
♪モーツァルト作曲  弦楽五重奏曲 ニ長調 K593 
♪ブラームス作曲  弦楽五重奏曲第2番 ト長調 OP111 


当日のプログラムより

 曲 目 解 説

♪モーツァルト作曲  弦楽五重奏曲 ニ長調 K593
 弦楽四重奏曲にもうひとつヴィオラを加えた弦楽五重奏曲はモーツァルトの室内楽作品の中でもとりわけ重要である。
断片と編曲を加えると13曲もあり、初期の1曲を除くと、すべて後期に書かれているからだ。
 今日演奏される曲についてフランスのモーツァルトの学者ジャン=ヴィクトル・オカールは「彼の室内楽の中で最も驚くべき作品」と言っている。モーツァルトが1784年からつけはじめた自作品目録には1790年12月とあり、ハイドンの管弦楽団で第二ヴァイオリンの主席だったヨハン・トストのため書かれたとされている。
 第1楽章がチェロの短い独奏のラルゲットで始まる。チェロ以外の4つの楽器は、あたかもチェロの質問に答えるかのように演奏する。その序奏が終わるとアレグロの主部に入る。ここで演奏される主題は8分休止符をきれぎれに挟んだ極めて特色のあるもので、それに下降する3連音、及び付点音符を多用するフレーズが続く。展開部における対位法を駆使した主題の展開は、誠に見事だ。
 これが終わると再びラルゲットの序奏とアレグロの主題が現れ第1楽章を閉じる。
 第2楽章はト長調の素晴らしいアダージオ。瞑想的な主題の後半は第1楽章の主題と関連がある。やがてニ短調になるが、ここでのチェロは第1楽章の序奏の冒頭の変形に他ならない。さらに半音階下降と短調への転調が続き、暗澹とした雰囲気を醸し出すが、最後は明るいト長調で終わる。
 第3楽章はアレグレットのニ長調のメヌエット。トリオは変化に富んでおり、まことに面白い。
 第4楽章アレグロは半音階下降の主題で始まる。この主題はモーツァルトの死後、第三者によって改ざんされ、最近までこれが決定稿とされていたが、20世紀に入って誤りであることが判明した。
 この楽章における対位法の扱いは実に見事である。

(井上太郎)

♪ブラームス作曲  弦楽五重奏曲第2番 ト長調 OP111
  ヨハネス・ブラームス(1833-1897)は他の多くのロマン派の作曲家同様ベートーヴェンを崇拝していたが、モーツァルト、ハイドンをも敬愛していた。特にモーツァルトの影響は晩年に書かれたクラリネット五重奏曲ロ短調(作品115、1891年)や弦楽四重奏曲にヴィオラをさらに1つ加えたモーツァルトのスタイルでの弦楽五重奏曲2曲(第1番ヘ長調Op88,1882年とこの第2番ト長調、1890)に著しい。あまり社交的でなかった彼は、夏にはウィーンを離れ、ゆっくり落ち着ける風光明媚な避暑地に行って作曲活動を続けたが、この2曲の5重奏曲もオーストリア帝国の夏の「帝都」ともいうべきザルツカンマーグート地方の保養地バート・イシュルの別荘で書き上げている。
 この2番を書き上げる直前にブラームスは創作能力の衰えと自分が時代の潮流から取り残されているのではないかという不安を感じていたらしく、意図していた交響曲第5番は放棄された。しかし、お気に入りの避暑地で彼は、この交響曲の構想をもとに弦楽五重奏曲を書いた。そのためかスケールのきわめて大きな曲となった(特に第1楽章)し、またヴィオラを2つにしたこともあって内声部が実に充実したものとなっている。しかし、完成した楽譜を彼の出版社ジムロックに送った際、これが最後の作品になるだろうという手紙を添えており、やはり、作曲活動からの引退を覚悟していたようだ。
 曲には随所にワルツが聞こえるが、これはイシュルの別荘の隣人で仲の良いワルツ王ヨハン・シュトラウスに敬意を表したものと思われる。また、お得意のハンガリーのジプシー、ロマの民族舞踊も色濃く出ている(第4楽章)。
 なお、モーツァルトが名手A・シュタードラーにあってクラリネット五重奏曲を書いたように、翌1891年、ブラームスもR・ミュールフェルトというマイニンゲンの宮廷管弦楽団の名手によって啓発され、五重奏曲をはじめとするクラリネット3部作という最晩年の名作を残すことになったのである。

第1楽章:アレグロ・ノン・トロッポ、マ・コン・ブリオ
第2楽章:アダージョ
第3楽章:ウン・ポコ・アレグレット
第4楽章:ヴィヴァーチェ・マ・ノン・トロッポープレスト

(吉野 忠彦)




◎演奏者のプロフィール


木野 雅之 1st Vn
 桐朋学園を経て、1982年ロンドンのギルドホール音楽院に学び、イフラ・ニーマン教授に師事する。卒業後、ナタン・ミルシュタイン、ルッジエーロ・リッチ、イヴリ−・ギトリスの3人の巨匠に師事し研鑚を積む。84年、ロンドンで開催されたカール・フレッシュ国際ヴァイオリン・コンクールや、87年には『ロイヤルオ−ケストラ協会シルバーメタル』(英国)を授与されるなど英国を拠点にコンサート活動を行っており、ロイヤル・フィル、ベルリン響、ポーランド国立放送響、モスクワ放送響などとも共演している。名古屋フィルハーモニー交響楽団のコンサートマスターを経て、93年より日本フィルハ−モニー交響楽団のコンサートマスターに、02年ソロ・コンサートマスターに就任。世界各地でのマスタークラスを始め、桐朋学園大学、武蔵野音楽大学、東京音楽大学で後進の指導にあたっている。使用楽器は恩師リッチから譲り受けた1776年製ロレンツォ・ストリオーニ。

田村 昭博 2nd Vn
 4歳よりヴァイオリンを始める。国立音楽大学音楽学部器楽学科(ヴァイオリン専攻)を卒業。2004年に日本フィルハーモニー交響楽団に入団、現在第1ヴァイオリン奏者。その他、エラン弦楽四重奏団のメンバー。また、浦和ユースオーケストラ等のトレーナーを務めるなど後進の指導にもあたっている。これまでに故石井洋之助、石井志都子、野波健彦、荒井雅至、石井啓一郎、扇谷泰朋の各氏に師事。

冨田 大輔 Va
 愛知県立芸術大学を経て、東京芸術大学音楽学部を卒業。同大学院修士課程修了。第3回みえ音楽コンクールヴィオラ部門第1位。第13回日本クラシック音楽コンクール弦楽部門全国大会第4位。小沢征爾音楽塾オペラ・プロジェクトや東京のオペラの森に出演。現在、日本フィルハーモニー交響楽団ヴィオラ奏者。これまでにヴィオラを野上阜三博・兎束俊之・川崎和憲・岡田伸夫の各氏に師事。

内山 隆達 Va
 16歳よりヴァイオリンを始める。愛知県立芸術大学にヴィオラで入学。在学中、若手奏者のためのコンペティション弦楽四重奏部門第1位併せて県知事賞受賞。これまでにヴァイオリンを故大沢和夫、服部芳子の各氏に、ヴィオラを兎束俊之、百武由紀、店村眞積、タッソー・アダモプーロス、今井信子の各氏に、室内楽を松原勝也、田中雅弘の各氏に師事。現在東京都内を中心にオーケストラ、室内楽などで活動している。

長南 牧人 Vc
 12歳より才能教育研究会でチェロを始め、東京音楽大学付属高校卒業後渡仏。パリ・エコール・ノルマル音楽院に入学、チェロと室内楽のディプロマを取得、帰国後、東京芸術大学音楽学部器楽科に入学、1993年より財団法人神奈川フィルハーモニー管弦楽団のチェロ奏者をつとめる。これまでに 勝田聡一、レーヌ・フラショー、堀江泰氏、花崎薫、菅野博文各氏に師事。



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