第172回例会の内容紹介


ルドヴィート・カンタ チェロ・リサイタル

2019.5.12 14:00〜17:00  藤沢リラホール(第172回)


当日のプログラムより

 
出演:ルドヴィート・カンタ(チェロ) 
   平沢匡朗(ピアノ)

曲目:

ベートーヴェン作曲:
   ♪《魔笛》の主題による7つの変奏曲 WoO.46
モーツァルト作曲:
   ♪チェロ・ソナタ断片アンダンティーノ K.374g
ベートーヴェン作曲:
   ♪《魔笛》の主題による12の変奏曲 作品66
フランク作曲:
   ♪チェロ・ソナタ イ長調

 曲目解説

♪ベートーヴェン:《魔笛》の主題による7つの変奏曲 WoO.46

 モーツァルトにまとまったチェロの作品がないのはチェロが通奏低音の楽器としての役割から解放されていなかったからである。彼の死後、チェロ奏者のジャン=ルイ・デュポールのために書かれたこの作品と2曲のチェロ・ソナタ(作品5)がクラヴィーアを伴うチェロ奏者の芸を披露する最初の作品となったのだ。
 モーツァルトのオペラの中でベートーヴェンが最も好んだのは《魔笛》だった。その中から主題を取って書いた変奏曲は2曲あり、最初に演奏されるこの曲は、パパゲーノとパミーナの二重唱「恋を知る殿方には」によるもので、作曲は1801年である。

♪モーツァルト:チェロ・ソナタ断片 変ロ長調 アンダンティーノ K.374g
 この曲はニッセンとヤーン伝記、及びケッヒェルのカタログの初版と第2版に記載されているト短調の「クラヴィーアとチェロのためのアンダンティーノ」の調性が誤って伝えられたものらしいと言われているが、冒頭の旋律は明らかに変ロ長調なので、ト短調の曲はまだ発見されていないと考えるべきだろう。作曲時期は1781年夏ではないかとされ、後世の編曲で演奏される。

♪ベートーヴェン:《魔笛》の主題による12の変奏曲 作品66
  これは先の変奏曲より前の1796年に作曲されたもので、パパゲーノがユーモラスに唱う「恋人か女房か」のアリアによる変奏曲である。調性はヘ長調。ベートーヴェンの音楽にしばしば現れるユーモラスな面と、モーツァルトのそれとの絡み合いが聴きどころであろう。 
                     (井上太郎)

♪フランク: チェロ・ソナタ イ長調
 本日演奏されるソナタは、もともとヴァイオリンのために書かれたものだが、その完成度の高さ、美しさから、多くの演奏者が他の楽器のために編曲し、演奏されている。本日のチェロ版はL・カンタさんがヴァイオリンの原譜からご自身のために編曲されたものである。
 セザール・フランク(1822-90)はネーデルラント連合王国(現ベルギー王国)のリエージュに生まれ、弟のジョゼフ(1825 - 1891)とともに幼くしてピアノの才能を示し、父は彼らをフランツ・リストのような大ピアニストにすべく英才教育を行った。1834年にリエージュ王立音楽院を卒業し、翌35年に一家でパリに移住するとアントニーン・レイハなどに教えを受けた。37年にパリ音楽院に入学し作曲、ピアノ、オルガンなどを学び、その後作曲家としての志望を固め、主としてパリで活動した。父の意に沿わぬ結婚をしたことなどからやかましい父とは決別した。リストやショパンなどにも才能を認められたが、ピアノ教師として、またその後は教会オルガニストとして地味な生活を送った。作風としては同時代に活躍したワーグナーの影響を受けた。58年に就任したサント・クロチルド聖堂(パリ)のオルガニストの職には、その後生涯にわたってとどまった。71年にはサン=サーンス、フォーレらとともにフランス国民音楽協会の設立に加わり、翌年にパリ音楽院の教授に迎えられた。最晩年の85年ごろからヴァイオリン・ソナタ 、交響曲ニ短調など、有名な作品を次々に作曲し、注目された。彼の弟子のヴァンサン・ダンディ、エルネスト・ショーソン、ガブリエル・ピエルネ、アンリ・デュパルクらは "フランキスト"と呼ばれ、のちにドビュッシーらの印象主義音楽と対抗することになる。90年に交通事故の後遺症と風邪がもとで死去した。
86年に作曲されたヴァイオリン・ソナタは同郷のヴァイオリニスト、ウジェーヌ・イザイの結婚祝いとして作曲、献呈され、イザイの活躍もあって大評判を取り、フランクの代表作となった作品である。4楽章からなり、フランクが得意とした作曲技法の循環形式(名曲交響曲ニ短調でも用いられている)で作曲されており、第1楽章の冒頭の旋律が、全楽章を統一する堅固な構成となっている。このメロディーはすべての楽章に登場するが、そのたびに力強い印象を与えてゆく。リリシズムや情熱性やおおらかさにも欠けておらず、ピアノとヴァイオリンの音楽的内容が対等であり、ピアノはヴァイオリンの伴奏ではなく、ヴァイオリンも単なる独奏楽器ではなく、ピアノとヴァイオリンの二重奏曲と呼ぶべき大曲である。この名作を演奏したいという様々な楽器の演奏家たちの要望によって、チェロやフルート用に種々の編曲版が出版されてきていることは前述した。
                    (吉野忠彦)

◎出演者のプロフィール

 ルドヴィート・カンタ  チェロ
 スロヴァキア共和国出身。ブラティスラヴァ音楽院にて、G.ヴェチェルニーに、プラハ音楽アカデミーにてS.ヴェチトモフに師事。アカデミー在学中にスロヴァキア・フィルハーモニー管弦楽団の第1ソロ・チェリストに就任。1990年より、オーケストラ・アンサンブル金沢の首席チェロ奏者を務める。ハラデッツ=オパヴァ・ベートーヴェン・コンクールで優勝。プラハの春国際音楽コンクールで第2位と同時にチェコ・スロヴァキア文化庁特別賞を受賞。ヨーロッパをはじめ、カナダ、アメリカ、アジア、日本でソリストとして、岩城宏之、イリー・ヴィエロフラーヴェク、ズデニェク・コシュラー、ヴァレリー・ゲルギエフらの指揮で、オーケストラ・アンサンブル金沢、NHK交響楽団、スロヴァキア・フィルハーモニー管弦楽団、プラハ交響楽団などと共演、好評を博す。カナダ、ヨーロッパ、日本各地で国際音楽祭やマスター・クラスの講師として招かれるほか、後進の指導にも熱心にまた積極的に取り組んでいる。2018年3月にOEKを離れ現在OEK名誉楽団員。さらにソロ・室内楽を中心に国内外で活動している。

 平沢 匡朗(ひらさわ まさあき) ピアノ
桐朋学園大学卒業。福元さざれ、中山 靖子、渡邉 康雄、デートレフ・クラウスに師事。GPAダブリン国際ピアノコンクール特別賞受賞。各地よりピアノ協奏曲のソリストとして招かれ、独奏者として幅広く活動している。また、室内楽奏者としても、イヴリー・ギトリス、カリン・アダム、マルタ・カーデム=ミサク、木野 雅之、天満 敦子、等のヴァイオリニスト、宮原 卓也、原田 茂生他多数の声楽家と共演。1996年より《Allegro Vivo・オーストリア国際室内楽音楽祭》に参加、22年にわたり音楽祭のコレペティトゥーア(公式伴奏者)として活動、多数のヨーロッパ若手演奏家と共演している。現在、洗足学園音楽大学講師。




 



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