第179回例会の内容紹介


♪今井 顕 ピアノ &トーク・リサイタル

2020.7.5 14:00〜17:00  藤沢リラホール(第179回)


当日のプログラムより

 
出演 今井 顕(Pf)

曲目:
モーツァルト作曲
 ♪ピアノ・ソナタ 第15番 ハ長調 K.545 より第1楽章
 ♪ピアノ・ソナタ 第10番 ハ長調 K.330
 ♪ピアノ・ソナタ 第11番 イ長調 K.331
 ♪ピアノ・ソナタ 第12番 ヘ長調 K.332
 ♪ピアノ・ソナタ 第13番 変ロ長調 K.333

 曲目解説
                     井上 太郎
♪ ピアノ・ソナタ 第15番 ハ長調 K.545 より第1楽章
 自作品目録に1788年6月26日の日付とともに《初心者のための小クラヴィーア・ソナタ》と書かれた第15番のハ長調K.545は、ピアノを習う人はたいてい弾く曲である。大ピアニストのシュナーベルが言ったという「モーツァルトの曲は子供にはやさしいが、おとなには難しい」の言葉が一番あてはまるのはこの曲だろう。なぜなら、この曲を珠玉の連なりのように弾くのは、至難の技なのだ。
 第1楽章の第1主題は、たった4小節なのに全く無駄がない。展開部にト短調、ニ短調で影をつけ、第1主題をへ長調で再現させ、第2主題をハ長調で再現させる酒脱さはどうだろう。
 第2楽章のト長調のアンダンテは、短いながらも中間部はト短調で深い情感をたたえている。
 第3楽章のアレグレットのロンドは軽妙そのものだ。

♪ ピアノ・ソナタ 第10番 ハ長調 K.330
 第10番K.330、第11番K.331、第12番332の3曲は、従来パリで作られたものと言われてきたが、その後の研究により、ザルツブルクに帰ってからの、1780年以降の作品とされるようになった。この3曲は1784年にヴィーンのアルターリアから出版されたので、作られたのは83年と考えられる。
 第10番ハ長調K.330の第1楽章は16分音符と32分音符が珠玉のように連なっている。
 第2楽章はへ長調のアンダンテ・カンタビーレ。のどかな音調で始まり、中間にへ短調の部分が現れるが、薄い影にすぎず、再び明るさが戻る。
 第3楽章は快活なアレグレット。

♪ ピアノ・ソナタ 第11番 イ長調 K.331
 第11番イ長調K.331はモーツァルトのピアノ・ソナタの中で最も有名な曲だが、ポピュラーなのは第3楽章の「トルコ行進曲」だけである。ソナタでありながら第1楽章はアンダンテ・グラチオーソの主題と六つの変奏曲というほかに例のない形式である。変奏も単純ではなく、第3変奏をイ短調にしたり、第5変奏をアダージョに、第6変奏をアレグロにするなど変化をつけている。
 第2楽章のイ長調のメヌエットがソナタ形式を取っているのも異色で、ニ長調のトリオとの対比が面白い。
 そして第3楽章にイ短調アレグレットの「トルコ行進曲」を入れたのは、この曲が作られた1783年が、ヴィーンのトルコに対する戦勝百周年だったことと関連している。トルコは敵であっても、ヴィーンの人たちの異国趣味の対照だったのである。

♪ ピアノ・ソナタ 第12番 ヘ長調 K.332
 第12番へ長調K.332はあまり知られていないが、第11番K.331を抜く傑作だと思う。
 第1楽章のへ長調の第1主題は単純だが、間もなく強烈なニ短調、ハ短調のパッセージがあって、ようやくハ長調の第12主題が現れる。これに続くパッセージも転調が多く、尋常ではない。
 展開部はハ長調で始まるが、ハ短調、ニ短調と変化して再現部に入る第2楽章は変ロ長調のアダージョ。旋律の動きが細かく、変化に富んでいる。第3楽章はへ長調のアレグロ・アッサイ。左手の低音の強打と右手の高音から駆け下るパッセージで始まる。展開部はこの形がハ短調に変わり、さらに多様な転調をともなうパッセージが続く。モーツァルトのピアノ曲の中でも、特に演奏の難しい曲であろう。

♪ ピアノ・ソナタ 第13番 変ロ長調 K.333
 第13番変口長調K.333は1783年の末頃にリンツで作られたというのが最近の定説である。
 第1楽章は第1主題が流麗そのものだが、展開部で短調になって激する。しかしそれは長くはない。
 第2楽章は変ホ長調のアンダンテ・カンタービレ。この楽章も第1楽章同様にソナタ形式で書かれており、旋律の流れが実に美しい。展開部での短調の部分では半音を巧みに使って、変口短調の主和音と減七の和音により幻想の世界をかいま見せる。
 第3楽章アレグレット・グラツィオーソは、屈託のない第1主題で始まる。へ長調の第2主題もリズムが主体で単調に始まるが、低音の半音階上昇により変ホ長調になるなど、変化が巧みである。終わり近くにはカデンツァがついている。


◎出演者のプロフィール

今井 顕(いまいあきら)

 東京に生まれる。私立武蔵高校在籍中に渡欧、ウィーン国立音楽大学に16歳で入学する。8年間の課程をわずか3年で修了し、早くも19歳の時に最優秀の成績で卒業。数々の国際コンクールで頭角をあらわし、コンサートピアニストとして国際的な活動を開始する。その後ウィーン国立音楽大学ピアノ専攻科における日本人初の指導者として抜擢され、数多くのピアニストを育成した。通算24年にもおよぶヨーロッパ滞在中の音楽分野における業績と尽力とに対しオーストリア政府より名誉教授の称号を授与され1995年に帰国、その後国立(くにたち)音楽大学大学院にて後輩の育成に携わった。
 楽譜、書籍などの出版物も数多く、国際コンクールの審査員として招聘されるなど、日本の誇る国際派ピアニストとして内外で高い評価を受けている。国立音楽大学名誉教授、宇都宮短期大学客員教授、一般社団法人全日本ピアノ指導者協会評議員。


 



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