湘南モーツァルト愛好会のトップ

   

第77回例会の内容紹介

 オリジナル楽器によるモーツァルトの演奏 

  平成15年6月22日 14:00 藤沢リラホール 
  
    フォルテピアノ:第1奏者  渡邊順生
            第2奏者  崎川晶子


  2台のクラヴィーアの為のラルゲットとアレグロ 変ホ長調 (K.なし)
  2台のピアノの為のソナタ   K448
  4手の為のピアノソナタ     K521   他




当日のプログラムより

                                井上 太郎

曲 目 解 説

♪モーツァルトの4手のためのピアノ作品

 4手のための作品と言いますと、1台のピアノを2人で弾く連弾と、2台の楽器を使って合奏するものとがあります。今日はこの二つの演奏が行なわれます。
 使われるフォルテピアノという楽器はモーツァルト時代のピアノで、現代のピアノとは違うところがいろいろとあります。これについては、渡邊さんから実際に楽器を鳴らしての詳しい説明があることでしょう。
 モーツァルトの4手のための作品には、1765年5月にロンドンで姉と連弾をしたK.19dという作品がありますが、これは2段鍵盤のチェンバロのために書かれたもので、後のフォルテピアノのものとは違います。
 今日演奏される曲はいずれもフォルテピアノを使いウィーンで活躍するようになってからのものです。


♪2台のピアノのためのラルグットとアレグロ
 変ホ長調 K.なし


 この作品にケッヘル番号がついていないのは、1950年代までモーツァルトの作品ではないとされていたからです。それはこの自筆楽譜を一時所有していたオーストリアのルードルフ大公がこの楽譜の最後に「この自筆楽譜は騎士グルックの作曲によるものに相違ない」と書き込んだからなのです。もともとはモーツァルトの遺産の中にあったもので、夫人のコンスタンツェの希望によりシュタードラーにより完成されました。
 ルードルフ大公の手からクロムイジェル城古文書館に移ってからもグルックの作品とされておりましたがその後の研究によりモーツァルトの作品であることが判明し、1964年に出た新全集に収録されました。
 作曲時期は1781年秋と思われます。冒頭35小節のラルゲットは完成されており、続くアレグロには未完の部分がありますが、シュタードラーの補筆はよくまとまっており、ギャラントな楽しさが感じられます。

♪連弾のためのピアノ・ソナタ ハ長網 K.521

 自筆楽譜には1787年5月26日と明記され、友人に手紙を添えて送っております。それによると、友人の妹のために作ったが、少しむずかしいとあり、出版に際しては別の姉妹に献呈しております。

 第1楽章アレグロは力強いユニゾンで始まります。これと16分音符の華やかなパッセージが、コンチェルトのように呼び合いながら流れて行きます。
 第2楽章アンダンテはへ長調でゆったりと始まります。中間部では32分音符の暗い音の波がニ短調で起伏しますが、やがてへ長調の主題に戻って終わります。
 第3楽章はハ長調で、アレグレットの主題で始まります。この主題はちょっとユーモラスな楽しいものです。


♪2台のピアノのためのソナタ ニ長調 K.448


 モーツァルトが2台のピアノのために書いたソナタで完成作はこれだけです。作曲されたのは1781年の秋、つまりザルツブルクの大司教に辞表をたたきつけて郷里を離れ、ウィーンで自立した音楽家の道を選んで間も無くの時期のことで、この作品を1781年11月23日の演奏会でヨゼファ・アウエルンハンマーという優れた弟子と弾いたことを父宛の手紙で報告しております。また、1784年6月13日の演奏会でも弟子のバルバラ・プロイヤーと演奏しており、彼にとって重要なレパートリーであったと考えられます。
 渡邊順生著『チェンバロ・フォルテピアノ』には、1780年代の初頭のウィーンにおけるピアノの製作が、まだ黎明期であったけれども、短期間に急速な発展を遂げていた経緯が詳細に書かれておりますが、この作品もその観点から見れば興味深いものがあります。

 第1楽章アレグロ・コン・スピリートはニ長調の主和音とトリルを伴う力強いユニゾンで始まります。ソナタ形式で書かれており、第1ピアノと第2ピアノが同じ主題を模倣し合うところが随所に出てきます。
 第2楽章アンダンテはト長調で、第1ピアノが旋律を唱い、第2が伴奏する形で始まります。
 第3楽章モルト・アレグロは再びニ長調に戻り、前打音を伴う主題は生き生きと楽しく、ロンド・ソナタ形式で書かれていて、多様な楽想が次々と現れます。最後はこの主題のモティーフのユニゾンで華々しく終ります。



出演者のプロフィール

♪渡邊順生

 一橋大学社会学部卒業。アムステルダム音楽院にてチェンバロをグスタフ・レオンハルトに師事。1981年に帰国以来、古楽器演奏の啓蒙と普及に努め、指揮者、チェンバロ・フォルテピアノ及びクラヴィコード奏者として精力的に活躍。ブリュッヘン、ビルスマをはじめ欧米の名手たちとも共演多数。楽譜の校訂や論文執筆なども手がける。多数のCDをソニー、創美企画、コジマ録音、セシルレコード等よりリリース。2000年秋、著書「チェンバロ・フォルテピアノ」(東京書籍)を出版して話題となった。桐朋学園大学、東京音楽大学、国立音楽大学、上野学園大学講師。

♪崎川晶子

 桐朋学園大学ピアノ科卒業。ピアノを故井口基成、兼松雅子、ジャン=クロード・ヴァンデンエイデン、指揮伴奏を故斎藤秀雄に師事。ベルギーにてチェンバロに開眼し、シャルル・ケーニッヒ、渡邊順生、パリの古楽コンセルヴァトワールでノエル・スピース、フォルテピアノをパトリック・コーエンに師事。
 外国アーティストとも共演多数。現在ソロ・室内楽などで活躍中。音楽の泉シリーズを主催。昨年3月、ソロCDをセシルレコードよりリリースした