第171回例会の内容紹介


室内オケによるヴァイオリン協奏曲とピアノ協奏曲など

2019.3.24   14:00〜17:00 藤沢リラホール(第171回)


当日のプログラムより

 
出演 

 トーマス・フェオドロフ(Vn)  平沢匡朗(Pf)
 坂入健司郎(指揮)チェンバーオーケストラ "Klang"

演奏曲目

モーツァルト作曲
♪ディヴェルティメント ニ長調 K.136
♪ピアノ協奏曲第19番 ヘ長調 K459
♪ピアノとヴァイオリンのためのソナタ 変ホ長調 K.481
♪ヴァイオリン協奏曲第3番 ト長調 K216

 曲目解説

                名誉会長 井上太郎
♪ディヴェルティメント ニ長調 K.136

 1772年16歳の時に書かれたこの曲には、作曲者の青春の気概が最もよく表れている。これにはこの頃身につけたイタリアン・スタイルが随所に見られるからだ。
 第1楽章の展開部での短調の扱いなどに無理がなく第2楽章も素敵だが、とりわけ第3楽章の筆致に感嘆する。急展開部にあっさりとしたフガートを入れるなど心にくいばかりだ。

♪ピアノ協奏曲第19番 ヘ長調 K.459
 1784年12月10日と初版楽譜にあるこの曲は、皇帝レーオポルト二世の戴冠式のおりにフランクフルト・アム・マインで作曲者自身により演奏されたというので、「第2戴冠式協奏曲」と呼ばれることがある。
そのためか、彼の数あるピアノ協奏曲の中でも、特に技巧的なところの多い曲である。
 モーツァルトは自分の演奏技量を、この曲で最も発揮できるのではないかと思っていたのではなかろうか。
 それからこの曲の特色は、対位法の技法を生かしたところが多いことである。つまり、フーガやカノンの形で主題が処理されるところが少なくないのだ。
 しかしこの曲には華麗なところばかりでなく、穏やかな流麗な味わいもある。それは第2楽章で、ここには技巧的な流れはない。続く第3楽章は再び急速なテンポではじまり、対位法による部分や、第1楽章の調子に戻ってくる。

♪ピアノとヴァイオリンのためのソナタ 変ホ長調 K.481
 モーツァルトは1784年2月から自分の作品を目録に記載するようになった。それによると、この曲は、1785年12月12日とあることから、出版社からの要請で書かれたものだろう。
 オペラ「フィガロの結婚」K.492に取りかかる直前に書かれたこの曲は、第1楽章はピアノが奏する第1主題で始まり、展開部では「ジュピター」交響曲の有名な主題「ドレファミ」が出てくる。
 第2楽章の変イ長調のアダージオは実に美しいのだが、ここでモーツァルトは極めて珍しい手法を使っているのである。このような手法は滅多に見慣れないものなのだ。それはエンハーモニック(異名同音)というもので、イ長調からヘ長調に変わった旋律が、変ニ長調に移り、それが 嬰 ハ短調に変わり、さらにイ長調へと変わる。それを楽譜で見ると、調を示す記号が75小節目ではピアノの右手がフラット4つ、左手がシャープ3つ、ヴァイオリンがシャープ1つになっており、これを同時に演奏するように指定されているのだ。第3楽章はアレグレットの主題による6つの変奏曲で曲を結ぶ。

♪ヴァイオリン協奏曲第3番 ト長調 K.216
 彼のヴァイオリン協奏曲は1775年に5曲集中的に書かれている。しかしそれ以降はこの形のものは1曲も書かれていない。それは彼の関心がピアノ協奏曲に移ったからであろう。
 初期の作品であるディヴェルティメントやセレナードには通常ヴァイオリンの独奏が入るがそれが協奏曲に発展したと考えられる。
  1775年9月12日付のこの曲は、前の2曲と内容に格段の違いがある。
 アインシュタインは「モーツァルトに想像の奇跡があるとしたら、この協奏曲の成立こそそれである」と言っている。
 確かにそう言えるが、その成立の過程を辿ってみると、前の2曲の協奏曲に続いて書かれたセレナードがあって、これらにはヴァイオリンの独奏の入る楽章があり、いずれも前の2曲の協奏曲より優れているのだ。
 つまりモーツァルトは、2曲のセレナードをつくることで第3番の協奏曲を作る技術を身につけたのではなかろうか。
 第1楽章アレグロの第1主題は、1775年の春に成立したオペラ「羊飼いの王様」K.208の第3曲の序奏からとられたもので、長調と短調の変化と、シンコペーションが生きている。
 第2楽章アダージョでは弱音器をつけたヴァイオリンとヴィオラと低音弦のピチカートがとけ合う。
 第3楽章アレグロにはフランス語でロンドーと書かれており、アレグロの主題に続く独奏ヴァイオリンの主題がさまざまに変化する。中には「シュトラスブルガー」という古い民謡と同じものもある。


◎出演者のプロフィール
トーマス・フェオドロフ(Thomas Fheodoroff)(Vn)
ウィーン国立音楽大学卒業後、ヴァイオリニスト及び指揮者として、その多彩な才能で国際的に知られている。独奏者、室内楽奏者、指揮のみならず、古楽器による歴史的音楽も演奏。ウィーン楽友協会、ウィーンコンツェルトハウス等のホールでの数多くのリサイタル、室内楽公演の他、世界各地のオーケストラでコンサートマスター、協奏曲のソリストとして招かれた。故アーノンクール率いるウィーン・コンツェントゥス・ムジクスのメンバーとしても活躍。現在は、母校であるウィーン国立音楽大学にて、後進の指導にあたっている。

平沢 匡朗(ひらさわ まさあき)(Pf)
桐朋学園大学卒業。福元さざれ、中山 靖子、渡邉 康雄、デートレフ・クラウスに師事。GPAダブリン国際ピアノコンクール特別賞受賞。各地よりピアノ協奏曲のソリストとして招かれ、独奏者として幅広く活動している。また、室内楽奏者としても、イヴリー・ギトリス、カリン・アダム、マルタ・カーデム=ミサク、木野 雅之、天満 敦子、等のヴァイオリニスト、宮原 卓也、原田 茂生他多数の声楽家と共演。1996年より《Allegro Vivo・オーストリア国際室内楽音楽祭》に参加、22年にわたり音楽祭のコレペティトゥーア(公式伴奏者)として活動、多数のヨーロッパ若手演奏家と共演している。現在、洗足学園音楽大学講師。

坂入 健司郎(さかいり けんしろう) 指揮
1988年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。これまで指揮法を井上道義、小林研一郎、三河正典、山本七雄に、チェロを望月直哉に師事。2008年より東京ユヴェントス・フィルハーモニーを結成、現在まで音楽監督を務める。イェルク・デームス、ジェラール・プーレ、舘野泉など世界的なソリストとの共演や、数多くの日本初演・世界初演の指揮を手がける。2015年3月に指揮者として初めて「かわさき産業親善大使」に就任。5月には、ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンに出演を果たし、MOSTLY CLASSIC誌の特集「注目の気鋭指揮者」にも推挙された。2016年、新鋭のプロフェッショナルオーケストラ、川崎室内管弦楽団を結成。音楽監督に就任。

水島 愛子(みずしま あいこ)コンサートミストレス
桐朋学園大学音楽学部弦楽科卒業後、ウィーン国立音楽大学に入学。ヨーゼフ・ハイドン弦楽四重奏国際コンクールにて第1位受賞。J.S.バッハ国際コンクール・バイオリン部門にて特賞を受ける。ウィーン国立音楽大学を首席で卒業後、ミュンヘン室内合奏団コンサートマスターに就任。ソリストとしても活躍。76年、バイエルン放送交響楽団に入団。同楽団の首席メンバーとアルチス弦楽四重奏団を結成。その後も、オルビス弦楽三重奏団等を組織し、日本、ヨーロッパで活動を続ける。サイトウ・キネン・オーケストラにも定期参加、現在に至る。




 



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