第169回例会の内容紹介


楠 尚子ヴァイオリン・リサイタル

2018.11.4   14:00〜17:00 藤沢リラホール(第169回)


当日のプログラムより

 
出演 

楠 尚子(Vn) 林 絵里(Pf)

演奏曲目

モーツァルト作曲
♪ヴァイオリン・ソナタ   ハ長調 K14
♪ヴァイオリン・ソナタ   ニ長調 K29
♪ロンド          ハ長調 K373
♪ヴァイオリン・ソナタ   変ロ長調 K378
 
フランク作曲
♪ヴァイオリン・ソナタ    イ長調

 曲目解説
♪モーツァルト作曲 ヴァイオリン・ソナタ ハ長調 K.14
 原譜はヴァイオリンまたはフルートにチェロの伴奏をつけたチェンバロのためのソナタと記載されている。このように今ではヴァイオリン・ソナタといわれている曲が、当時はピアノを主体とするソナタとされていたのである。
 作曲されたのはモーツァルトが8歳の時の1765年1月で、ロンドンで出版され、大英帝国王妃に献呈された。
 曲は3楽章よりなり、終楽章はメヌエット。いずれの楽章も目まぐるしいアレグロで、特に第3楽章の後半の16分音符での下降の繰り返しはユーモラスな味わいがある。

♪モーツァルト作曲 ヴァイオリン・ソナタ ニ長調 K.29
 この曲はオランダで作曲されたもので、作曲者が10歳の時のものである。これを聴くとロンドンで聴いたさまざまな曲、とりわけクリスティアン・バッハからの影響がうかがえる。第1楽章はニ長調とイ長調の交流で始まる。第2楽章はニ長調のメヌエットだが、中間のトリオはニ短調で書かれている。

♪モーツァルト作曲 ロンド ハ長調 K.373
 ミュンヘンでオペラ「クレタの王イドメネオ」K.366の作曲にかかっていたモーツァルトが1781年4月8日の父宛の手紙に次のように書いている。
「今日私の3曲が演奏されました。もちろん新作で、私のためにヴァイオリンの伴奏がつけられたソナタです。これは昨夜11時から12時までに作曲したものです。といっても、これを最後まで書き上げるために、伴奏のところだけ書き上げ、私の演奏するところは頭の中に残しておきました」
 この手紙は当時の演奏のやり方が示されていて興味深い。
 曲は4分の2拍子、アレグレット・グラツィオーソのロンドで、ロンドの主題がヴァイオリンの独奏で始まる。原曲通りに演奏すれば、これに続いてオーケストラの伴奏が入ることになるが、ピアノの伴奏だけなら、モーツァルトが頭の中に残しておいたところがわかるかもしれない。

♪モーツァルト作曲 ヴァイオリン・ソナタ 変ロ長調 K.378
1781年にウィーンのアルタリアから出版された6曲は、モーツァルトにとって特別な意味のあるものであった。それは故郷のザルツブルクを捨ててウィーンに移り住んで最初に出版できた曲だからである。幸い広く迎えられ「音楽雑誌」に賛辞を惜しまない批評が載った。
 私はなかでもとりわけ人気のある4曲目のこの曲が好きだ。これをモーツァルトのスプリング・ソナタと名づけたくなる。
 第1楽章の流麗な主題はさながら春風のようだ。展開部は珍しくヘ短調で始まり、減七の和音が多くつかわれ、不安定な調性感が続くが、再現部の主題の出現によって消え去る。この明暗の対比はまことに見事なものだ。第2楽章の冒頭、ピアノがうたいだす主題はモーツァルトが書いた最も美しい旋律の一つだろう。第3楽章は華やかなロンド。
                    井上太郎

♪C.フランク作曲 ヴァイオリン・ソナタ イ長調
 セザール・フランク(1822-90)はネーデルラント連合王国(現ベルギー王国)のリエージュに生まれ、弟のジョゼフ(1825 -91)とともに幼くしてピアノの才能を示し、父は彼らをリストのような大ピアニストにすべく英才教育を行った。1834年にリエージュ王立音楽院を卒業し、翌35年に一家でパリに移住するとアントニーン・レイハなどに教えを受けた。37年にパリ音楽院に入学し作曲、ピアノ、オルガンなどを学び、その後作曲家としての志望を固め、主としてパリで活動した。リストやショパンなどにも才能を認められたが、ピアノ教師として、またその後は教会オルガニストとして地味な生活を送った。作風としては同時代に活躍したワーグナーの影響を受けた。58年に就任したサント・クロチルド聖堂(パリ)のオルガニストの職には、その後生涯にわたってとどまった。71年にはサン=サーンス、フォーレらとともにフランス国民音楽協会の設立に加わり、翌年にパリ音楽院の教授に迎えられた。最晩年の85年ごろからヴァイオリン・ソナタ 、交響曲ニ短調など、有名な作品を次々に作曲し、注目された。
86年に作曲されたヴァイオリン・ソナタは同郷のヴァイオリニスト、ウジェーヌ・イザイの結婚祝いとして作曲、献呈され、イザイの活躍もあって大評判を取り、フランクの代表作となった作品である。4楽章からなり、フランクが得意とした作曲技法の循環形式(名曲交響曲ニ短調でも用いられている)で作曲されており、第1楽章の冒頭の旋律が、全楽章を統一する堅固な構成となっている。このメロディーはすべての楽章に登場するが、そのたびに力強い印象を与えていく。リリシズムや情熱性やおおらかさにも欠けておらず、ピアノとヴァイオリンの音楽的内容が対等であり、ピアノはヴァイオリンの伴奏ではなく、ヴァイオリンも単なる独奏楽器ではなく、ピアノとヴァイオリンの二重奏曲と呼ぶべき大曲である。この名作を演奏したいという様々な楽器の演奏家たちの要望によって、チェロやフルート用に種々の編曲版が出版されてきている。
                  吉野 忠彦


◎出演者のプロフィール
楠 尚子(くすのき なおこ)ヴァイオリン

東京生まれ。3歳半より母の手ほどきでヴァイオリンを始める。第45回全日本学生音楽コンクール大阪大会中学校の部第2位入賞。第6回摂津音楽祭リトル・カメリア・コンクールにて大阪21世紀協会賞を、第37回なにわ芸術祭にて新人奨励賞を受賞。アメリカ、アスペン音楽祭受講。フランス、クールシュヴェール国際アカデミー受講、スチューデントコンサートに出演。ザルツブルク音楽祭等で、イゴール・オジム氏、サシコ・ガヴリロフ氏らのマスタークラスを受講。これまでに、国内では、オーケストラ・ムジーク関西、関西フィルハーモニー管弦楽団、エウフォニカ管弦楽団、ライプツィヒ室内管弦楽団と共演。海外では、ブルガリア、ソフィア国際音楽週間にてソフィア祝祭管弦楽団、ロシア、サンクト・ペテルブルクにてサンクト・ペテルブルク・コングレス・バレエ&シンフォニーオーケストラと共演。東京文化会館小ホール、銀座ヤマハホールにてリサイタルを行う。桐朋女子高等学校音楽科、桐朋学園大学音楽部門演奏学科を卒業。同大学研究科を経てドイツへ留学し、フライブルク音楽大学卒業、ライプツィヒ音楽演劇大学演奏家コースを修了。ドイツ国家演奏家資格を取得。在学中、イエナフィルハーモニーにて助演団員契約。2006年よりホーフ交響楽団にて、2007年よりヘッセン州立歌劇場にて、第一ヴァイオリン期間契約団員を務める。2009年に帰国し、現在、桐朋学園大学附属子供のための音楽教室、仙川教室非常勤講師。トウキョウ・ミタカ・フィルハーモニアメンバー。これまでに、曽我部千恵子、小栗まち絵、辰巳明子、ニコラス・チュマチェンコ、サシコ・ガヴリロフ、マリアーナ・シルブの各氏に師事。

林 絵里 (はやし えり) ピアノ

東京生まれ。4才よりピアノを始める。1977年第31回全日本学生音楽コンクール、奨励賞受賞。桐朋女子高校音楽科を経て、桐朋学園大学音楽部卒業。ピアノを樋口恵子、弘中孝、故中島和彦の各氏に師事。卒業後、同大学に於いて、2年間、弦楽科伴奏研究員を務める。1986年第8回チャイコフスキー国際音楽コンクールのチェロ部門で最優秀伴奏者賞を受賞。1986年より日本国際音楽コンクールヴァイオリン部門の公式ピアニストを務める。1991年ミュンヘンにて、ワルター・ノータス氏に師事。これまで、チェリスト・・・スティーブン・イッサーリス,ヴァイオリニスト・・・エドアルド・メルクス,ドン・スク・カン,バルトゥミオ・ニジョー,ヴィヴィアン・ハグナー,パベル・バーマン,エリック・シューマン,徳永二男の各氏をはじめ、数多くの演奏家と国内外のリサイタルで共演。又、NHK交響楽団メンバーとの室内楽演奏や、仙台フィルとの共演、NHK TV出演、FM、CDの録音などを行っている。




 



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