第157回例会の内容紹介


♪トーマス・フェオドロフ(CMW)と
      平沢匡朗によるモーツァルトの協奏曲など

2016.11.6 14:00〜17:00藤沢リラホール(第157回)

出演:トーマス・フェオドロフ(Vn)、平沢匡朗Pf)
   坂入健司郎指揮 チェンバーオーケストラ Klang

曲目:

モーツァルト作曲 

♪宗教劇「第1戒律の責務」 《シンフォニア》 K.35

♪ピアノ協奏曲第18番 変ロ長調 K.456

♪ヴァイオリン・ソナタ 変ロ長調 K.378

♪ヴァイオリン協奏曲第5番「トルコ風」イ長調 K.219


当日のプログラムより

 曲 目 解 説
                                 井上太郎
♪宗教劇「第1戒律の責務」より《シンフォニア》K.35
この曲の自筆楽譜はウィンザー城王室図書館にあるが、それの表紙にモーツァルトの父レーオボルトの手で「ヴォルフガンゴ・モーツァルト作曲、宗教劇、1766年3月」と書かれている。この日付によれば、モーツァルトは10歳なのだ。この頃、モーツァルト一家は3年半にわたる大旅行をしていたのである。ザルツブルクの大司教シュラッテンバッハ伯爵は、幼少のモーツァルトが旅先で得た名声を確かめるべく、四旬節にふさわしい宗教劇の大作の一部を少年に作曲させた。オーケストラによるその序曲がこれである。

♪ピアノ協奏曲第18番 変ロ長調 K.456
 1784年9月に作曲された作品で、ピアノ協奏曲が続けさまに作られた時期に当たる。この曲の初演は翌年の2月にヴィーンで行われた四旬節のコンサートだったが、レーオポルトは手紙に「作品の出来が素晴らしかったので涙がこぼれた」と述べ、また息子が退場する時、臨席した皇帝が手に帽子をとって「ブラヴォー、モーツァルト!」と叫んだと書いている。
 オーケストラの編成は弦楽器にフルート1、オーボエ、ファゴット、ホルン各2である。
 第1楽章のアレグロ・ヴィヴァーチェの主題は、この頃好まれた行進曲のリズムで始まる。ここで注目すべきは、主題の調性の変化が多様なことだ。
 第2楽章はト短調のアンダンテ・ウン・ポコ・ソステヌート。オーケストラとピアノとの哀愁を帯びた融合が美しい。
 第3楽章はアレグロ・ヴィヴァーチェ。元気のよい狩りの音楽だが、中間に遠隔調のロ短調に急変するところがある。

♪ヴァイオリン・ソナタ 変ロ長調 K.378
 この曲は1781年にヴィーンのアルターリアから出版された6曲のソナタの4曲目のものである。
 モーツァルトが収入を得る道は、弟子をとること、音楽会に出演すること、作品を出版することだった。当時は今と違ってコンサートで演奏される曲は当時の現代音楽だった。それは現代のポピュラー音楽と同じである。それで作曲家は次々と多量の作品を書いていたのだ。
 また家庭における音楽の演奏も非常に盛んで、音響機器のなかった当時は、家庭で音楽を楽しむには、自ら演奏するか、家族や友人と合奏するしかなかったわけである。そのために楽譜も多く出版されていて、作曲家の懐をうるおしていた。
 故郷を離れてヴィーンで自由に生きる決心をしたモーツァルトは、まず手初めに、よく売れそうなヴァイオリン・ソナタ6曲を出版社に持ち込み、首尾よく出版されたのである。
 この曲は全6曲の中で最も人気の高い傑作で、私はこれをモーツァルトのスプリング・ソナタと名づけたい。
 第1楽章の流麗な開始は、春風を思わせる。展開部は珍しくヘ短調で始まり、減七度の和音が多く使われて不安定な調性感が続くが、再現部の主題の出現によって消え去る。その対比はまことに見事だ。
 第2楽章の冒頭、ピアノが唱い出す主題はモーツァルト書いた最も美しい旋律のひとつだろう。
 第3楽章はフランス風の華やかなロンドで締め括る。

♪ヴァイオリン協奏曲 第5番 トルコ風 イ長調 K.219
 モーツァルトは1776年にヴァイオリン協奏曲を5曲、集中的に書いたとされているが、それ以降は1曲も書かなくなる。それは関心がピアノ協奏曲に移ったからであろう。しかし5曲の最後にあたるこの曲は、前の作品にはない工夫がされた名作として人気が高い。自筆譜には1775年12月20日とあり、編成は弦楽器のほかオーボエとホルン各2である。
 第1楽章アレグロ・アベルトはイ長調の主三和音をたどる上昇主題で開始する。やがて独奏ヴァイオリンが登場する。その時のテンポはアダージョだが、一転、アレグロ・アッサイで第一主題を奏する。その時にオーケストラの第一ヴァイオリンは最初の上昇主題を同時に奏する。この対位法による組み合わせは実に見事。
 繊細な旋律が続く第2楽章はホ長調のアダージョ。
 第3楽章はテンポ・ディ・メヌエットのロンドなのだが、やがてイ短調のアレグロに変わる。ロンドの主題は一変し、強烈なリズムを刻み、ヴァイオリンの低音弦による半音階の動きが続く。さらにバスの弦楽器が弓の木の部分で弦を叩き、トルコのドラムの音をまねるところもでてくる。このような異国調は当時の流行だったらしい。


◎演奏者のプロフィール


トーマス・フェオドロフ(Thomas Fheodoroff)  ヴァイオリン 
ウィーン国立音楽大学卒業後、ヴァイオリニスト及び指揮者として、その多彩な才能で国際的に知られている。独奏者、室内楽奏者、指揮のみならず、古楽器による歴史的音楽も演奏。ウィーン楽友協会、ウィーンコンツェルトハウス等のホールでの数多くのリサイタル、室内楽公演の他、世界各地のオーケストラでコンサートマスター、協奏曲のソリストとして招かれた。故アーノンクール率いるウィーン・コンツェントゥス・ムジクスのメンバーとしても活躍。現在は、母校であるウィーン国立音楽大学にて、後進の指導にあたっている。

 平沢 匡朗(ひらさわ まさあき) ピアノ
桐朋学園大学卒業。GPAダブリン国際ピアノコンクール特別賞受賞。ピアノ・ソロCDに『平沢匡朗プレイズモーツァルト』(2006年9月レコード芸術誌準推薦)他多数あり、高い評価を得ている。モーツァルトの演奏には特別な愛着を持っており、ピアノ・ソナタ全曲連続演奏会《モーツァルトの旅路》(2013)ピアノ、指揮者の2役によるピアノ協奏曲の演奏会(2014)などを行っている。毎夏オーストリア国際室内楽音楽祭に参加、コレペティトゥーアおよびピアノ・マスタークラスを担当している。また、洗足学園大学講師として後進の指導にもあたっている。

 坂入 健司郎(さかいり けんしろう) 指揮
1988年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。これまで指揮法を井上道義、小林研一郎、三河正典、山本七雄に、チェロを望月直哉に師事。2008年より東京ユヴェントス・フィルハーモニーを結成、現在まで音楽監督を務める。イェルク・デームス、舘野泉、小山裕幾など世界的なソリストとの共演や、数多くの日本初演・世界初演の指揮を手がける。2015年3月に指揮者として初めて「かわさき産業親善大使」に就任。2015年5月には、ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンに出演を果たし、MOSTLY CLASSIC誌の特集「注目の気鋭指揮者」にも推挙された。

 水島 愛子(みずしま あいこ)コンサートミストレス
桐朋学園大学音楽学部弦楽科卒業後、ウィーン国立音楽大学に入学。ヨーゼフ・ハイドン弦楽四重奏国際コンクールにて第1位受賞。J.S.バッハ国際コンクール・バイオリン部門にて特賞を受ける。ウィーン国立音楽大学を首席で卒業後、ミュンヘン室内合奏団コンサートマスターに就任。ソリストとしても活躍。1976年、バイエルン放送交響楽団に入団。同楽団の首席メンバーとアルチス弦楽四重奏団を結成。その後も、オルビス弦楽三重奏団等を組織し、日本、ヨーロッパで活動を続ける。サイトウ・キネン・オーケストラにも定期参加、現在に至る。





 



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