第156回例会の内容紹介


♪柴 欽也と仲間たちによるモーツァルトとベートーヴェンの室内楽

2016.9.25 14:00〜17:00藤沢リラホール(第156回)

出演:和久井 仁(Ob) 柴 欽也(Cl) 武井 俊樹(Fg) 日橋 辰朗(Hr) 野田 清隆(Pf)

曲目:
モーツァルト作曲
♪ロンド イ短調 K511 (ピアノ独奏) 
♪オーボエ、クラリネットとファゴットのための6つのディヴェルティメントから第3番 へ長調 AnhK.229(439b)
♪ピアノと管楽器のための五重奏曲 変ホ長調 K.452
ベートーヴェン作曲
♪クラリネットとファゴットのための3つの二重奏曲から第3番 変ロ長調  WoO27
♪ピアノと管楽器のための五重奏曲 変ホ長調 Op.16


当日のプログラムより

 曲 目 解 説

♪モーツァルト  ロンド イ短調 K.511
  1787年に書かれた、不思議な情感をたたえた秀作である。主題自体が半音階を多く持ち、和声も上に行くべき導音を下降させているところが多く、それが調性を不安定にさせる。
 中間部のイ長調が過ぎて、再びイ短調に戻りロンドの主題が左手に移ると、右手に繊細を極めた対位主題が現れる。最後は暗い波のように盛り上がる左手の上に主題の冒頭が現れ、消えたかと思うと、1オクターブ上にチラリと現れて消える。あたかも虚空に消える魂のようである。

♪モーツァルト:オーボエ、クラリネット、ファゴットのための6つのディベルティメントから 第3番 ヘ長調
AnhK.229(439b)

 この曲は自筆譜が失われているので構成には種々の異論がある。したがってケッヒェル番号も2種類つけられており、作曲年代も1783〜88年とされている。簡素な曲だがそれなりに面白いところが少なくない。

♪モーツァルト:ピアノと管楽器のための五重奏曲 変ホ長調 K.452

この曲の編成は特殊なもので、モーツァルトの作品ではこれしかない。すなわちピアノにオーボエ、クラリネット、ホルン、ファゴットである。
 自作作品目録には1784年3月30日とあり、最近作の2曲のピアノ協奏曲K.450とK.451と一緒に初演されたもので、その広告には「全く新しい大規模な五重奏曲」とある。
 モーツァルトは初演の直後、父宛の手紙に「この曲はこれまで書いた作品の中で最高のものだと思う」と書いている。自分の作品についてこれだけ評価したことはない。それはこの作品で最も難しい4つの管楽器の対等な扱いを見事にやり遂げているからだ。
 第1楽章はラルゴの長い序奏で始まる。主部のアレグロ・モデラートは、小型のピアノ協奏曲のような趣がある。第2楽章は変ロ長調のラルゲット。夢幻的な転調が美しい。第3楽章アレグレットでは4つの管楽器が個性豊かなオペラの役さながらに絡み合う。最後にはカデンツァまでついているのだ。

(井上太郎)

♪ベートーヴェン:クラリネットとファゴットのための3つの二重奏曲から第3番 変ロ長調   WoO27

 ルートヴィッヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770-1827)は、始めは生地ボンで宮廷楽団のヴィオラ奏者として活動していたが、1792年にロンドンからの帰途同地を訪れたハイドンにその才能を認められて第2回目のウィーン行を決意し、同年末「音楽の都」を訪れハイドンの門下生となり、同地に定住する。本日演奏される作品は、この年に書かれたものとされ「作品番号の無い作品27」となっているが、真作であるか疑いをもたれている。真作であるとすれば、宮廷楽団の名手2人のために書かれたものであろう。なお、第1回目のウィーン訪問(1787年)の際、彼の才能を認めてくれた敬愛するモーツァルトは前年の1791年末に世を去っていた。             

♪ベートーヴェン:ピアノと管楽器のための五重奏曲 変ホ長調 作品16
 1792年末からウィーンに定住を始めたベートーヴェンはフランス革命の影響もあって、特定のパトロンと主従関係を結んで作曲することを良しとせず、まずはモーツァルト同様、ピアノの名手として生活を立ててゆく。そして彼の作品は貴族の楽しみのためではなく一般の聴衆に向けて発表されたものが多くなってゆく。彼はハイドン、シェンク、サリエリ、アルブレヒツベルガーなどそうそうたる作曲家たちに師事できたが、モーツァルトを非常に尊敬しており、演奏会では時々モーツァルトのピアノ協奏曲を取り上げ、そのためのカデンツァを書いている。さらにそのピアニストとして登り坂にあった1796-7年には、モーツァルトの「ピアノと管楽器のための5重奏曲変ロ長調K.452」をモデルとした彼自身の5重奏曲を書いた。それは5つの楽器の編成、楽章構成や3つの楽章が全く同じ調性で一致していることから明らかである。大先輩の作品に対する対抗意識もあってか、若いベートーヴェンの意気込みや気負いが感じられる部分もあるが、私はベートーヴェンが最もモーツァルトに接近した曲だと考えている。またまだこのころには後に大きな障害となった耳疾も問題となっておらず、26歳のベートーヴェンの魅力に溢れた創作であることを強く印象づけている。初演は1797年4月6日にウィーンで行われ、好評を博したと伝えられ、その後1801年に出版された。ヴァイマールの宰相だったゲーテはベートーヴェンの作品を高く評価し、この曲を好んだといわれる。
第1楽章:グラーヴェ−アレグロ・マ・ノン・トロッポ
第2楽章:アンダンテ・カンタービレ
第3楽章:ロンド:アレグロ・マ・ノン・タント
                                         (吉野 忠彦)


◎演奏者のプロフィール


和久井 仁、Ob
 東京藝術大学卒業。似鳥健彦、小島葉子、小畑善昭、また室内楽をアンリエット・ピュイ・ロジェ、中川良平、山本正治の各氏に師事。東京佼成ウインドオーケストラに入団し首席奏者とアシスタント・コンサートマスターを務めた。愛知県立芸術大学音楽学部専任講師を経て、2004年NHK交響楽団に入団。現在、愛知県立芸術大学、東京藝術大学、桐朋オーケストラ・アカデミーの非常勤講師。トウキョウ・モーツァルトプレーヤーズのメンバーも兼任。また、アマチュアオーケストラを中心に指揮活動も行っている。

柴 欽也、Cl
 国立音楽大学を経て渡仏。ルーアン国立音楽院、パリ、エコール・ノルマル音楽院、パリ国立高等音楽院をそれぞれ首席で卒業。1979年、第4回フランス トゥーロン音楽祭国際コンクール入賞。同年、第30回イタリアG.B.ヴィオッティ国際コンクール第3位。パリ国立高等音楽院管弦楽団、モーリス・ブルグ・アンサンブルで活躍する。帰国後、ソロ、室内楽を中心に活躍し、1999年、読売日本交響楽団へ入団する。2015年12月に読売日本交響楽団を退団。現在、新日本フィルハーモニー交響楽団契約団員。

武井 俊樹、Fg
 桐朋学園大学音楽学部卒。卒業演奏会および読売新人演奏会に出演。1991年1月、仙台フィルハーモニー管弦楽団に入団。在籍中、ソリストとしても同楽団と数回共演する。1992年、第9回日本管楽器コンクール・ファゴット部門第2位受賞。1997年3月まで仙台フィルハーモニー管弦楽団に在籍ののち、読売日本交響楽団に移籍。現在に至る。桐朋学園大学音楽学部非常勤講師。

日橋 辰朗、Hr
 東京音楽大学卒業。第26回日本管打楽器コンクールホルン部門第1位。及び特別大賞、審査員特別賞、東京都知事賞、文部科学大臣奨励賞を受賞。第80回日本音楽コンクールホルン部門第1位。及び岩谷賞(聴衆賞)、E・ナカミチ賞を受賞。2007〜2011年小澤征爾音楽塾オーケストラメンバー。2013年4月から日本フィルハーモニー交響楽団首席ホルン奏者を務め、2015年4月から読売日本交響楽団首席ホルン奏者。

野田 清隆、Pf
 東京藝術大学および大学院修士課程修了後、ブラームスと20世紀作品を組み合わせた一連のリサイタルにより同大学院で博士号を取得。1995年日本音楽コンクール第1位および各賞を受賞。室内楽で内外の名手と共演を重ねるかたわら、ソリストとして読売日響、日本フィル、東京シティフィル、東京藝大フィル、名古屋フィル、京都市響、大阪響などに客演。現在、東京学芸大学准教授、ならびに東京音楽大学指揮科特別アドヴァイザー。東京クライス・アンサンブル、トリオ・エドアルテのメンバー。




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