第180回例会の内容紹介


♪カルテット・プラチナムによる弦楽四重奏曲

2020.9.6 14:00〜17:00  藤沢リラホール(第180回)


当日のプログラムより

 
出演 沼田 園子(Vn)  野口 千代光(Vn) 
   大野 かおる(Va)  菊地 知也(Vc)

曲目:
♪モーツァルト: 弦楽四重奏曲 第15番 ニ短調 K.421 (417b)
♪M・ラヴェル; 弦楽四重奏曲 ヘ長調 
♪モーツァルト:弦楽四重奏曲 第17番 変ロ長調「狩」K.458

 曲目解説
モーツァルトはヨーゼフ・ハイドンと一緒に弦楽四重奏を演奏する関係をもっていた。そのときにはモーツァルトはヴィオラを担当することが多かったという。
 彼は演奏しながら、自分もこれをしのぐ作品が作れるのではないかという気持ちになってきたに違いない。
 それで1780年代になって6曲の作品を書き上げ、ハイドンに献呈する。今日演奏されるのはそのなかの2曲である。

♪モーツァルト作曲 弦楽四重奏曲 第15番 ニ短調
 K.421(417b)
 この曲は彼の弦楽四重奏中、わずか2曲しかない短調の曲の1つで、
 第1楽章の冒頭から深い憂愁が漂う。
 第2楽章のアンダンテはへ長調だが明るさはない。切れ切れにつぶやくような音楽の中に、時々激したような悲痛な響きが現れる。
 第3楽章のメヌエットは冒頭に緊張感がみなぎっているが、トリオは明るく楽しい。
 第4楽章は8分の6拍子のシチリアーノ風の美しい変奏曲。ここは一番の聞きどころだ。終末近く、震えるような3連音符を繰り返しながらテンポを早めつつ曲を閉じるあたりは、一度聞いたら忘れられないだろう。

♪モーツァルト作曲 弦楽四重奏曲 第17番 変ロ長調
 K. 458「狩」
 この曲が6曲の中で最もポピュラーなのは、愛称がついていることもあろうが、曲想が明るく、親しみやすいからだろう。
 第1楽章は8分の6拍子のアレグロの生き生きとした主題で始まる。一点の曇りもない、こころの弾む音楽である。
 第2楽章メヌエットのチャーミングな旋律は、誰にも好かれるだろう。
 第3楽章アダージョはこの曲の中で最も深い表現をもち、聴くものを感動させずにはおかない。
 第4楽章は軽快な曲想だが、そのなかに対位法の技術を駆使した見事な展開が見られる。
                      井上太郎

♪M・ラヴェル作曲 弦楽四重奏曲 ヘ長調
 「ボレロ」や「スペイン狂詩曲」で名高いモーリス・ラヴェル(1875-1937)は先輩のクロード・ドビュッシー(1862-1918)
と並んで近代フランスを代表する作曲家である。スペインに近いバスク地方で誕生したが、生後すぐに一家はパリへ移住している。スイス出身の実業家で音楽好きな父の勧めもあって幼いころから音楽教育を受け、パリ音楽院で14年を過ごす。
 最も影響を受けたのは師のガブリエル・フォーレであった。
ラヴェルは伝統的、保守的な音楽よりは、当時の自由で国際的なパリで革新的な若い芸術家たちと行動を共にし、20世紀にはいると新潮流の旗手の一人と見られるようになる。新世紀の初めの1901年に個性的な「水の戯れ」から始まって約10年の間にピアノやオーケストラの著名な作品、ソナチネ(1903)、序奏とアレグロ(1906)、スペイン狂詩曲(1907)、マ・メール・ロワ(組曲)(1908)、夜のガスパール(1908)などを書いて人々の注目を集めた。
 その間1901-05年の5回にわたって国家の奨学金でイタリアへ留学できる「ローマ大賞」に応募したが、1901年の3位が最高で、最後の05年には、予選さえ通過できず、このことは「ラヴェル事件」として一大スキャンダルとなり、パリ音楽院の院長が辞任し改革が行われるまでになった。その後も現代的、新しい音楽づくりに励み、ロシア・バレエのディアギレフのために「ダフニスとクロエ」を書いたこともよく知られている。
 第1次大戦では、従軍して腹膜炎になり、また戦争中に最愛の母が亡くなったショックも重なり、戦後の創作活動は、次第に低調なものとなり、また彼自身の作風もサティなど「フランス6人組」の陰になって次第に最先端のものでなくなっていった。晩年は体調がすぐれなかったが28年に渡米して大歓迎を受け、彼の名声は世界的なものとなった。同地でジャズや黒人霊歌などの影響を受け、2つのピアノ協奏曲(1つは左手のためのもの)を書いている。1937年12月末パリで死去。
 彼の弦楽四重奏曲は1904年に初演され、大好評を取ったが、その10年前にドビュッシーの書いた弦楽四重奏曲に啓発されたと思われる。一般に当時のフランスでは隣国のライヴァル、ドイツに普仏戦争で屈辱的な大敗したこともあり、また文化的には新興国ドイツよりは自分たちの芸術の方が常に優秀だと思っている傾向があって、ウィーン古典派(ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン)が確立した形式的で「窮屈な」交響曲や特に弦楽四重奏曲などは難しいものとして敬遠されていた。
 したがってあまり形式にとらわれず、新鮮な感覚で書かれた二つの弦楽四重奏曲は貴重であるだけでなく、名曲であり、ドイツ物とは全く違った趣向が味わえる。(ただしラヴェルは、モーツァルトの弦楽四重奏曲を大いに参考にしたといっている)。初演は大うけであり、感動したドビュッシーはラヴェルに「この曲は一音たりとも変えてはいけない」といったが7年後に出版され恩師のフォーレに献呈された楽譜はかなり改定されている。
                    吉野 忠彦


◎出演者のプロフィール

沼田 園子(ぬまた そのこ) ヴァイオリン
 東京藝術大学音楽学部弦楽科を首席で卒業、大学院博士課程単位習得。パガニーニ生誕200年祭国際ヴァイオリンコンクール、マリア・カナルス、アルベルト・クルチ各国際コンクールに上位入賞。日本音楽コンクール作曲部門の演奏に対してコンクール審査委員会特別賞。1990年より水戸室内管弦楽団の常任メンバーを25年務める。ソリスト、ゲストコンサートマスターとして主要オーケストラと共演、内外の一流演奏家と共演。ヨーロッパでも協奏曲、リサイタル、室内楽のコンサートを各地で行い好評を博す。ファイン・デュオとしてリサイタルを全国各地にて開催。2015年カルテット・プラチナムを結成。現在、東京藝術大学,愛知県立芸術大学各講師、洗足学園音楽大学客員教授、常葉短期大学客員教授を務める。

野口 千代光 (のぐち ちよこ) ヴァイオリン
 東京藝術大学を経てジュリアード音楽院に入学。ジュリアード・コンチェルトコンペティションに優勝し、リンカーンセンター・アリス・タリ−・ホールにてコンチェルトデビューを果たす。ジュリアード音楽院卒業後、東京藝術大学を首席で卒業。フォーバルスカラシップ・ストラディバリウスコンクール入賞。ヴィニアフスキ国際ヴァイオリンコンクール特別賞を受賞。東京都交響楽団ほか国内外のオーケストラとソリストとして共演。現在、アンサンブル・コルディエ(旧東京ゾリステン)コンサートミストレス、紀尾井シンフォニエッタ東京メンバー。東京芸術大学准教授、日本大学藝術学部客員教授、桐朋学園芸術短期大学非常勤講師。

大野 かおる(おおの かおる) ヴィオラ
 東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校を経て東京藝術大学音楽学部を卒業。同大学院修了。ターティス国際ヴィオラ・コンクールで2つの特別賞、東京国際音楽コンクール「室内楽」部門第1位・2つの特別賞受賞。在学中よりソロと室内楽を中心に内外で幅広く活躍。アンサンブルofトウキョウ、カルテット・プラチナムなどのメンバー。大阪芸術大学客員教授。東京藝術大学音楽学部・東京音楽大学・洗足学園音楽大学非常勤講師。

菊地 知也(きくち ともや) チェロ
 東京藝術大学付属音楽高校、同大学を卒業する。第60回日本音楽コンクール第1位、特別賞を受賞、ほかにも各音楽賞で1位を受賞。「紀尾井シンフォニエッタ東京」「アンサンブル ノマド」などの楽団メンバー、日本フィルハーモニー交響楽団のソリストとして活躍している。東京藝術大学、桐朋学園大学、桐朋学園芸術短期大学非常勤講師を務める。

 



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