第181回例会の内容紹介


♪安達真理・佐藤卓史ジョイント・コンサート

2020.11.8 14:00〜17:00  藤沢リラホール(第181回)


当日のプログラムより

 
出演:安達 真理 (Va)  佐藤 卓史 (Pf)

曲目:
モーツァルト作曲
  ♪幻想曲  ニ短調 K397
  ♪ヴァイオリン・ソナタ 第30番 K.306(ヴィオラ版)
シャミナード作曲
  ピアノのための小品
   ♪「森の精」Op.60
   ♪「昔」Op.87-4
   ♪「秋」Op35-2
フランク作曲
  ♪ヴァイオリン・ソナタ イ長調 FWV8(ヴィオラ版)  
 曲目解説
♪モーツァルト:ピアノのための幻想曲 ニ短調 K.397
 この曲は広く愛好されているが、作品の内容を示す自筆楽譜も筆写譜もなく1804年にウィーンの美術工芸社から出版された不確かな楽譜だけである。
これにはモーツァルトの名前はあるものの断片、遺作とあるだけで、途中から中断しているという。現代はそれに加筆したものが1806年にでているものによっている。
 アンダンテの序章ではじまり、それが終わると第1主題が出てきて次に第2主題になるが、それ以後は即興曲風なパッセージが主体となる。このように変化の激しい曲想は、演奏者にとって演奏の自由が楽しめるのだ。

♪モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ 第30番 ニ長調 K.306(ヴィオラ版)
 モーツァルトはこのジャンルの曲をしばらく書かなかったが、1778年になってパリで6曲書きあげた。これはその最後に当るにふさわしい華麗なもので、これまでの5曲と違い第3楽章まである。第1楽章の第1主題はピアノで示される。展開部ではヴァイオリンとピアノの息もつかせぬかけあいである。 第2楽章のアンダンテ・カンタービレは協奏曲の緩徐楽章を思わせる気品に満ちている。第3楽章は自由なロンド形式による華やかなフィナーレ。ユーモラスな味わいもある。最後にカデンツァがあり、冒頭の主題を繰り返したのち、コーダに入って曲を閉じる。
今日はヴィオラ版で演奏されるので、通常とは違う音色が味わえるだろう。
                   井上太郎

♪C.シャミナード:ピアノのための小品:「森の精」、「昔」、「秋」
 従来、音楽史上では女性の作曲者が、他の芸術面に比しても極端に少なく、ブラームスの擁護者であった批評家のE・ハンスリクなどは「女性は作曲に向いていない」とまで言っていた。確かに職業的に自立し、かつ有名な作品を残した女性は極めて少なかったが、作品を残した女性はシャミナード以前にも、マリア・テレジア・フォン・パラディスやモーツァルトの姉マリア・アンナ、メンデルスゾーンの姉ファニー・ヘンゼルさらにはシューマンの妻となったクララ・ヴィークなどがいるが、いずれも自立した職業作曲家だったとは言えないようだ。そういう意味で本日のシャミナードの作品は貴重なものといえよう。
セシル・L・S・シャミナード(1857-1944)はパリのブルジョワジーの出身。小さい時から母の手ほどきでピアノを習い、すでに幼年期から作曲も試み、8歳の時にジョルジュ・ビゼーに「小さなモーツァルト」と呼ばれたという。当時パリ音楽院の作曲科は女性の入学を許可せず、父も音楽家になることに反対だったため、個人的にピアノや作曲法を習得した。しかし、18歳の時に演奏家としてデビュー、またその作品も世間に認知されるようになって1879年には国民音楽協会の正会員にもなった。初期には管弦楽曲やピアノ協奏曲、バレエやオペラも手掛けたが、経済的自立を選んでからは、小さなピアノ曲やサロン向きの歌曲を多数作曲して人気を博し、「スカーフ」の踊り(Op37-3)などはヒット曲となった。たびたびの国内演奏旅行に次いで92年からは英国旅行も行い、ヴィクトリア女王に御前演奏も行っている。やがてレコードなどにより米国でも人気が出て1908年には渡米して大歓迎を受けている。6年で終了した結婚生活では、一度も同棲しなかったらしい。13年には女性作曲家として初めて、レジオン・ドヌール勲章を受けた。18年から無謀なダイエットを行った結果、骨粗しょう症をきたして歩行困難、最後は左足の切断に至っている。晩年はモンテカルロに隠棲したが、ヴィシー政権に契約先のユダヤ系の出版社が弾圧されて印税がストップされ、不幸な最後を送ったといわれる。戦後、その作品は前時代的なものとして忘却されたが、90年代にフルートと管弦楽のための「コンチェルティーノ」が演奏会で取り上げられ、他のピアノ作品も復活して今日に至っている。
シャミナードの今日取り上げられる作品はいずれも美しいメロディーの歌曲風な部分とピアニスティックで技巧的なものが組み合わさったものでいかにも彼女らしい繊細さを持ったものである。
 「森の精」は静かな森にいたずら好きな妖精が飛び回る光景を思わせるし、「昔」(過ぎ去った日々)も短いがサロンミュージックの典型であり、時にラヴェルやサティを思い起こさせる部分もある。また「秋」は作品35の6つの演奏会用練習曲集の2番目で美しく親しみやすいメロディーに満ちているところからアンコールピースとして演奏されることが多い。

♪C.フランク:ヴァイオリン・ソナタ イ長調
 
本日演奏されるフランク(1822-90)のソナタは、もともとヴァイオリンのために書かれたものだが、その完成度の高さ、美しさから、多くの演奏者が他の楽器のために編曲し、演奏されている。当会ではすでにオリジナル(Vn)及びチェロの編曲版が演奏されているが、ヴィオラで一味変わったものをお楽しみください。
86年に作曲されたこのヴァイオリン・ソナタは同郷のヴァイオリニスト、ウジェーヌ・イザイの結婚祝いとして作曲、献呈され、イザイの活躍もあって大評判を取り、フランクの代表作となった作品である。4楽章からなり、フランクが得意とした作曲技法の循環形式(名曲交響曲ニ短調でも用いられている)で作曲されており、第1楽章の冒頭の旋律が、全楽章を統一する堅固な構成となっている。このメロディーはすべての楽章に登場するが、そのたびに力強い印象を与えてゆく。リリシズムや情熱性やおおらかさにも欠けておらず、ピアノとヴァイオリンの音楽的内容が対等であり、ピアノはヴァイオリンの伴奏ではなく、ヴァイオリンも単なる独奏楽器ではなく、ピアノとヴァイオリンの二重奏曲と呼ぶべき大曲である。この名作を演奏したいという様々な楽器の演奏家たちの要望によって、チェロやフルート用に種々の編曲版が出版されてきていることは前述した。
                 吉野 忠彦


◎出演者のプロフィール

佐藤 勝重 (さとう かつしげ) ピアノ
 桐朋女子高等学校音楽科(共学)を首席で卒業後渡仏。パリ国立高等音楽院を1等賞、パリ・エコール・ノルマル音楽院の高等演奏家課程を賞賛つき満場一致で卒業。福岡幸子、江戸弘子、G.フレミー、G.ムニエの各氏に師事。全日本学生音楽コンクール全国大会優勝やSOFIA国際ピアノコンクール第1位受賞など、国内外のコンクールに入賞する傍ら数多くのコンサートに出演。また、2000年にはワルシャワで行われた第14回ショパン国際ピアノコンクールに日本代表として選抜され推薦出場を果たした。近年は室内楽にも力を入れており、日本を代表する弦、管楽器アーティストと全国各地の演奏会で共演し、これまで7枚の室内楽CDを録音している。また、音楽雑誌への執筆やセミナーでの講義、全日本学生音楽コンクールなどの審査員も務め、桐朋学園音楽大学、昭和音楽大学にて後進の指導にも力を入れている。

三上 亮 (みかみ りょう) ヴァイオリン 
 東京芸術大学音楽学部首席卒業後、アメリカ南メソディスト大学メドウズ音楽院、ローザンヌ高等音楽院、メニューイン国際音楽アカデミーで研鑽を積む。景山誠治、E.シュミーダー、P.アモイヤル、A.リシー各氏に師事。安宅賞、日本音楽コンクール第2位、ブリテン国際ヴァイオリンコンクール特別賞、ストラディヴァリウスコンクール第2位など受賞。NHK-Eテレ「らららクラシック」やNHK-FM「気ままにクラシック」などにも出演。札幌交響楽団コンサートマスター、東京芸術大学非常勤講師、日本音楽コンクール審査員を務めた。サイトウ・キネン・オーケストラ、ヴィルタスクヮルテットのメンバーとしても活躍。使用楽器は1628年製ニコロ アマティ。

長石 篤志 (ながいし あつし) ヴィオラ
 大分県出身。4歳よりヴァイオリンを始める。第24回及び第27回大分県音楽コンクールで第1位を受賞。福岡教育大学芸術コース卒業、同大学院卒業。フィレンツェへの留学を機にヴィオラへ転向。フィエーゾレ音楽院にてアントネッロ・ファルッリに師事する。帰国後は東京に拠点を移し、東京フィル・群馬交響楽団・仙台フィル・日本センチュリー響・浜松フィル等オーケストラのゲスト首席として出演。また、幅広いジャンルのレコーディングにも参加。日本クラシック音楽コンクール全国大会審査員。

江口 心一 (えぐち しんいち) チェロ
 3歳からヴァイオリンを始める。8歳でチェロに転向。11歳、12歳の時スズキメソードのテンチルドレンの一員としてニューヨークのカーネギーホール、シドニーのオペラハウスなどを含むアメリカ、オーストラリア、ヨーロッパ各地のホールで演奏をする。1991年桐朋女子高等学校音楽科(男女共学)を卒業後ベルギーのブリュッセルに留学。1992年 フランスのパリ国立高等音楽院に首席で入学。1997年 パリ国立高等音楽院で一等賞(プルミエプリ)を獲得。2000年1月より東京都交響楽団団員。現在同交響楽団 副首席。

 



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