第174回例会の内容紹介


「モーツァルトの日」によるモーツァルトの弦楽四重奏曲

2019.9.15 14:00〜17:00  藤沢リラホール(第174回)


当日のプログラムより

 
出演:
  佐藤 駿一郎 第1ヴァイオリン
  大杉 那々子 第2ヴァイオリン
  冨田 大輔  ヴィオラ
  中 実穂   チェロ
曲目:
モーツァルト作曲:
  ♪弦楽四重奏曲第2番 ニ長調 K.155(K6. 134a)
  ♪弦楽四重奏曲第8番 ヘ長調 K.168
  ♪弦楽四重奏曲第14番 ト長調 K.387『春』
  ♪弦楽四重奏曲第21番 ニ長調 K.575

 曲目解説
                     井上太郎
 モーツァルトとヨーゼフ・ハイドンによって確立された弦楽四重奏曲はヴァイオリン2、ヴィオラ1、チェロ1の合奏で4人の音のバランスがよく、作曲にも適していた。

♪弦楽四重奏曲第2番ニ長調 K.155(K6,134a)
 モーツァルトは1769年から71年に及ぶ、最初のイタリア旅行で、イタリアン・スタイルを存分に吸収している。それらに基づきミラノで作った6曲の中の1曲目のものがこれである。
 これを書くのに参考にしたのは、この種の曲を100曲も作ったというボッケリーニや、ミラノで有名だったサンマルティーニの作品だった。
 モーツァルトは第1楽章を若さ溢れるニ長調のアレグロで始め、第2楽章をイ長調のアンダンテ。第3楽章を再びニ長調に戻してのモルト・アレグロという形で終えている。

♪弦楽四重奏曲第8番 ヘ長調 K.168
 モーツァルトはイタリア旅行の次にウィーンへ行った。それは1773年の7月のことである。17歳だった彼がこの旅行で学んだ事は極めて大きく、帰宅して書いた6曲に表れている。これにはイタリア風よりもウィーン風が濃く現れており、中でも弦楽四重奏曲の作曲では先輩のヨーゼフ・ハイドンを凌ごうという意気込みさえ感じられるのだ。
 第1楽章はソナタ形式だが展開部の冒頭にフーガが使われている。第2楽章はヘ短調のアンダンテだが、この主題はなんとヘンデルのオラトリオ<メサイア>の中にある「打たれし主の傷にわれらは癒される」なのだ。このような引用はイタリア風の曲では考えられない。第3楽章は短いメヌエット。第4楽章は活気溢れるアレグロのフーガである。

♪弦楽四重奏曲第14番 ト長調 K.387 「春」
 この曲に素敵な題をつけたのは誰だろう。この自筆楽譜は現在ロンドンの大英博物館にあるのだが、これを見ると、彼がいかにこの作品のまとめに苦労したかがわかる。
 第1楽章アレグロ・ヴィヴァーチェ・アッサイの冒頭主題は彼が書いた主題の中でも、とりわけ優れたものである。それは「春」の表題を思わせるばかりでなく、主題の構造自体がこの曲全体を支配しているからだ。第2楽章のメヌエットはアレグレット。半音階が巧みに使われており、トリオはト短調。第3楽章は叙情的で、極めて美しいハ長調のアンダンテ・カンタービレ。第4楽章はフーガでありながらソナタ形式をとっている。このように、バロック時代の様式と古典派時代の様式を総合させているのは前人未踏のものだ。彼がこれに最も苦労したことが、自筆譜からうかがえる

♪弦楽四重奏曲第21番 ニ長調 K.575
モーツァルトは1789年に北ドイツに旅している。それはプロシァ国王フリードリッヒ・ウイルヘルム2世に謁見を求めるのが目的だった。このようなことが可能だと考えられたのは、国王がチェロの演奏を得意としていたからである。
 モーツァルトはベルリンで国王に会えたので、帰郷後、王のために3曲の弦楽四重奏曲を作った。その1曲がこれである。これらにチェロの活躍するところが多いのは当然だろう。
 第1楽章はヴィオラの連続する低音に乗って第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンの装飾的な音形で始まるが、9小節目に入ると、それまで沈黙していたチェロに、ヴィオラの低音がそのまま移り、第1ヴァイオリンの旋律がヴィオラに移る。このように、同じ旋律を無駄なく使ってゆくうまさは、実に見事と言うほかない。
 第2楽章はイ長調のアンダンテ。有名な歌曲「すみれ」に似た愛らしい旋律で始まり、それが美しく展開する。第3楽章のメヌエットは単純だが、第1楽章の要素が含まれており、トリオはト長調。
 第4楽章アレグレットはチェロの高音の旋律で始まる。それを支えるのがヴィオラだけなのも、プロシャ王をチェロに見立てたからであろう。この楽章では終始チェロが活躍する。

◎出演者のプロフィール

佐藤 駿一郎(さとう しゅんいちろう)第1ヴァイオリン
神奈川県立弥栄東高等学校卒業。昭和音楽大学卒業。同大学院修了。6歳よりヴァイオリンを始める。これまでに清水謙二、齋藤真知亜、小林美恵の各氏に師事。大学在学中、コンチェルトのソリストやオーケストラのソロ・ヴァイオリンなど担当。また2010年、ストラヴィンスキーの語りつき劇音楽《兵士の物語》公演の際には、語りに俳優の故・林隆三氏を迎え、好評を博す。テアトロ・ジーリオ・ショウワ・オーケストラ団員(2012−2014年)を経て、2014年9月、日本フィルハーモニー交響楽団に入団。オーケストラを中心として、ダヴィデ・カルテット、茅ヶ崎弦楽四重奏団など室内楽にも積極的に取り組んでいる。

大杉 那々子 (おおすぎ ななこ) 第2ヴァイオリン
都立芸術高等学校音楽科、東京音楽大学卒業、同大学院修了。在学中に特待生奨学金を得る。第1回横浜国際音楽コンクール第3位入賞、第8回大阪国際音楽コンクール、第11回日本アンサンブルコンクールに入選。IMAホール20周年記念コンサートにソリストとして東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団と共演。ザルツブルクモーツァルテウム音楽院サマーアカデミーに大学より奨学金を得て参加し、ディプロマを取得。選抜者演奏会に出演。PMF2011に参加。これまでに菅原英洋、西田博、岡山潔、藤原浜雄、海野義雄各氏に師事。現在ソロ、室内楽、オーケストラでの演奏活動、後進の指導も行っている。

冨田 大輔 (とみた だいすけ) ヴィオラ
愛知県立芸術大学を経て、東京藝術大学音楽学部を卒業。同大学院修士課程修了。第3回みえ音楽コンクールヴィオラ部門第1位。第13回日本クラシック音楽コンクール弦楽部門全国大会第4位。サイトウキネンフェスティバルやアフィニス音楽祭などに参加。大学院に在学中、選抜され藝大室内楽定期に度々参加。原村室内楽セミナーでは最優秀で「緑の風音楽賞」を受賞し、奨学金を受ける。プロジェクトQ・JTが育てるアンサンブルシリーズ・リゾナーレ音楽祭・彩の国アーティストシリーズなど、様々な演奏会に出演している。国内各地のプロオーケストラの客演首席奏者として活躍。日本フィルハーモニー交響楽団を経て現在、読売日本交響楽団ヴィオラ奏者。これまでにヴィオラを野上阜三博・兎束俊之・川崎和憲・岡田伸夫の各氏に師事。

中 実穂 (なか みほ) チェロ
京都府出身。5歳よりチェロを始める。桐朋学園大学音楽学部卒業。東京藝術大学大学院音楽研究科修士課程修了後、ベルリン芸術大学にて研鑽を積み、国家演奏家資格取得。これまでにチェロを津田朝子、井上頼豊、松波恵子、山崎伸子、マルクス・ニコシュの各氏に師事。室内楽を毛利伯朗、岡山潔、山崎伸子、クァルテット・エクセルシオに師事。第8回ビバホールチェロコンクール第4位、第77回日本音楽コンクールチェロ部門入選。平成17年日演連推薦・新人演奏会にて大阪フィルハーモニー交響楽団と共演。東京・春・音楽祭特別公演など多数出演。現在ソロ、室内楽、オーケストラ等幅広く活動している。



 



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