湘南モーツァルト愛好会

   

 第64回例会の内容紹介 

オーケストラ・アンサンブル金沢
のメンバーによる室内楽
   平成13年5月20日 14:00 藤沢リラホール

プログラム

モーツァルト:弦楽4重奏曲
        <プロシア王セット>全曲



弦楽4重奏曲 第21番 ニ長調 K.575

  第1楽章 アレグレット
  第2楽章 アンダンテ
  第3楽章 メヌエット アレグレット
  第4楽章 アレグレット

弦楽4重奏曲 第22番 変ロ長調 K.589

  第1楽章 アレグロ
  第2楽章 ラルゲット
  第3楽章 メヌエット モデラート
  第4楽章 アレグロ・アッサイ

弦楽4重奏曲 第23番 ヘ長調 K.590

  第1楽章 アレグロ・モデラート
  第2楽章 アンダンテ(アレグレット)
  第3楽章 メヌエット アレグレット
  第4楽章 アレグロ

        ♪ ♪ ♪

  第1ヴァイオリン 坂本久仁雄
  第2ヴァイオリン 上島 淳子
  ヴィオラ    石鳥 靖典
  チェロ     大澤  明




曲 目 解説

                                  井上 太郎


 モーツァルトは1789年4月、フリーメイスンの仲間であり、また弟子でもあったカール・リヒノフスキー侯爵と約2カ月にわたる旅をし、プラハ、ドレスデン、ライプツイツヒ、ポツダム、ベルリンなどに立ち寄りました。ベルリンではプロシア王、フリードリッヒ・ゲィルへルム2世から6曲の弦楽四重奏曲の作曲を依頼されます。ところがモーツァルトは半分の3曲を完成しただけで、この世を去りました。

 「プロシア王セット」と呼ばれるこの3曲に共通しているのは、チェロの演奏に長けていた王の存在を考えて、チェロのパートが活濯することです。


●弦楽四重奏曲 第21番 二長調 K.575
 完成されたのは旅から帰って間もない1789年6月。第1楽章の冒頭ではチェロは沈黙していますが、23小節から高音域で朗々と唱い始め、ほかのパートはそれに従うかのようです。

 第2楽章はイ長調で、冒頭の主題は有名な歌曲(すみれ)K.476に似ております。
 第3楽章のメヌエットはニ長調で、歯切れのよい主題で始まります。後半はユニゾンでイ短調からホ短調、ロ短調、ニ短調と変わり、チェロの低いイ音に対し、変ロ音やト音といった不協和音が奏されるのは、王と臣下の対立を思わせます。トリオではチェロの活躍が顕著で、ヴィオラが低音を受け持っています。

 第4楽章では冒頭からチェロがヴィオラの低音を伴いながら、朗々と唱い始めます。


●弦楽四重奏曲 第22番 変口長調 K.589

 完成されたのは、彼がつけていた「作品目録」によれば1790年5月です。第1曲に続いて書かれなかった事情を、当時しきりと借金を申し入れていたプッフベルクへの手紙に「現状を打破するためには、手っ取り早く金を稼がねばならず、そのためにピアノ・ソナタや歌を作曲していて、弦楽四重奏曲の完成が遅れている」と書いております。

 モーツァルトにとって弦楽四重奏曲の作曲は最も骨の折れる仕事であったようで、1782年から85年にかけて書かれた6曲の「ハイドン・セット」の時にも「長くつらい労苦の結実」と献辞に書いております。

 第1楽章は第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンの3度の平行の第1主題で優雅に始まります。第2主題は.チェロの高音域が奏し、この時、ヴィオラどころかヴァイオリンまでチェロより低い音域にとどまります。

 第2楽章は変ホ長調のラルゲットで、やはり最初からチェロが高音域で唱い始めます。

 第3楽章は変ロ長調のメヌエットですが、変ホ長調で書かれたトリオは二重構造になっています。

 第4楽章は8分の6拍子の闊達なフィナーレです。


●弦楽四重奏曲 第23番 へ長調 K.590
1790年6月の日付を持つこの曲は、モーツァルトが完成した最後の弦楽四重奏曲です。これらは彼の生前に出版されることになっていたのですが、アリターリアから出版されたのは、彼の死後でした。

 この曲は「プロシア王・セット」の中で最も規模が大きく、充実した傑作です。

 第1楽章は4つの楽器のユニゾンで始まります。この第1主題に対し、第2主題はチェロの高音域で奏されます。

 第2楽章はハ長調で書かれておりますが、テンポは自筆譜ではアンダンテ、初版ではアレグレットになっております。冒頭の8分音符と付点4分音符による静かな主題がはとんど全域にわたって繰り返される上に、16分音符の装鮪的なフレーズがからんでゆきます。

 第3楽章のメヌエットはへ長調で、上の声部と低音部との対比に特色があります。

 第4楽章は300小節を越える長大なフィナーレで16分音符の主題が執拗に繰り返され、最後はカノン風の手法を使って盛り上がります。


※出演者のプロフィール


♪坂本久仁雄(第1ヴァイオリン)
 青森県出身。武蔵野音楽大学卒業。米、ウィスコンシン大学、ノースウェスタン大学大学院、及び同大学ディプロマコースにて学ぶ。

♪上島 淳子(第2ヴァイオリン)
 東京都出身。桐朋学園大学音楽学部卒業。同大学研究科終了。その後、桐朋オーケストラ・アカデミーにて研鑽を積む。1998年よりオーケストラ・アンサンプル金沢の第1ヴァイオリン奏者。

♪石黒 靖典(ヴィオラ)
 
石川県出身。昭和音楽大学卒業。兎束俊之氏に師事する。また、室内楽等の研鑽も積む。

♪大澤 明(チェロ)

 富山県出身。京都市立芸術大学卒業。黒沼俊夫、上村昇氏に師事する。フィレンツェでプランコ・ロッシ氏、カナダ、ニューヨークでハーヴィー・シャピロ氏に学ぶ。

♪上記の方々はいずれもオーケストラ・アンサンブル金沢のメンバーです。