第162回例会の内容紹介


♪アルモニア・ムジカによるモーツァルトなどの室内楽

2017.9.10(日)14:00〜17:00 藤沢リラホール (第162回)

出演:村沢 裕子(Pf)   森田 昌弘(Vn)
   御法川 雄矢(Va)   藤森 亮一(Vc)

曲目:
モーツァルト作曲 
♪ピアノ四重奏曲 第1番 ト短調  K.478
♪ピアノトリオ      ハ長調  K.548

リヒャルト・シュトラウス作曲
♪ピアノ四重奏曲  ハ短調  Op13


当日のプログラムより

 曲 目 解 説

♪モーツァルト:ピアノ四重奏曲  ト短調  K.478
 ピアノ四重奏曲というのは、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロにピアノの組み合わせによる室内楽で、モーツァルトの作品には音楽出版社からの注文によるこの2曲しかありません。
 これはまことに不思議なことで、弦楽四重奏曲を83曲も作っているヨーゼフ・ハイドンさえ1曲も作っていないのです。
 2曲の中でもト短調のこれは、モーツァルトの室内楽作品の中での指折りの傑作とされております。自筆楽譜に書かれた年代から推測すると、オペラの傑作《フィガロの結婚》K.492に 取りかかる直前に書き上げたことになります。
 第1楽章は気迫のこもったユニゾンで始まり、これに応えるピアノのパッセージが実に見事な対照を作り出します。ところがこの主題が2年前に作曲したニ短調の弦楽四重奏曲の主題とそっくりなのです。モーツァルトはこの二つの短調の曲を作る時に、同じ気持ちだったのではないでしようか。しかしよく似た主題を使いながら、一段と変化の多いのはピアノの入っているこの曲の方です。彼はピアノ四重奏曲という、それまで誰も作らなかったジャンルをこうして開発したのでしょう。
 第2楽章は変ロ長調の瞑想的なアンダンテ。3つの弦楽器とピアノの融合が美しく流れてゆきます。
 第3楽章はアレグロ・モデラートの晴れやかなロンド。その中に出てくる主題の1つは、3カ月後に書かれるピアノのためのロンドK.485に使われておりますが、これはクリスティアン・バッハの五重奏曲にあったものでした。

♪モーツァルト:ピアノ三重奏曲 ハ長調 K.548
 ピアノ三重奏というのは、ヴァイオリン・ソナタにチェロを入れたもので、家庭でも演奏しやすい組みあわせの室内楽として歓迎され、よく売れました。それで、モーツァルトは6曲、ハイドンは数十曲も作っております。
 今日演奏される曲は自筆楽譜によると1788年7月14日完成で、これのわずか11日後の7月25日に有名な交響曲第40番ト短調K.550が完成されたとなっています。つまりこの曲を作った直後に交響曲を書いたのか、2曲平行して書いたのか、二つの考えがありますが、私は2曲が平行して書かれたと考えます。
 第1楽章アレグロはハ長調という調性を生かした、たくましいユニゾンの第1主題で始まります。この主題が強調と弱調の二元の形を取ることで、三重奏の音量を最大限に発揮するのです。展開部はト短調で始まり、ニ短調、ヘ長調と変化し、第1主題の強弱2つの要素が巧みに展開されます。
 第2楽章アンダンテ・カンタービレはヘ長調でチェロの活躍が目立ち、展開部における3つの楽器の繊細な動きは、ロマン派のセレナーデを思わせます。
 第3楽章はハ長調のアレグロのロンドです。8分の6拍子の 特色ある主題で始まります。中間部でハ短調に変わるところは珍しく異国風です。

(井上太郎)

♪R・シュトラウス:ピアノ四重奏曲 ハ短調 Op13
 後期ロマン派末期の巨匠リヒャルト・シュトラウス(1864-1949)はその多くの交響詩やオペラなどの大きなオーケストラ作品で有名であるが、彼の最も尊敬していたのはモーツァルトであり、その「ジュピター」交響曲を最大の傑作として好んで指揮をし、またザルツブルク音楽祭にも積極的に登場した。しかし、1885年ごろまでは、有名なホルン吹きで、大のワーグナー嫌いであった父フランツの音楽指導もあってドイツの伝統的な(保守的な)傾向のピアノ作品や室内楽を書いた。しかしその中の「13吹奏楽器のためのセレナーデ」(作品7)が皮肉なことにワーグナーの弟子であり大指揮者であったハンス・フォン・ビューローに認められマイニンゲン公国へ招聘された。
 本日演奏されるピアノ四重奏曲は、そのころビューローが首席でヨーロッパの一流に育て上げた宮廷楽団の副指揮者としてのシュトラウスにより、滞滞在していた同地で書かれた彼の重要な室内楽作品であり、偉大な先人たるシューマンやブラームスの同編成の四重奏を意識して書かれたものと思われる。
 シュトラウスはこの楽団にいたヴァイオリニストで、ワーグナーの姪と結婚していたアレクザンダー・リッターと懇ろになって、彼からワーグナーはもちろんリストやベルリオーズなどの音楽を紹介され、また新しい(未来の)音楽の話を説明されてこの(前衛的な)作曲法を探求するよう強く勧められた。シュトラウスは、指揮法を勉強する傍ら、自身の新しい作曲分野としての交響詩へ向かって行き、89年には「ドン・フアン」で世間の注目を一挙にひくことになり、さらに20世紀にはいると「サロメ」、「エレクトラ」の2つの「モダン」なオペラでセンセーショナルな成功を見た。しかし音楽界での時流(前衛化)は急速に進み、1911年の「バラの騎士」以降はむしろシュトラウスは穏健な保守派の代表的な作曲家として見られてゆく。
 本作品は前述したモダンな作曲法での成功を博する交響詩の直前に書かれた、伝統的なスタイルでの室内楽作品であり、第1楽章にブラームスの、第3楽章と最終4楽章にシューマンの響きを聴き取ることができるかもしれないが、シュトラウス特有の甘美さにも不足していない。彼自身も生涯を通じて演奏した自信作であった。

                  (吉野 忠彦)

◎演奏者のプロフィール


村沢 裕子(むらさわ ゆうこ) ピアノ
 武蔵野音楽大学卒業。ピアノを徳川愛子、久富綏子、アマデウス・ウェーバージンケ、室内楽をヤノーシュ・ツェグレディ各氏に師事。アルモニア・ムジカ代表。その活動の様子は、新聞等でも紹介され、室内楽奏者として活躍中。グラミー受賞のクラリネット奏者で世界的指揮者のカールマン・ベルケシュ、ヴィオラのシャンドール・ナジ、NHK交響楽団首席チェロ藤森亮一、首席コントラバス吉田秀、NHK交響楽団メンバー、東京フィル首席フルート斎藤和志、またヴァイオリニスト江口有香、田中晶子、相川麻里子、チェリスト植木昭雄、佼成ウィンド副首席オーボエ宮村和宏をはじめとする多くの国内外のトップ・アーティストと共演を重ねている。公益財団法人音楽鑑賞振興財団評議員。

森田 昌弘(もりた まさひろ) ヴァイオリン
 桐朋学園大学在学中より在京オーケストラのゲストアシスタントコンサートマスターなどを務め、ストリングアンサンブルVEGAのメンバーとしても活動を行った。同大学卒業後、1995年NHK交響楽団に入団。現在次席奏者を務める。山下浩司、辰巳明子の各氏に師事。秋吉台マスタークラス、オホーツク音楽祭IN紋別、軽井沢国際音楽祭等に出演し国内外の著名なアーティストと共演する。また、NHK交響楽団メンバーによる室内合奏団直方公演や下関公演にて協奏曲を共演しいずれも好評を得る他、TYOCトヨタユースオーケストラキャンプや桐朋学園オーケストラアカデミー、桐朋学園オーケストラの招聘講師も務める。

御法川 雄矢(みのりかわ ゆうや) ヴィオラ
 桐朋学園女子高等学校音楽科を経て桐朋学園大学音楽部門を卒業。2005年、大阪国際室内楽コンクールにて弦楽四重奏の部セミファイナルに出場。 2009年、NHK交響楽団に入団。現在、 NHK交響楽団ヴィオラ奏者、ロイヤルチェンバーオーケストラ、ヴィルトゥオーゾ横浜、小松亮太オルケスタ・ティピカ、エレメンツ・クァルテット、昴21弦楽四重奏のメンバーとしての他、レコーディングなどのスタジオミュージシャンとして幅広く積極的に活躍中。また指揮者としてもロイヤルメトロポリタン管弦楽団、関西フィルハーモニー管弦楽団をはじめ、プロ・アマの交響楽団を数多く指導・指揮している。

藤森 亮一(ふじもり りょういち) チェロ
 NHK交響楽団首席チェロ奏者。1963年京都生まれ。京都市立堀川高等学校音楽科を経て、1982年東京音楽大学に特待生で入学。同年第29回文化放送音楽賞を受賞。翌1983年第52回日本音楽コンクール・チェロ部門第1位。1986年21回東京国際音楽コンク−ル弦楽四重奏部門において斎藤秀雄賞を受賞。2007年度第26回京都府文化賞功労賞を受賞。モルゴーア・クァルテットとして2010年度アリオン賞受賞。これまでに故・徳永兼一郎、上村昇、河野文昭、ワルター・ノータスの各氏に師事。現在、東邦音楽大学特任教授、国立音楽大学客員教授を務め後進の指導にも当たっている。




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