湘南モーツァルト愛好会

   

第70回例会の内容紹介

瀬戸瑶子(ヴァイオリン)と平沢匡朗(ピアノ)による2重奏

  平成14年5月19日 14:00 藤沢リラホール 
  

プログラム

演奏曲目

ヴァイオリンとピアノのためのソナタ
       ト長調 K.301

ヴァイオリンとピアノのためのソナタ
       ニ長調 K.306

ヴァイオリンとピアノのためのソナタ
       ト長調 K.379

アダージョホ長調 K.261

ロンド ト長調(クライスラー編曲)
        ハフナー・セレナードK.250より

ヴァイオリンとピアノのためのソナタ
       変ロ長調 K.378

曲目解説

                                  井上 太郎

 今日の前半に演奏されるのは、1778年11月の初めにパリのシベールから作品1として出版された6曲のソナタの中の2曲です。これを書くのにモーツァルトが参考にしたのは、ヨーゼフ・シュスター(1748−1812)の作品であったことが、1777年10月6日にミュンヘンから楽譜と一緒に送った姉宛の手紙に書かれています。
 「僕はこれらを何度も弾きました。悪くありません。僕がこの地に留まることになれば、同じスタイルでやはり6曲書いてみようと思います。当地では大変人気があるものですから」 モーツァルトがシュスターの曲に興味を持ったのはヴァイオリンとクラヴィチェンバロが同等に扱われて二重奏をするというところにありました。神童時代に作られた曲は、どれもが「ヴァイオリン伴奏つきのクラヴィーア・ソナタ」だったからです。


●ヴァイオリンとピアノのためのソナタ ト長調
 K.301のこの曲は全2楽章の作品で、第1楽章のアレグロ・コン・スピリートはヴァイオリンの流れるような美しい第1主題で始まります。これはヴァイオリンが、もはやピアノの伴奏の立場ではないことを宣言しているかのようです。
 第2楽章はピアノの主旋律で始まり、これをヴァイオリンが繰り返します。つまり2つの楽器が対等であることを意識して書かれていると言えましょう。

●ヴァイオリンとピアノのためのソナタ ニ長調
 K.306のこれは6曲セットの最後を飾る華麗な曲で、それまでの5曲と違い第3楽章まであります。
 第1楽章の第1主題はピアノで示され、展開部での2つの楽器の息もつかせぬ掛け合いが聴きどころです。
 第2楽章には気品のある美しい旋律が溢れています。
 第3楽章は華やかなフィナーレで、最後には長大なカデンツァもあり、元気のよいコーダで曲を終えます。

●ヴァイオリンとピアノのためのソナタ ト長調
 今日の後半に演奏される2曲のソナタは、1781年にウィーンのアルタリーアから作品2として出版された6曲セットの中のものです。
1781年4月8日の手紙に、昨夜の11時から12時の間に今日演奏するソナタを作ったが、書き終える時間が無かったので、翌日の初演の時には、モーツァルトは頭の中に入っているピアノのパートを楽譜無しで弾いたと言っております。これを従来卜長調K.379だとされてきましたが、最近はK.380だと言われています。

 しかしいずれにしろ傑作であることは間違いなく、この曲は私の最も好きなソナタのひとつです。
 第1楽章にはト長調の序奏が付き、主部のアレグロはト短調で書かれております。ピアノのアルペッジョで始まるこの序奏の気品のあるたたずまいは、譬えようもなく美しく、主部の暗い情熱を秘めたアレグロはモーツァルトのト短調独特のものです。
 第2楽章はト長調の主題と5つの変奏曲で第4変奏はト短調です。ヴァイオリンが終始ピチカートで演奏する第5変奏が印象深く、最後に主題が回顧されます。

●アダージョ ホ長調 K.261
 原曲はヴァイオリン協奏曲の緩徐楽章で、自筆楽譜には1776年とあり、第5番の協奏曲の完成後にザルツブルクの宮廷楽団のコンサート・マスターのプルネッティのために第5番(K.219)の第2楽章の代替楽章として書かれたものと考えられております。あまり演奏されることのない作品ですが、私は第5番の第2楽章より優れた真の傑作だと思います。

●ロンド ト長調
 《ハフナー・セレナード ニ長調》K.250として親しまれている8楽章、総演奏時間1時間に及ぶ大曲の第4楽章のロンドーを、往年の名ヴァイオリニストのフリッツ・クライスラー(1875−1962)が編曲したものです。16分音符のくるくる回るような主題が何度も繰り返され、その変化の面白さが聴きどころです。

●ヴァイオリンとピアノのためのソナタ 変ロ長調
 K.378のこの曲は、モーツァルトのヴァイオリン・ソナタの中でとりわけ人気が高く、この曲を私はモーツァルトの 《スプリング・ソナタ》 と名付けたいと書いたことがあります。作曲されたのはザルツブルクで、時期は1779年か80年という説が有力です。
 春風を思わせるような第1楽章の冒頭の快い第1主題が展開部では、短調の陰りを帯びますが、それも束の間、再現部で再び明るざを取り戻します。
 変ホ長調で書かれた第2楽章の冒頭、ピアノが唱いだす主題はモーツァルトが書いた旋律の中でとりわけ美しいものではないでしょうか。
 第3楽章のアレグロは、変ロ長調のロンドーです。4分の3拍子が中心ですが、中間部は3連音をともなう生き生きとしたアレグロです。



  

※出演者のプロフィール

★瀬戸瑶子

 桐朋学園「子供のための音楽教室」、東京芸術大学付属高校、東京芸術大学を経てジュリアード音楽院に入学。カーネギー・ホールのオーディションに入賞。ストコフスキー指揮のアメリカ交響楽団及びサンタフェ・オペラに在籍。
 1975年、小澤征爾の要請により新日本フィルハーモニー交響楽団のコンサートマスターに就任。10年間にわたり数々の名指揮者を支えた。現在、愛知県立芸術大学教授。東京音楽大学非常勤講師。

★平澤匡朗

 桐朋学園大学卒業。GPAダブリン国際ピアノコンクール特別賞受賞。東京交響楽団と共演したほか、ダブリン、ウィーン、東京など国内外でリサイタルを開く。また内外の著名ヴァイオリニスト、声楽家と共演するなど、室内楽奏者、声楽伴奏者として各地で演奏活動を行なっている。また洗足学園大学非常勤講師として後進の指導にもあたっている。




演奏終了後のパーティにて井上会長と談笑する出演者