湘南モーツァルト愛好会

第46回例会の内容紹介


平成10年9月15日 

プログラム

 

工藤重典のフルートによる

     モーツアルトのソナタと変奏曲

 

  平成10年9月15日 14:00 藤沢リラホール (第46回) 

    
フルートとピアノのためのソナタ ヘ長調K.13
 第1楽章 アレグロ
 第2楽章 アンダンテ
 第3楽章 メヌエットTU
 

フルートとピアノのためのソナタ ハ長調K.14
 第1楽章 アレグロ
 第2楽章 アレグロ
 第3楽章 メヌエットTU(カリヨン風)
 

フルートとピアノのためのソナタ変口長調K.15
 第1楽章 アンダンテ・マエストーソ
 第2楽章 アレグロ・グラチオーソ
 

「羊飼いの娘セリメーヌ」による12の変奏曲
                卜長調 K.359
        <休 憩>
 

フルートとピアノのためのソナタ ト長調K.301
 第1楽章 アレグロ・コン・スピリート
 第2楽章 アレグロ
 

フルートとピアノのためのソナタ イ長調K.305
 第1楽章 アレグロ・ディ・モルト
 第2楽章 アンダンテ・グラチオーソ
 

フルートとピアノのためのソナタ 変口長調K.378
 第1楽章 アレグロ・モデラート
 第2楽章 アンダンティーノ・ソステヌート.エ・カンタービレ
 第3楽章 ロンド−アレグロ
 
 
 
 

 

 曲 目 解説

                           井上太郎

 

   1764年春、パリからロンドンヘやってきたモーツァルト一家は、1年半ほどこの地に滞在するが、秋に8歳の少年モーツァルトの筆から生まれた6曲のソナタ(K.10〜15)が翌1765年1月「作品V」として自費出版され、イギリスの王妃シャーロットに献呈された。
 今日演奏されるのはその中の3曲である。

 これらの原曲は「クラヴィーア、ヴァイオリン(またはフルート)、チェロ」の三重奏の指定だが、現代ではフルートとピアノ、あるいはヴァイオリンとピアノ用に変えて演奏されることが多い。

 最初のへ長調(K.13)は6曲の中でも特に優れている。活気のある第1楽章に対し、第2楽章はへ短調の哀調を帯び、第3楽章は半音階のメヌエットとニ短調のメヌエットである。

 2曲目のハ長調(K.14)は第1、2楽章ともアレグロだが、第1楽章はピアノの目まぐるしい3連音に乗ってフルートがいきいきと唱う。 第2楽章はフルートとピアノの掛け合いがユーモラスだ。第3楽章は2つのメヌエットで、2つ目はカリヨン、つまり鐘の音を摸している。

 3曲目の変口長調(K.15)の第1楽章の堂々とした開始は、8歳の少年の作とは思われない趣きがある。第2楽章は対照的に軽妙な曲で、フルートとピアノの対話が楽しい。
                  *     *
 1781年の夏、モーツァルトは父宛ての手紙に「女弟子のために変奏曲を書き上げなければなりません」と書いている。その1つが(「羊飼いの娘セリメーヌ」による12の変奏曲)ト長調(K.359)である。この主題はフランスのシャンソンで、ごくシンプルなもの。

 原曲ではヴァイオリンのパートは控え目だが、今日の演奏ではフルートのパートはずっと華やかに演奏されるはずである。第7変秦はト短調で、ピアノが重々しいリズムを刻む。これは第8変奏のアダージョまで続くが、第9変秦からはふたたび最初のテンポに戻る。第11変奏はアダージョ。そして最後の第12変奏はアレグロで華やかに曲を結ぶ。
                    *      *
 1778年11月初め、パリのシベールから『ヴァイオリン伴奏つきのクラヴィーア・ソナタ』(作品T)として出版された6曲は、現代ではヴァイオリン・ソナタと呼ばれる。このジャンルの曲を当時はこう呼ぶ習慣だったのである。今日のプログラムの後半のソナタは、いずれも工藤さんがフルートとピアノのソナタとして編曲したものなので、原曲とはまた違う面白さが期待できよう。

 この曲集の第1曲のト長調(K.301)は特に人気が高い。それは第1楽章の息の長い旋律の美しさにあると言えるが、第2楽章の主題も優美の極みであり、中間にト短調のシシリア風のリズムを刻むところの哀感はとりわけ印象深い。

 次のイ長調(K.305)は、この曲集の5曲目である。第1楽章は元気のよい狩りのリズムによるアレグロ。ソナタ形式の展開部は短いながら緻密に作られている。第2楽章は主題と6つの変奏曲。フルートとピアノの掛け合いが千変万化の面白さを作り出す。ことにイ短調で書かれた第5変秦は、シニカルな響きがある。
                   *     *
 プログラムの最後の変□長調(K.378)はモーツァルトのこのジヤンルで最もポピュラーな曲であろう。1781年、ウィーンのアルターリアから作品Uとして出版された6曲のソナタの4曲目である。私はこの曲について『モーツァルトのいる部屋』(ちくま学芸文庫)に「これ以後、ヴァイオリン・ソナタの名作が数多く作曲されるが、この曲ほど、モーツァルトの伸びやかな青春の心を感じさせる曲はない」と書いた。
 春のそよ風がそのまま音になったような第1楽章を持つこの曲を、私はモーツァルトの《スプリング・ソナタ》 と名づけたい。第2楽章に私はザルツブルクの郊外に広がる美しい草原を思い描く。そして第3楽章は躍動する春の喜びであろう。
 

出演者のプロフィール

工藤 重典(フルート)

 日本が生んだ国際的フルーティスト。札幌生まれ。パリ国立音楽院にて、ランパルに師事し、1979年1等賞で卒業。前年に行なわれた第2回パリ国際フルートコンクールで優勝。「フランス独奏家協
議会賞」を受賞。また、1980年に行なわれた第1回ランパル国際フルートコンクールでも優勝。さ
らに「フランス共和国大統領賞」も.受賞し、一躍注目された。すでに40ケ国を訪問180以上の都市
で演奏しており、世界各地で共演したオーケストラの数は30を越えている。日本においてもN響、
新日フィル、大阪フィルをはじめほとんどのオーケストラと共演している。P.フルニエ、オルラン
ドカルテット、カザルスホールカルテット、ウィーン弦楽四重奏団、A.ケフェレック、M.ラリュー、
ジェシー・ノーマン、ホルスト・シュタイン、パイヤール、小沢征爾などのアーティストとの共演
も多い。レコード録音も盛んで、30種以上のCDが発売されている。「ランパル・工藤/夢の共演」
では1988年度「文化庁芸術作品賞」を受賞した。

現在パリに在住し、パリ・エコール・ノルマル・フルート科教授。1983,87年、ランパル国際コン
クール審査員。1988年村松賞受賞。87年以降サイトウ・キネン・オーケストラの首席フルート奏者。
97年7,8月、NHK教育テレビ「趣味悠々」のフルート講座の講師を務める。
 

石瑞尚子(ピアノ)

 東京に生まれる。桐朋学園大学音楽学部卒業と同時に同大学管楽器伴奏研究員として管楽器とのアンサンプルを学ぶ。1997年7,8月、NHK教育TVの「趣味悠々」のフルート講座で工藤垂典の伴奏を務める。現在、桐朋学園大学管楽器属託演奏員。
 

 

 

 
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