湘南モーツァルト愛好会のトップ

   

第75回例会の内容紹介

 
モーツァルトとフランクの

  ヴァイオリン・ソナタ
 

  平成15年4月6日 14:00 藤沢リラホール 
  

モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ ホ短調
        K.304
フランク::ヴァイオリン・ソナタ イ長調
モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ ト長調
        K.301
モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ 変ロ長調
        K.378


♪神谷未穂(ヴァイオリン)
♪松井香織(ピアノ)






当日のプログラムより

                                井上 太郎

曲 目 解 説

♪モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ
         ホ短調 K.304


 モーツァルトのヴァイオリン・ソナタの中で唯一の短調のこの曲は、1778年の初め頃にマンハイムで書き始められ、夏にパリで完成された6曲の中の1つです。
 モーツァルトは幼年時代にヴァイオリン・ソナタを10曲書いてから、絶えて書きませんでした。しかしミュンヘンでヨーゼフ・シュースター(1748−1812)のヴァイオリン・ソナタを知り、それに刺激されて書いたのがこの6曲です。このセットはパリのシベールから「作品1」として出版されました。つまりこれには20歳を過ぎたばかりのモーツァルトの、並々ならぬ意欲がこめられていると言えましょう。今日はこのセットの中の2曲が演奏されます。

 第1楽章 アレグロはヴァイオリンとピアノのユニゾンで始まります。小声でつぶやくような短調の主題は、深い寂寥感に包まれています。それを振り切るような長調の主題も出てきますが、この曲にはザルツブルクの大司教に辞表をたたきつけて求職の旅に出た彼の思いが反映しているのではないでしょうか。
 第2楽章 テンポ・ディ・メヌエットの冒頭の主題は、彼の思いがそのまま音になったかのようです。



♪フランク:ヴァイオリン・ソナタ イ長調


 
セザール・フランク(1822−1890)はベルギー生まれのフランスの作曲家で、19世紀後半のフランスの音楽界の中心的な存在となった人です。彼もモーツァルトのように神童と言われるほど早くから音楽の才能が開きましたが、野心家の両親は息子を教育するよりも当座の売り物にするために一家を上げてパリに移住し、フランスの国籍を取ったのでした。フランクの真の才能が認められるようになったのは、40歳近くになってからで、こんにちの演奏会で取り上げられる作品はほとんど晩年のものです。数は多くありません。
 ヴァイオリン・ソナタは1886年64歳の時の作品で、19世妃後半に書かれた数あるヴァイオリン・ソナタの中で群を抜く傑作とされております。

 第1楽章 アレグレット・ベン・モデラート
 イ長調の属9の和音で始まります。この和音は神秘的な響きを作り出し、前奏曲のような趣きがあります。
 第2楽章 アレグロ
 ニ短調で始まるこの楽章は、嬰ハ短調、ハ短調、ロ短調の部分を含む嵐のような趣きの楽章です。激しい転調があり、最後はニ長調で終わります。

 第3楽章 レチタティーヴォ・ファンタジア
 ペン・モデラートの速度指定のあるこの楽章は、ニ短調で始まるかのようですが、複雑な和音が使われており、ト短調になる部分が印象的です。後半は嬰ヘ短調で美しい旋律がうたわれます。

 第4楽章 アレグレット・ボコ・モッソ
 この楽章に来て初めて明るいイ長調になります。この楽章の特色はピアノとヴァイオリンが1小節ずつずれて同じ旋律を繰り返すカノンが中心となっていることです。中間に変ロ短調や嬰ニ短調の部分が出てきますが、イ長調のカノンに再び戻って曲を閉じます。



♪モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ

        
 ト長調 K.301

1778年にパリで「作品1」として出版された6曲のヴァイオリン・ソナタのセットには、今日最初に演奏されたホ短調とともにこの曲も含まれており、これがセットのトップです。作曲は1778年の2月頃と考えられ、作曲された場所はマンハイムとされております。

 第1楽章 アレグロ・コン・スピリートは伸びやかな第1主題で始まります。展開部はイ短調で始まり、半音階が多く使われ、後半はニ短調を経てト長調の再現部に戻ります。
 第2楽章 アレグロはロンド形式で書かれております。中間にト短調の暗い部分がありますが、再び明るいト長調に戻って曲を終えます。



♪モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ
        変ロ長調 K.378


 
モーツァルトのヴァイオリン・ソナタの中で取り分け人気の高いこの曲が作曲されたのは、パリ旅行からザルツブルクに帰って間もない、1779年の初めと考えられ、23歳になったばかりの頃でしょう。
 第1楽章 アレグロ・モデラートの冒頭の主題のなんともいえぬ快さは、誰もが魅きつけられましょう。
 第2楽章 アンダンティーノ・ソステヌート・エ・カンタービレの冒頭、ピアノが唱いだす主題の美しさもまた格別です。
 第3楽章 アレグロは変ロ長調のロンドーで、8分の3拍子が中心ですが、中間部は3連音を中心とした4分の4拍子で、活気に溢れております




出演者のプロフィール

神谷未穂(ヴァイオリン)

4歳よりピアノを、6歳よりヴァイオリンを始める。桐朋学園子供のための音楽教室(鎌倉分室)、桐朋女子高等学校を経て、桐朋学園大学、ハノーファー音楽大学をそれぞれ首席で卒業。ハノーファー音楽大学ソリスト・クラスに文化庁派遭芸術家在外研修員として再び留学。安田生命クオリティオプライフ文化財団、ロームミュージックファンデーションの奨学金を得て現在同クラスに留学中。

 北九州国際室内楽音楽祭にてTOTOタフモプライズ室内楽(デュオ)第1位、テイボール・ヴァルガ国際ヴァイオリンコンクール「パガニーニ賞」、オーストリア国際室内音楽祭賞などを受賞。プラハ室内管弦楽団など内外の一流管弦楽団と共演している。


松井香織(ピアノ)

桐朋女子高等学校音楽科を経てミラノ・ヴェルディ国立音楽院ピアノ科演奏科コースを首席で卒業。その後イモラ音楽院、ノヴァラピアノアカデミーを経てイタリア各地にて演奏活動を活発に行なう。98年トルトーナ国際音楽コンクールピアノ部門第2位、同時に現代曲最優秀賞受賞。そのほか内外のコンクールに受賞している。現在、昭和音楽大学助手。