第182回例会の内容紹介


♪山本貴志 ピアノ・リサイタル

2021.3.14 14:00〜17:00  藤沢リラホール(第182回)


当日のプログラムより

 
出演:山本貴志 (Pf)

曲目:
モーツァルト作曲
  ♪ピアノソナタ第6番 ニ長調 K.284
  ♪ロンド ニ長調 K.485
  ♪ロンド イ短調 K.511
ショパン作曲
  ♪2つのノクターン op.55
  ♪3つのマズルカ op.59
  ♪舟歌 嬰ヘ長調 op.60
  ♪ポロネーズ第6番 変イ長調 op.53「英雄」 
 曲目解説
♪モーツァルト:ピアノ・ソナタ 第6番 ニ長調 K.284
 この曲は、バイエルン選帝侯の侍従で、音楽愛好家のデュルニッツ男爵に依頼されて書いたもので《デュルニッツ・ソナタ》と呼ばれている。この頃に書かれた6曲のソナタ・シリーズの最後を飾るにふさわしい作品。始まりが主和音のアルペジオなのも、この曲に適合している。この曲の1番の特色は第3楽章で、約15分もかかる長い変奏曲なのだ。これによりモーツァルトの作曲技法の様々が味わえる。
 この曲は旅先の名地で弾いており、中でもアウクスブルクでシュタインの新しいピアノで弾いて満足したと父に報告している。

♪モーツァルト:ロンド ニ長調 K.485
 ピアノの教材に使われている事の多いこの曲の自筆楽譜には、1786年1月10日とある。
 この曲の主題はクリスティアン・バッハ(有名なバッハの弟)の五重奏曲の第2楽章から取られたもので、ロンドと言っても単一主題のソナタ型式をとっており、それが様々に転調する。

♪モーツァルト:ロンド イ短調 K.511 
 1787年3月11日とあるが、誰からの注文かわからない。短調で書かれているので、哀愁がただよう美しい曲だ。
                  井上太郎

 ショパンとジョルジュ・サンドの二人はショパンの悪化してゆく健康とサンドの連れ子のモーリスの健康のために地中海に浮かぶスペイン領マヨルカ島へ愛の逃避行を行う(1838年11月―39年2月)が、不便な山中のバルデモーサ修道院の一角に借り住まいを余儀なくされた。さらに愛用のプレイエルのピアノも税関の関係で適時に届かず、生活は悲惨なものとなった。やがて、ショパンの肺結核は気候のせいもあって悪化、島の人々からも冷たくされた末、かろうじて確保できた豚の輸送船に運ばれてバルセロナへ引き上げたのであった。この年の後半、ショパンはサンドの別荘のあるノアンに滞在し、やっと落ち着くことができた。サンドの献身的な介護と美しい自然環境が彼をよみがえらせ、47年の別れまで毎年夏をノアンで過ごす生活を続けることになり、続々と傑作が生まれた。本日演奏される4つの作品番号の曲はいずれもサンドとの生活の後半に書かれた円熟期の名作である。

♪ショパン:2つのノクターン 作品55
・第1番(第16番) ヘ短調 作品55-1
・第2番(第17番) 変ホ長調 作品55-2
 1843年に書かれたノクターン(夜想曲)。夜想曲とは本来修道院などで夕方に行われる晩祷のことで、そこから夜の瞑想ということでロマン的なサロン音楽と結びついたらしい。元祖はM・クレメンティの弟子のアイルランド出身のジョン・フィールドでアルペッジョの伴奏にのせて,歌曲風の旋律を演奏するもので自由な表現を好んだショパンには絶好のジャンルであり、全生涯にわたり20曲を書いている。作品55は後に世話になった弟子のジェーン・スターリングに献呈された。1番は典型的な3部形式。2番はロンド形式に近いが展開部も再現部もなくやたらに転調をする技巧的に難しい曲、最後に注意!

♪ショパン:3つのマズルカ 作品59
・第1番(第36番)イ短調   作品59-1
・第2番(第37番)変イ長調  作品59-2
・第3番(第38番)嬰へ短調  作品59-3
 マズルカは4分の3拍子を基本とする特徴的なリズムを持つ、ポロネーズと並んで有名なポーランドの民族舞踊およびその形式で、貴族たちが好んで踊った曲をショパンはいろいろな地方の舞踊の要素を取り入れて芸術的に昇華させた。作品59は45年に書かれているが、第1番は豊かな情感と主題の大胆な転調、第2番は優美さとマズルカ(ワルツに近い)への転化、第3番は回転感に若干の悲哀感が伴うのが魅力。

♪舟歌 嬰ヘ長調 作品60
 1845-46年に作曲された。舟歌(バルカローレ)はヴェネチアのゴンドラ漕ぎの歌で本来8分の6拍子だが、ショパンは8分の12拍子にし、旋律線をより長く流暢なものにしている。このころショパンは、サンドとの破局の寸前で、自身の病気も悪化し、心身ともに疲れ果てていたと言われており、秘められた思いがにじみ出るような静かで美しい曲だが、構成の美しさ、主題材料の発展の精密さ、旋律や和声の優雅さなどにおいて、ショパンの作品中もっとも完璧なものと言えるだろう。その分、技巧的にも表現的にも非常に難しい。

♪ショパン:ポロネーズ第6番 変イ長調「英雄」 作品53
 1842年に作曲。ショパンの18のポロネーズの中でも「軍隊ポロネーズ」(第3番イ長調)や「幻想ポロネーズ」(第7番変イ長調)とともに有名であり、人気が高い。力強いリズムを持つ本作品は、ポーランドの栄光をたたえているとされ、ショパンの愛国心のあらわれとみられる。
「舟歌」を作曲した46年、サンドが自分たちをモデルにした小説「ルクレツィア・フロリアーニ」が評判となり、その中で純粋無垢で登場しながら次第に狭量でエゴイスティック、かつ嫉妬深く変身してゆくカロルという青年が自分であることを知りショパンは傷ついたという。48年2月にパリでの最後となった華やかなコンサートを開催したが、経済的には大きな助けとならず、見かねた弟子の英国人のスターリングという女性が、7か月にわたる英国ツアーを企てロンドン、エジンバラへと強引に連れて回ったが、当然ショパンの健康は悪化し、帰国後、重病人として床に就くことが多くなった。1849年7月ショパンの助けを求める手紙に姉ルドヴィカが駆けつけて看護をしたが、ついに10月17日死去した。マドレーヌ寺院で行われた葬儀には3000人もの人が参列したが、ノアンにいたサンドは、ついに姿を見せなかった。
                 吉野 忠彦


◎出演者のプロフィール

山本 貴志 (やまもと たかし) ピアノ
 長野市生まれ。5歳でピアノを始め、97年第12回長野県ピアノコンクールにてグランプリ受賞。98年第52回全日本学生音楽コンクール東京大会中学校の部で第3位。01年第70回日本音楽コンクール第3位。02年桐朋女子高等学校音楽科(男女共学)を首席で卒業後、ソリストディプロマコースに在籍。03年より5年間、ワルシャワ・ショパン音楽院(現ショパン音楽大学)にて研鑽を積む。04年文化庁新進芸術家海外留学研修員。04年第56回プラハの春国際音楽コンクール第3位、05年第15回ショパン国際ピアノコンクール第4位、06年第14回ジーナ・バッカウアー国際ピアノコンクール第2位など国際コンクールにおいて多数の受賞歴を持つ。第33回日本ショパン協会賞を受賞。08年ショパン音楽院を首席で卒業。これまでに大島正泰、玉置善己、ピオトル・パレチニの各氏に師事。ワルシャワ国立フィルハーモニー管弦楽団、スロヴァキアフィルハーモニー管弦楽団、ブダペストフィルハーモニー管弦楽団、ベルリン交響楽団、関西フィルハーモニー管弦楽団、京都市交響楽団などを始めとする国内外のオーケストラと共演を重ねるほか、リサイタル、室内楽公演など幅広く活躍中。現在ワルシャワに拠点を持ち、「ポーランドのこころを伝えるピアニスト」として注目を集めている。

 



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