第63回例会の内容紹介
津田真理のピアノ
平成13年4月22日 14:00 藤沢リラホール
プログラム
ピアノ 津田 真理
バッハ:イタリア協奏曲 ヘ長調 BWV971
第1楽章(テンポ指定なし)ヘ長調
第2楽章 アンダンテ ニ短調
第3楽章 プレスト ヘ長調
モーツァルト:ロンド ニ長調 K.485
モーツァルト:ピアノ・ソナタ イ短調 K.310
第1楽章 アレグロ・マエストーゾ イ短調
第2楽章 アンダンテ・カンタービレ・
コン・エスプレシオーネ ヘ長調
第3楽章 プレスト イ短調
ショパン:24のプレリュード全曲 Op.28
No.1 ハ長調 No.2 イ短調
No.3 ト長調 No.4 ホ短調
No.5 ニ長調 No.6 ロ短調
No.7 イ長調 No.8 嬰ヘ短調
No.9 ホ長調 No.10 嬰ハ短調
No.11 ロ長調 No.12 嬰ト短調
No.13 嬰ヘ長調 No.14 変ホ短調
No.15 変ニ長調 No.16 変ロ短調
No.17 変イ長調 No.18 ヘ短調
No.19 変ホ長調 No.20 ハ短調
No.21 変ロ長調 No.22 ト短調
No.23 へ長調 No.24 ニ短調

曲 目 解説
井上 太郎
●バッハ:イタリア協奏曲 へ長調 BWV971
この曲の原題が「イタリア趣味による協奏曲」であるように、バッハはヴィヴァルディを初めとする同時代のイタリアの作曲家を熱心に研究し、編曲も試みています。この曲が独奏曲でありながら協奏曲と名付けられているのは、イタリア風の協奏曲のスタイルを、2段鍵盤のチェンバロで生かそうとしたからです。現代ではピアノで演奏されることが普通ですけれども、バッハの本来のねらいはそこにありました。
第1楽章にはテンポの指定はありませんが、アレグレットと解釈されます。元気のよい冒頭の主題と、細かい動きの副主題が協奏曲風に競い合います。
第2楽章はニ短調で、ヴァイオリン協奏曲の緩徐楽章の趣きを持ち、両端楽章と対照的です。憂いを帯びた美しい旋律に、誰もが魅せられるでしょう。
第3楽章は再びへ長調に戻り、活気に溢れています。
●モーツァルト:ロンド ニ長調 K.485
自筆楽譜には「1786年1月10日、ウィーンにて」とありますが、1784年以来つけていた自作目録にはなぜか記入されておらず、主題はクリスティアン・バッハの曲から取られました。教材用の曲として有名です。
●モーツァルト:ピアノ・ソナタイ短調 K.310
この自筆楽譜には「パリ、1778年」とあります。22歳の彼が母とマンハイムからパリヘと旅したのは、新しい就職口を求めてでした。しかしパリで母が病死するという不幸に見舞われます。この曲が母の死後に作られたのかどうかは確定できませんが、母の死から受けた悲しみの反映があると思わずにはいられません。
第1楽章の悲劇的な切迫感は異常なほどです。
第2楽章は安らぎを求めているようですが、中間部には不協和音が連続して出てくるのです。
第3楽章は正しく走る悲しみと言ってよいでしょう。
●ショパン:24の前奏曲 Op.28
すべての調を使った曲集にはバッハの《平均率クラヴィーア曲集)という先例があり、ショパンは当然これを意識していますが、曲の配列はバッハと違います。
バッハのはハ長調に続いてハ短調を、次に半音上の嬰ハ長調と嬰ハ短調をといった配列です。ところがショパンはハ長調の次にイ短調を、続いてト長調にホ短調をという具合にシャープ系の曲の長調と短調を配列し、シャープ6つの嬰ハ長調の第13番に続く第14番をフラット6つの変ホ短調とし、以下フラットが1つずつ減る形で長調の曲と短調の曲を配列しました。ほとんどが1分前後、長くても2、3分ですが、変ニ長調の第15番だけは5分近い長さです。
第1番ハ長調の晴れやかさに対し、第2番イ短調は陰欝です。この対比は全部にわたります。軽快な第3番卜長調と対照的な第4番ホ短調は、ショパンの葬儀の時にオルガンで弾かれました。第5番ニ長調はアラベスク風の小曲。
第6番ロ短調は、彼と同棲していたジョルジュ・サンドによれば、ある雨の夜に帰宅した時、弾いていた曲といいます。第7番イ長調は宝石のような美しい曲。第8番嬰ヘ短調は細かな装飾音の連続で、高度の技巧が要求されます。
第9番ホ長調は荘厳な歩みを思わせ、第10番嬰ハ短調は妖精が走り回るような小品。第11番ロ長調は少女の微笑みを思わせるような旋律が美しい曲。それに続く第12番嬰卜短調には恐ろしい切迫感があります。第13番嬰ヘ長調は夜想曲風のすばらしい曲。それに対し第14番変ホ短調は暗黒一色です。
第15番変二長調は《雨垂れ》の愛称で親しまれており、明暗の対比が劇的。第16番変ロ短調は激烈な曲。第17番変イ長調はメンデルスゾーンの無言歌風。第18番ヘ短調は短いながら奔放窮まりなく、第19番変ホ長調は3連音が描き出す旋律が見事。第20番ハ短調は葬送行進曲風。第21番は夜想曲の旋律が甘美。
第21番ト短調は左手が活躍する豪放な曲。第23番ヘ長調は美しい幻さながら。第24番ニ短調は極めて劇的で、最後は一気に6オクターヴ降って終わります。
※出演者のプロフィール
津田 真理
田園調布雙葉学園から桐朋学園大学に学ぶ。その間、全日本学生音楽コンクールで全国第1位となる。同大学1年在学中にオーストリア政府の奨学金を受け、ザルツブルクのモーツァルテウム音楽院に留学。ハンス・ライグラフ氏に師事する。
1983年に第34回ヴィオッティ国際コンクールにて第1位及び特賞を獲得。その後イタリア各地でリサイタルを行い、また数々の音楽祭に招かれ絶賛された。1986年ボルドー音楽祭で金メダルを受賞。
同年モーツァルテウム音楽院を最優秀の成績で卒業。その後パリのエコール・ノルマル音楽院にてG.ムニエ氏に師事して研鎖を積み1989年に帰国。
以来リサイタルをはじめ国内外の一流オーケストラと共演、また海外著名オーケストラ日本公演のソリスト、さらに室内楽などでも幅広く活躍。
CDは「モーツァルト・リサイタル」「ショパン・スケルツオ(全曲)」「プレイズ ドビュッシー&ラヴェル」「夕暮れのサティ」をリリースする。
98年には紀尾井ホールをはじめ全国各地でリサイタルを開催する。99年にはNHK「音楽の泉」放送50周年スペシャルコンサートに出演。
また東京ガス・銀座ポケットパークでは、95〜99年、計6回にわたりサロンコンサートに出演。演奏の合間には自ら曲目解説を語り、好評を博した。

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