第69回例会の内容紹介
トークコンサート
「モーツァルトの変奏曲をめぐって」
平成14年4月14日 14:00 藤沢リラホール
プログラム
ピアノ独奏とお話 久元祐子
演奏曲目
♪モーツァルト:ナッソウの歌曲による7つの変奏曲二長調K.25 ♪J.G.エッカルト:エクゾテのメヌエットによる6つの変奏曲 ♪ヨハン・クリスティアン・バッハ: クラヴィーア・ソナタト長調 作品5−3 第2楽章 ♪モーツァルト:サリエリの主題による6つの変奏曲 卜長調K.180 ♪モーツァルト:グレトリーのオペラ「サラニウム人の結婚」の 合唱曲「愛の神」による 8つの変奏曲 へ長調 K.352 ♪モーツァルト:クラヴィーア・ソナタ イ長調 K.331
プログラムによせて
井上 太郎
今日はトーク・コンサートなので、個々の曲については久元さんのお話があると思いますから、それ以外のことに触れたいと思います。
モーツァルト時代のコンサート・プログラム
現代のコンサートは百年も二百年も前に作られた作品が中心で、「現代音楽」がプログラムに載ることは1パーセントもないでしょう。ところがモーツァルトの時代は全く逆で、殆どが出来たての「現代音楽」でした。今のポップス系の音楽に似ております。
しかし「古楽」の愛好者も僅かながらおりました。モーツァルトの重要な庇護者であり、帝室王室図書館長であったゴットフリート・ヴァン・スヴィーテン男爵(1733−1803)がそれです。彼はシンフォニーを書くほどの音楽通で、自邸に「古楽」の楽譜の見事なコレクションを持っておりました。その中心はバッハ父子の作品とヘンデルの作品でした。
自邸のサロンで毎週日曜日に開かれる演奏会では、これらの作品が演奏され、モーツァルトはここで初めて一時代前の音楽をたくさん知ることになります。
1782年4月10日の手紙には「そこでは、ヘンデルとバッハ以外には何も演奏されません」とあり、当時の演奏会では例外的であったことを強調しております。
しかし古いと言っても作られてから数十年しか経っていないのです。今に時間をずらすとオリヴィエ・メシアン(1923−1992)の 《トゥランガリラ交響曲》(1948)さえも「古楽」として扱われたことになります。
「作曲家たちの太陽」の図が示すもの −
モーツァルトと同じ年に生まれ、2倍以上長生きしたイギリスの音楽学者クリストファ・コルマン(1756−1829)が1799年、つまりモーツァルトが死んで8年後にまとめた「作曲家たちの太陽」という図があります。これは「一般音楽新聞」に載ったものですが、当時の人たちが18世紀の作曲家をどう評価していたかを示す興味深い資料です。
中心の正三角型は、図像学で言う「ヤハヴェの目」で、ここにヨハン・セバスティアン・バッハが存在するのは、すでにバッハの評価が専門家の間で確定していた証拠でしょう。その外側にハイドン、ヘンデルの名があるのは、イギリスで人気があったから当然だと思いますが、今では殆ど忘れられているカール・ハインリッヒ・グラウン(1703−1759)の名があるのは意外です。モーツァルトは光芒の良い位置にありますが、大バッハの息子のエマヌエル(1714−1788)、テレマン(1681−1767)、グルック(1714−1787)はよいとしても、コジェルフ(1747−1818)のような、これが発表された頃にはまだ生きて活躍していた作曲家の名があるのは、すでに評価が定まっていたからでしょう。
エッカルトについて
今日の演奏曲目にある作曲家ヨハン・ゴットフリート・エッカルト(1735−1809)はフランスで活躍したドイツの作曲家で、モーツァルトは8歳の時にパリで会っており、モーツァルトの少年時代の作品にはエッカルトの影響が見られると言われます。
※出演者のプロフィール
★久元祐子(ピアノ)
東京芸術大学音楽学部器楽科(ピアノ専攻)を経て、同大学大学院修士課程を修了。在学中、松浦豊明氏に師事。その後、東京芸術大学助教授・植田克己、作曲家・間宮芳生の両氏のもとでさらに研鑽を積む。
リサイタルやオーケストラとの共演、放送番組の出演などのほか、モーツァルトに関するレクチャーリサイタルにも取り組み好評を博す。
1998年『モーツァルトのクラヴィーア音楽探訪一天才と同時代人たち−』(音楽之友社)を刊行。2000年には、「丸善ブックス」から『モーツァルトはどう弾いたか』を刊行。
著書はほかに『世紀末の音楽風景−「夢」の喪失と演奏の現在−』(ムジカノーヴァ)。
毎日21世紀賞、園田高弘賞などを受賞。
久元 祐子さんのホームページ


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