第60回例会の内容紹介
天満 敦子のヴァイオリン
平成12年10月15日 14:00 藤沢リラホール
プログラム
ヴァイオリン 天満 敦子
ピアノ伴奏 掛谷 勇三
フォーレ
ヴァイオリン・ソナタ 第1番 イ長調 作品13
第1楽章 アレグロ・モルト
第2楽章 アンダンテ
第3楽章 アレグロ・ヴィーヴォ
第4楽章 アレグロ・クァジ・ブレスト
バッハ
無伴奏ヴァイオリンのパルティータ 第2番 ニ短調 BWV1004
第1楽章 アルマンド
第2楽章 クーラント
第3楽章 サラバンド
第4楽章 ジーグ
第5楽章 シャコンヌ
W.A.モーツァルト
ヴァイオリン・ソナタ 変ロ長調 K.454
第1楽章 ラルゴ アレグロ
第2楽章 アンダンテ
第3楽章 アレグレット
サン=サーンス
序奏とロンド・カブリチオーソ イ短調 作品28
ボルムベスク
望郷のバラード ホ短調

曲 目 解説
井上 太郎
●フォーレ:ヴァイオリン・ソナタ 第1番 イ長調 作品13
天国的な美しさのレクィエムで知られる近代フランスの作曲家フオーレは、室内楽にも数々の名曲を残しております。中でもこれは最も演奏される機会の多い作品で、作曲されたのは1876年31歳の時です。
第1楽章の第一主題はピアノから始まります。分散和音に包まれていますが、やがてヴァイオリンがくっきりと描き出します。和声の美しさを味わって下さい。
第2楽章は暗いニ短調で、深い悲しみに沈みますが、第3楽章はがらりと趣きを変えたスケルツオ風の曲。
第4楽章はフオーレの美しい旋律と典雅な和声が溶け合ったすばらしいフィナーレです。
●バッハ:無伴奏ヴァイオリンのパルティータ 第2番 二短調 BWV1004
バッハは無伴奏のヴァイオリンのために、3曲のソナタと3曲のパルティータを残しました。作曲の年代は1720年頃とされます。これらは1挺のヴァイオリンで表現出来る極限を追究したものと言え、そのために重音奏法の使われることが多く、単音との対比により
音楽の広がりが表現されます。パルティータはソナタと違って舞曲よりなりますが、この第2番では第5楽章のシャコンヌが他の4楽章を合わせたほどの長さを持ち、これだけ単独で演奏されるほど有名です。
●モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ 変口長調 K.454
1784年4月29日にウィーンのケルントナートゥーア劇場で、皇帝ヨーゼフU世臨席の下に初演された時、ヴァイオリンを弾いたストリナサッキ夫人は、モーツァルトも手紙の中で絶賛している名手でした。ところが彼は全曲を書き上げる時間がなく、ピアノのパートはスケッチをもとに、即興で弾いたと言われます。
第1楽章が堂々としたラルゴで始まるのも、この作品にかけたモーツァルトの意気込みの現れでしょう。アレグロの主部は伸びやかな主題が美しく、展開部は半音階が多用され、ロマンチックな趣きを持ちます。
第2楽章は変ホ長調の非常に美しいアンダンテ。展開部の転調は意表をつくもので、一種の不安な心の動揺を思わせます。
第3楽章は親しみやすいロンドです。
●サン=サーンス:序奏とロンド・カブリチオーソ イ短調 作品28
近代フランスの作曲家サン=サーンスはモーツァルトの再来かと言われるほどの神童で、3歳で作曲を始めたと言われます。長じてからは作曲ばかりでなく、ピアニストとしても名声が高く、ロンドンでモーツァルトのピアノ・コンチェルトの全曲演奏を行なっております。また一時期、フオーレの作曲の師でした。
この曲は丁度その頃の1863年に書かれました。原曲は独奏ヴァイオリンとオーケストラで、ヴァイオリンの名手サラサーテに献呈されました。ヴァイオリンの技巧を最高度に発揮する情熱的な曲想により、広く親しまれております。
●ボルムベスク:望郷のバラード ホ短調
この曲はルーマニアの作曲家チプリアン・ポルムベスク(1853−1883)がオーストリア・ハンガリー帝国の圧制に抵抗して投獄され、獄中で故郷をしのびながら書いたものと言われます。原曲名は「詩曲」を意味する(バラーダ)ですが、天満敦子さんによる日本初演以来(望郷のバラード)の名が定着しました。正に打って付けの曲名と言えましょう。 1977年のこと、ウィーンの日本大使館に勤務していたある外交官が、村の教会で開かれたコンサートで耳にしたこの曲に感動して演奏者を楽屋に訪ねたことから始まるこの曲にまつわる数奇な物語は、天満さんの名演とともに初演のCDをベストセラーにしました。
その哀愁の旋律は誰の一心も捉えて放しません。

※出演者のプロフィール
天満敦子(ヴァイオリン)
東京芸術大学在学中に日本音楽コンクール第1位、ロン・ティボー国際コンクール特別銀賞等を受賞。大学院終了後、内外でコンサート活動を展開。その間、海野義堆、故レオニード・コーガン、ヘルマン・クレッパース氏などにその才能を愛され、永年にわたって親身の薫陶を受ける。
1992年「文化使節」として訪れたルーマニアでは高い評価を受け、公演は空前の成功を収めた。またこの訪問を機縁に彼女が日本初演を果たした薄倖の天才ポルムベスクの遺作(望郷のバラード)はクラシック音楽界では異例の大ヒット曲となった。
この3年間、訪れた国は延ベ20カ国に及ぶ。朝日新聞に連載された高樹のぶ子の小説「百年の予言」に登場する女主人公走馬充子は彼女がモデル。作品を貫いて流れる憂愁の旋律(バラーダ)は言うまでもなく(望郷のバラード)である。
使用楽器はアントニオ・ストラディヴァリウスの晩年の名器。伝説の巨匠ウージェーヌ・イザイ遺愛の名弓で奏でるヴァイオリンの音色は豊麗にしてかつ繊細、他の追随を許さない。
天衣無縫、個性味あふれる語り口と、ステージにおける強烈な自己投入が彼女の魅力と言われるが、その裏には秘められた深い譜読みと、絶えざる研鑽の日々がある。
現在、東邦音楽大学特任助教授。
掛谷勇三(ピアノ)
1988年東京芸術大学音楽学部を卒業後渡米、バイロン・ジャニス氏に師事。1992年マンハッタン音楽院修士過程終了。1993年からウィーンにてパウル・バドゥラ=スコダ、今井顕の両氏に指導を受ける。
1995年津田ホールでデビュー・リサイタルを開催。その後ソロと室内楽の両分野で活躍中。


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