第159回例会の内容紹介


♪村上  巖 モーツァルト・ピアノ・リサイタル

2017.2.26(日)14:00〜17:00 藤沢リラホール (第159回)

出演:村上 巖

曲目:
モーツァルト作曲 
♪ピアノのためのアダージョ  ロ短調 K.540
♪ピアノ・ソナタ第16番 変ロ長調 K.570
♪ピアノ・ソナタ第8番 イ短調  K.310
♪ピアノソナタ第10番  ハ長調 K.330


当日のプログラムより

 曲 目 解 説
                                 井上太郎

♪モーツァルト:ピアノのためのアダージョ ト短調 K.540
  モーツァルトがロ短調を主調として書いた曲はこれしかありません。彼が自作を記録した目録には1788年3月19日と記されております。 この頃に書かれた主要な曲では、1788年6月26日と記されている交響曲第39番K.543があります。
 つまり この曲を書いたころには、いわゆる3大交響曲が生まれる下地が出来つつあったのです。 その短調の部分が、ピアノを通して浮かび上がったのがこの曲だったのではないかと思われるのです。
 楽譜は4ページですが、演奏時間は10分を越えます。冒頭の譜面に見るように、表現の指定が多く、演奏には微妙な変化が要求されます。



 モーツァルト研究の大家アルフレート・アインシュタインはこう言っています。
「モーツァルトがかつて作曲したもののうちで最も完璧で、感覚的で、最も慰めのないものの一つである。 その用途が何であったかは明らかでない。長調の終結部は、この曲があるホ短調ソナタのためだったことを暗示する。 しかしこのような作品が、困難であると同時に幸福だった時期に、別に目的もなく、モーツァルトのペン先からながれだしえたのだと、単純に言ってしまっていいのではなかろうか」
     『モーツァルト』(浅井真男訳)白水社 1961年

 私はモーツァルトのすべてのピアノ曲の中で最も深い心境に達した曲はどれかと言われたら迷うことなくこれを選びます。

♪モーツァルト:ピアノ・ソナタ 変ロ長調 K.570
 1784年から作り始めた自作目録には1789年2月とありますが、出版されたのは死後の1796年です。 この曲は教材用に作られたものらしく、比較的平易ですか、モーツァルトは決して手をぬいてはおりません。 第1楽章の第1主題と 第2主題の対位法による組み合わせはまことに洒落されています。展開部の冒頭で変ロ長調のドミナントから突然変ニ長調に変わるところは驚かされます。第2楽章は変ホ長調のアダージョで、しっとりと落ち着いて始まりますが、中間にハ短調やヘ短調の悲劇的な影がさすところがあります。しかし まもなく空が晴れるように、はじめの主題が現れます。第3楽章は足踏みしたくなるようなリズムの楽しい曲です。

♪モーツァルト:ピアノ・ソナタ イ短調 K.310
 この曲はK.309,K.311と一緒にパリで出版された、「パリ・ソナタ」と呼ばれる5曲の中の一曲です。
 書かれたのは1778年初夏と考えられるのですが、この頃一緒に来ていた母が病没するという不幸に見舞われました。その悲しみが、心をえぐるような曲となって現れております。
 第1楽章アレグロ・マエストーソはイ短調の第一主題の f で始まります。 続く左手の4つの音は属七の和音に主和音のイ音が加わった強烈な不協和音です 。モーツァルトは自分が遭遇した不幸な運命を呪っているかのようです。 第2主題はハ長調で始まり、提示部はハ長調で終わりますが、展開部は転調と不協和音の連続です。 ヘ長調の第2楽章は表現豊かに弾くことが要求されます。 第3楽章はイ短調の強烈なプレストです。

♪モーツァルト:ピアノ・ソナタ ハ長調 K.330
 この曲もパリで作曲されたと考えられますが、K.310と対照的に明るい曲です。 第1楽章の第1主題はK.330のイ短調の暗い第1楽章を明るく変えたようなものです。第2楽章はヘ長調で始まり、中間にヘ短調のところが出てきますが、それが音楽に深みを増します。第3楽章は 快活なアレグレットです。



◎演奏者のプロフィール


村上 巖 (むらかみ いわお) ピアノ
 千葉県にて生まれ、3歳よりピアノを始める。全国学生音楽コンクール(ピアノ小学生の部)において全国第1位。東京芸術大学附属高校から同大学へ進学。仏政府給費生として渡仏。パリ国立高等音楽院にてプルミエ・プリ(1等賞)を得て首席で卒業。又、文化庁給費生としてベルリ ン芸術大学大学院にて研修。長島寛行、高良芳枝、安川加寿子、植田克己、パスカル・ドゥヴァイヨン、イザベル・ドュビュイの諸氏に師事、また室内楽をクリスチァン・イヴァルデ、マリー・フランソワーズ・ブーケの諸氏に師事。1992年、第61回日本音楽コンクールにて第2位、井口賞、河合賞を、マリア・カナルス国際音楽コンクールにて奨励賞、第46回ブゾーニ国際音楽コンクールにて第2位、聴衆賞、パロマ・オシェア国際音楽コンクールにて奨励賞を、1995年、安宅賞を受賞。2005年、東京芸術大学非常勤講師に就任。退任前後から日本各地でリサイタル、オーケストラとの共演、室内楽、歌曲伴奏などに出演。NHK 「FMリサイタル」出演等の他、2009年ピアニスト佐藤文雄氏とのデュオでメシアンの「アーメンの幻影」他のリサイタルを開催、2010年、白井市民音楽祭に出演。日本ソルフェージュ研究協議会正会員。CDソロアルバム「プーランクピアノ曲集」、ヴァイオリニスト江口有香とのデュオ「ツィゴイネルな世界」「ヴィラロボス・ヴァイオリンソナタ集」をドイツ・シャルプラッテン/徳間ジャパンよりリリース。




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