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第86回例会の内容紹介



オーケストラ・アンサンブル・金沢のメンバーによる
   弦楽五重奏曲

平成16年10月17日 14:00 藤沢リラホール 

出演

第1ヴァイオリン 坂本久仁雄
第2ヴァイオリン 上保 朋子
第1ヴィオラ   石黒 靖典
第2ヴィオラ   内山 隆運
チェロ      大澤  明


プログラム

モーツァルト作曲
♪ 弦楽五重奏曲 卜短調 K.516

   第1楽章 アレグロ
   第2楽章 メヌエット アレグレット
   第3楽章 アダージョ・マ・ノン・トロッポ
   第4楽章 アダージョ/アレグロ

♪ 弦楽四重奏曲 ニ長調 K.499

   第1楽章 アレグレット
   第2楽章 メヌエット アレグレット
   第3楽章 アダージョ
   第4楽章 (モルト)アレグロ

♪ 弦楽五重奏曲 ニ長調 K.593

  第1楽章 ラルゲット/アレグロ
  第2楽章 アダージョ
  第3楽章 メヌエット アレグレット
  第4楽章 アレグロ



当日のプログラムより

                                井上 太郎

曲 目 解 説

♪弦楽五重奏曲 ト短調 K.516

 モーツアルトが1784年2月からつけ始めた「わが全作品日録」に、1787年5月16日と記入されているこの作品は、4月19日の日付を持つハ長調の弦楽5重奏曲(K.515)と対になるように作曲されたものと考えられる。それはト短調の40番の交響曲(K.550)と、ハ長調の41番の交響曲(K.551)との関係と同じである。
 この曲の第1楽章が上の3声部だけで始まり、8小節目からは下の3声部だけになり、18小節からやっと全部の声部が出る形は、フランスの詩人ゲオンの「走る悲しみ」という言葉にぴったりであろ。また32小節日の冒頭の短9度の飛躍は、心をえぐる悲しみの表現であろう。
 第2楽章のメヌエットもト短調で、半音階下降や減7度の和音を頻用するなど悲痛な響きが続く。
 第3楽章は変ホ長調だが弱音器をつけて始まるので晴れやかさは無く、第4楽章は再びト短調で始まる。チェロのピチカートが印象的。そして38小節目からようやく悲しみはぬぐわれ、ト長調の晴れやかな音楽に変わる。

♪弦楽四重奏曲 ニ長調 K.499

1786年8月19日の日付のこの作品はセットではなく孤立しているので、あまり演奏されないが、非常に優れた作品である。出版が目的で書かれたと思われ、完成の翌月にホフマイスターから出版されている。
 ユニゾンで始まる第1楽章はニ長調だが転調が多い。ソナタ形式では通常第2主題は第1主題の5度上(この曲の場合イ長調)で出るのだが、この曲では嬰へ短調になっている。そして3度関係の転調(ニ長調→変ロ長調など)が多く、シューベルトを思わせるところがある。
 第2楽章のメヌエットは堂々としたニ長調。トリオはニ短調で、対位法の使用が際立っている。
 第3楽章のト長調のアダージョは瞑想的な深い表現を湛えた傑作。ベートーヴェンに影響を与えたと思われる。
 第4楽章はニ長調で書かれた、奔放なアレグロ。3連音が主体のスケルツォと言ってよいだろう。

♪弦楽五重奏曲 ニ長調 K.593

1790年12月に完成されたこの曲は、3年半前に作られたハ長調(K.515)、ト短調(K.516)と肩を並べる傑作。或るハンガリー人の注文によるというが詳細は不明。
 第1楽章はチェロとほかの4声部との対話による印象深い序奏で始まる。主部のアレグロの主題は一寸ユーモラスなところがある。この主題の扱い方はまことに見事。
最後に再び序奏が出て、アレグロの主部を繰り返すと見せるが、意表をついて突然終わってしまう。
 第2楽章はト長調のアダージョで、最も感銘深い傑作である。このすはらしさを言葉では表現できない。音楽そのものに耳を傾けるしかない。小林秀雄はこの曲を聴いて名作「モオツァルト」を書こうと思ったという。
 第3楽章はニ長調の爽やかなメヌエット。トリオは分散和音の上昇とビチカートによる洒落たもの。
 第4楽草は8分の6拍子の半音階下降の主題で始まるが、これを後世の人が書き直したものが1960年頃まで使われていた。それが誤りであることがわかり、新全集では、半音階下降に改められている。この楽章での対位法の扱いは舌をまくばかりである。


出演者のプロフィール

♪坂本久仁雄(第1ヴァイオリン)
  青森県出身。武蔵野音楽大学卒業。米、ウィスコンシン大学、ノースカロライナ大学大学院、及び同大学ディプロマコースにて学ぶ。



♪上保 朋子(第2ヴァイオリン)
  砺波市出身、4歳からヴァイオリンを学ぶ。桐朋学園大学卒業。イタリア国際講習会で学び、現在フリー奏者として活躍している。


♪石黒 靖典(第1ヴィオラ)
  石川県出身。昭和音楽大学卒業。兎束俊之氏に師事する。また、室内楽等の研鎖も積む。


♪内山 隆達(第2ヴィオラ)
  富山市出身。15歳からヴァイオリンを故大澤和夫氏に師事。愛知県立芸術大学にヴィオラで入学。兎束俊之氏、百武由紀、店村眞積の各氏に師事。98年第三回若手奏者のためのコンペディション(現名古屋国際コンクール)室内楽部門(弦楽四重奏)第1位併せて県知事賞受賞。現在フリー奏者として東京を中心に活動している。


♪大澤 明(チェロ)
  富山県出身。京都市立芸術大学卒業。黒沼俊之、上村昇氏に師事する。フィレンッェでプランコ・ロッシ氏、カナダ、ニューヨークでハーヴィー・シャビロ氏に学ぶ。