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第80回例会の内容紹介

 モーツァルトの弦楽四重奏曲
「ハイドン・セットの後半」
 

  平成15年11月30日 14:00 藤沢リラホール 
  
古典四重奏団 QUARTETTO CLASSICO

♪ヴァイオリン 川原 千真
♪ヴァイオリン 花崎 淳生
♪ヴィオラ   三輪 真樹
♪チェロ    田崎 瑞博


弦楽四重奏曲変ロ長調〈狩〉K.458
第1楽章アレグロ・ヴィヴァーチェ・
アッサィ
第2楽章メヌエットモデラート
第3楽章アダージョ
第4楽章アレグロ・アッサィ

弦楽四重奏曲イ長調K.464
第1楽章アレグロ
第2楽章メヌエット
第3楽章アンダンテ
第4楽章アレグロ(・ノン・トロッボ)

弦楽四重奏曲ハ長調〈不協和音〉K.465
第1楽章アダージョアレグロ
第2楽章アンダンテ・カンタービレ
第3楽章メヌエットアレグレット
第4楽章アレグロ(・モルト)




当日のプログラムより

                                井上 太郎

曲 目 解 説

モーツァルトの父レーオポルトが1785年2月16日付で娘に送った手紙に、こう書いている。「土曜日の晩には、ヨーゼフ・ハイドンと、それに二人のティンティ男爵が私たちのところを訪ねてこられ、新作の四重奏曲が演奏されました。でも、すでにある他の3曲につけ加えた新しい3曲だけが演奏されたのです。これらの曲は、たしかにちょっとばかり軽いものだが、構成は素晴らしいものです」
つまり今日のコンサートと全く同じ曲目が演奏されたのである。この時、第1ヴァイオリンはレーオボルト、第2は作曲者ヴォルフガング、ヴィオラとチェロは2人の男爵が受け持ったと考えられる。
その日に招かれたハイドンは53歳で、モーツァルトより24歳年上だった。この時ハイドンは作曲者の父親にこう告げたのである。「私は誠実な人間として神の御前に誓って申し上げますが、御子息は、私が名実ともども知っている最も偉大な作曲家です。御子息は様式感に加えて、この上なく幅広い作曲上の知識をお持ちです」
(以上の引用はいずれも高橋英郎訳)
当時最高の名声を得ていたハイドンからのこの賛辞に答えて、モーツァルトはこれら曲の出版にあたり、6曲を自分の息子に譬えて、長文の献呈の辞を書いている。その中に「長くつらい労苦の結実」という言葉があることを見逃すことが出来ない。あれほど沢山の
曲を書いたモーツァルトが、こういう言葉を残しているのは、ここだけだからだ。
モーツァルトは当時出版されたハイドンの弦楽四重奏曲作品33の6曲を範としながら、自分独自のものを作り出そうと努力したからに違いなく、自筆楽譜を見ると、多くの訂正個所があり、苦心の跡が歴然と残っている。しかもこれらは、注文作品の合間に自主的に作ったものだったので、着手してから6曲を完成するまでに3年を費やしているのである。

♪弦楽四重奏曲変ロ長調〈狩〉K.458
1784年11月9日の日付を持つこの曲は〈狩〉の愛称があるように、このセットの中で最も知られている。
第1楽章は8分の6拍子の生き生きとした主題で始まる。一点の曇りもない、心弾む音楽である。
第2楽章はチャーミングなメヌエット。
第3楽章のアダージョは、この曲の中で最も深い表現を示しており、感動的である。
第4楽章は軽快なフィナーレで、対位法の技術の見事な展開が見られる。

♪弦楽四重奏曲イ長調K.464
1785年1月10日の日付のこれは、セットの中で長大で、構成的に作られている。ベートーヴェンはこの曲を特に研究したらしく、筆写したものが残っている。
第1楽章は緩やかに下降する主題と、力強いユニゾンの主題よりなるが、これが様々に形を変えて、ほかの楽章の主題にも関わっているのである。そのことは第2楽章のメヌエットを聴けは納得できるだろう。
第3楽章は変奏曲で、中間に短調の部分がある。
第4楽章の主題は正しく第1楽章の冒頭主題の変形である。

♪弦楽四暮奏曲ハ長調〈不協和音〉K.465
前の曲の4日後に完成されたこの曲は、このセットを締め括るにふさわしい傑作だ。第1楽章の冒頭のアダージョが強烈な不協和音を伴って始まるのは、主部のアレグロの晴朗さを際立たせるためであろう。
第2楽章の主題がクッキリとしたカーヴを描く美しさと、それに続く明暗の交錯する部分は特に素晴らしく、この曲の聴きどころと言ってよい。
第3楽章のメヌエットはスケルツォ風である。中間部には、暗い情熟が躍動するハ短調のトリオが配されていて、聴き手を引きつけてやまない。
第4楽章は軽快なアレグロ。この楽章では変幻自在な転調の面白さが聴きどころである。


出演者のプロフィール

古典四重奏団 QUARTETTO CLASSICO

♪ヴァイオリン 川原 千真
♪ヴァイオリン 花崎 淳生
♪ヴィオラ   三輪 真樹
♪チェロ    田崎 瑞博

1986年、東京芸術大学及び同大学院卒業生により結成。レパートリーはJ.S.バッハから現代に至るまで60数曲にのぽり、そのすペてを暗譜で演奏する。

これまでにモーツァルトの「ハイドン・セット」全曲、バルトーク全曲、ショスタコーヴイチ主要5曲、ベートヴェン弦楽四重奏曲全16曲の演奏会を開催。96年ニューヨークの鬼才スティーヴ・ライヒと日本人としては初めて「デイファレント・トレインズ」を共演。97年度、弦楽四重奏団としては初めて「村松賞」を受賞。

97年より東京芸術大学付属高校において弦楽四重奏のレッスンを受け持つ。99年、国際交流基金の助成を受けてギリシャ公演を行なう。CDはベートーヴェン後期全集(第12番〜第16番・全4枚)、バッハの《フーガの技法》などをリリース(ewe records)。03年よりavex-CASSICS の専属アーティストとなり、シューベルトの《死と乙女》をリリース。