第168回例会の内容紹介


神奈川フィルのメンバーによるモーツァルト

2018.9.9   14:00〜17:00 藤沢リラホール(第168回)


当日のプログラムより

 
出演 
齊藤 雄介(Cl)  崎谷直人(1stVn) 
   青木るね(2ndtVn) 安保恵麻(Va) 長南 牧人(Vc)
    
演奏曲目

モーツァルト作曲
♪弦楽四重奏曲 変ホ長調 K.171
♪クラリネット協奏曲イ長調 K622
             (弦楽四重奏伴奏版)

 曲目解説
                      井上太郎
♪モーツァルト作曲 弦楽四重奏曲 変ホ長調  K.171
 声楽の四重奏はソプラノ、アルト、テノール、バスで成り立っているが、それを器楽の合奏形態に当てはめたのが18世紀の初頭から主としてイタリアで作曲されるようになる。それが四重奏曲の始まりとされる。
この合奏形態は2つのバイオリンと1つのビオラ、1つのチェロつまり合計4つの楽器よりなるものだが、低音にはチェロでなく、コントラバスを使うこともあった。
したがって交響曲などは弦楽四重奏曲を拡大したものに管楽器や打楽器などを入れたものといえる。つまり弦楽四重奏曲は器楽の合奏曲の基本形態なのだ。この形態はバロック時代からあったが、これを確立したのはヨーゼフ・ハイドンである。
その特色は通奏低音を使わないことだった。バロック時代には演奏に不可欠とされていたものを使わずに作曲をするには、新たな方法を考えねばならない。
モーツァルトは15歳になった時、三度にわたるイタリア旅行をしており、その時にさまざまな演奏を聴いたのが満足しなかった。イタリアで聞いた曲のほとんどが、第1バイオリンを主として他の楽器が伴奏をする形だったからである。
彼の考えていたのは、4つの楽器が同時に活躍する形だった。
17歳になってウイーンに旅行した時にハイドンの作品に目を開き、弦楽四重奏曲を作った。それは次の6曲である。
K.168 イ長調
K.169 イ長調
K.170 ハ長調
K.171 変ホ長調
K.172 変ロ長調
K.173 ニ短調
この4曲目が今日演奏される。
第1楽章 アダージオ(序奏)アレグロ・アッサイ
     序奏はハ短調と変ホ長調のユニゾンで6小節。
第2楽章 変ホ長調のメヌエットは生き生きとしたもの。
第3楽章 ハ短調アンダンテには弱音の指定があり、
     第1楽章と共通する雰囲気がある。
第4楽章 変ホ長調 アレグロ・アッサイ
     元気よく駆け抜けるような終楽章。


♪モーツァルト作曲 クラリネット協奏曲 イ長調 K.622
 この曲はモーツァルトが最後に完成した曲である。彼の自作品目録には、1791年9月26日、シュタードラーのために作曲とあり、編成は2部のヴァイオリンとビオラ、バス、管楽器は2のフルート、2本のファゴット、2本のホルン、それにクラリネットと書かれているが、スコアを見るとチェロとコントラバスが分かれているところもある。これは低音を特に配慮した現れであろう。
 シュタードラーはクラリネットばかりでなく、バセット・ホルンという、クラリネットより低い音が出せる楽器の名手で、モーツァルトと同じフリーメイスンの仲間であった。
 クラリネットは18世紀の初頭に生まれた楽器で、モーツァルトはマンハイムへ行った際に知って、その変化に富んだ音色に魅了された。彼は父宛の手紙にこう書いている。
 「交響曲がフルートとオーボエだけでなく、クラリネットが加えられたら、どんなに素晴らしいでしょう」その言葉通り交響曲でクラリネットが活躍するのは《パリ》と呼ばれているニ長調(第31番)や変ホ長調(第39番)である。
 モーツァルトはクラリネット協奏曲を書き始める前に、まずバセット・ホルンの協奏曲の第1楽章をト長調で書き、それをもとにしてクラリネット協奏曲を書いたと考えられ、正確な日付はわからないが、9月頃と思われる。
 第1楽章 アレグロでは、クラリネットが長調と短調の交替を見せながら、変幻自在に流れてゆく。
 第2楽章 アダージヨはニ長調、このあたりの音楽はモーツァルトが最晩年に到着した至高の境地であろう。
 第3楽章はアレグロのロンド。陽気な主題で始まるが、時々心をおののかせるような暗いパッセージや、ポッカリと穴があいたような休止が現れる。
 なお今日の演奏はオーケストラの原曲を弦楽四重奏に編曲した版を使用している。
 これは曲の解説とは関係ないことだが、ある人が自殺しようとしたときに、どこからか聞こえてきたこの曲に心を打たれ、自殺を思いとどまったと言う話を本人から直接聞いたことがある。この音楽にはそういう状態の人の心にも救いの光を投げかけるしぎな力があるのだろうか。


◎講演者のプロフィール

齋藤 雄介(さいとう ゆうすけ) クラリネット
東京芸術大学器楽科を同声会賞を得て卒業、同大学院音楽研究科(修士課程)修了。在学中に第18回日本管打楽器コンクール入賞。2003年、大学院修了と同時に神奈川フィルハーモニー管弦楽団に入団。現在首席クラリネット奏者。尚美ミュージックカレッジ非常勤講師として後進の指導にも当たる。これまでに別府アルゲリッチ音楽祭、アフィニス音楽祭、草津国際音楽祭などに参加し、W=マイヤー、L=コムズらの薫陶を受ける。秋山かえで、三界秀実、村井祐児、四戸世紀の各氏に師事。著書に教則本「中学生・高校生のための吹奏楽教本 クラリネット」(シンコー・ミュージックエンタテイメント社)

崎谷 直人 (さきや なおと) 第1ヴァイオリン
87年生まれ。ケルン音大、パリ音楽院、桐朋学園ソリストディプロマを経て、バーゼル音楽院修了。ノボシビルスク国際コンクール第1位、メニューイン国際コンクール第3位。東京フィル、京都市響、神奈川フィル、バーゼル響、ノボシビルスク・フィル等と共演。また、東京フィル、九州響、読売日響などにゲスト首席、コンマスに招かれる。宮崎国際音楽祭、軽井沢八月祭、王子ホールMAROカンパニー、シュヴェツィンゲンSWR等、国内外の演奏会に出演。原田幸一郎、ジェラール・プーレ、ロラン・ドガレイユ、ダニエル・ゼペックの各氏に師事。現在、神奈川フィルハーモニー管弦楽団 ソロ・コンサートマスター。06年ウェールズ弦楽四重奏団を結成。

青木 るね(あおき るね) 第2ヴァイオリン
 桐朋学園子供のための音楽教室、桐朋女子高等学校音楽科を経て、桐朋学園大学音楽学部バイオリン専攻卒業。同大学研究科在学中に神奈川フィルハーモニー管弦楽団入団。第102回神奈川県立音楽堂推薦音楽会出演。これまでにバイオリンをベルリン国立歌劇場オーケストラコンサートマスター:アクセル・ビルツォーク、アンナ・ネキポロク=ブロン、故久保田良作、井上淑子、久保良治の各氏に師事。室内楽をベルリン弦楽六重奏団に師事。2007年オーケストラ研修生として ハンブルク州立歌劇場オーケストラへ留学。現在、市原市楽友協会オーケストラのトレーナーを務める。ルーダス弦楽四重奏団メンバー。

安保 惠麻 (あんぼ えま) ビオラ
東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校を経て東京藝術大学音楽学部を卒業。高校入学と同時にヴィオラへ転向。大学卒業時に同声会賞を受賞。'99年、PMFに合格。その他、宮崎国際音楽祭、アフィニス夏の音楽祭、イタリア・チェルボ国際音楽祭などの音楽祭にも参加。'01年?'05年3月まで東京藝術大学管弦楽研究部非常勤講師を勤める。'05年4月に広島交響楽団首席ヴィオラ奏者に就任。ソリストも数多く務めている。'17年4月より神奈川フィルハーモニー管弦楽団客演契約首席ヴィオラ奏者に就任。横浜シンフォニエッタのシーズンメンバー。菅沼準二、川崎和憲、小野富士、市坪俊彦、ジャン・シュレムの各氏に師事。

長南 牧人 (ちょうなん まきと)チェロ
東京音楽大学付属高校チェロ科に入学、勝田聡一氏に師事。
1984年 渡仏し、パリ・エコール・ノルマル音楽院に入学、レーヌ・フラショー女史に師事。演奏者資格卒業コンクール第二位。チェロ演奏家ディプロムと室内楽ディプロムを取得。帰国後、東京芸術大学音楽学部器楽科に入学。堀江 泰氏、花崎 薫氏に師事。1994年より 財団法人神奈川フィルハーモニー管弦楽団に入団。現在、音楽教室ソルフラン講師、煥乎堂音楽教室講師、また各地の音楽祭講師、音楽コンクールの審査員などを務める。特に室内楽奏者として定評があり、東京とパリをはじめ、各地での演奏会に多数出演、神奈川フィルハーモニー管弦楽団フォアシュピーラーチェロ奏者、琉球フィルハーモニックオーケストラの客演首席奏者を務めている。




 



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