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第88回例会の内容紹介


     宮 田 理 生のピアノ独奏による
    モーツァルトとシューベルトの作品

平成17年4月24日(日)午後1時より   藤沢リラホール
 
出演
     ピアノ: 宮田 理生


プログラム

  ♪モーツァルト:ピアノ・ソナタ 変ロ長調  K.281
   第1楽章 アレグロ
   第2楽章 アンダンテ・アモローソ
   第3楽章 ロンド アレグロ

  ♪モーツァルト:ピアノ・ソナタ イ短調 K.310
   第1楽章 アレグロ・マエストーソ
   第2楽章 アンダンテ・カンタービレ
   第3楽章 プレスト

  ♪シューベルト:《三つの小品》(即興曲)より
      第1曲 変ホ短調 D 946-1  アレグロ・アッサイ

  ♪シューベルト:ピアノ・ソナタ イ短調 作品164 D.537
   第1楽章 アレグロ・マ・ノン・トロッポ
   第2楽章 アレグレット・クアジ・アンダンティーノ
   第3楽章 アレグロ・ヴィヴァーチェ


当日のプログラムより

                               

曲 目 解 説

♪モーツァルト:ピアノ・ソナタ 変ロ長調 K.281
 1775年の初め頃にミュンヘンで作曲されたと考えられる6曲のピアノ・ソナタは、モーツァルトの最初のピアノ・ソナタのセットで、チェンバロやクラヴィコードに無い優れた能力を持つピアノという新しい楽器との出会いにかけた18歳の作曲者の意気込みが感じられる。

 この変ロ長調の曲は6曲セットの3番目のもので、第1楽章はトリルやアルペジオを伴う部分が多く、チェンバロ的な音色を思わせる第2楽章は変ホ長調で、冒頭の主題は弦楽器に向いているような3度の平行である。
第3楽章のロンドはこの曲の中で最も優れており、モーツァルトはここで真にピアノにふさわしい手法を自在に扱っている。全162小節という長さもそれにふさわしい。  (井上太郎)

♪モーツァルト:ピアノ・ソナタ イ短調 K.310
 これの自筆譜には「1778年パリ」とあるだけだが、この曲の異常なまでに切迫した感情の高まりを、旅先での母の死と無関係だとするヒルデスハイマーの説に、私は賛成できない。22歳のモーツァルトが出会った不幸を、音楽に込めずにはいられなかったのは当然だろう。
 イ短調の第1楽章の冒頭で、4小節にわたり低音に鳴り続けるイ音が、2小節目と4小節目で嬰トの音と不協和音を作りだすのはこの曲の性格の最初の現れと言える。展開部での符点音符の掛け合いの切迫感も凄まじい。

 第2楽章はヘ長調の表情豊かなアンダンテ・カンタービレだが、これには音の強弱の指定が沢山つけられている。こんなに多いのは、ほかに例が無いほどである。32小節から始まる左手の和音の異様な低音の連続は、第1楽章の冒頭の低音と関連すると思われる。
 第3楽章はイ短調のプレスト。4分の2という拍子がこの曲の悲劇的な最後にふさわしい。143小節から現れるイ長調の明るい部分は、母への思いであろうか。  (井上太郎)

♪シューベルト:《三つの小品》より  第1曲 変ホ短調 D 946-1
 フランツ・シューベルト(1797−1828)の即興曲と言えば死の前年に書かれた4曲ずつからなる作品90(D.899)が有名だが、これらの好評を受けて死の半年前の1828年5月に3つの即興曲が書かれている。やはり4曲の即興曲集としてまとめられるはずであったのだろうが、1曲を残したまま、死後40年も忘れ去られ、出版された時には、《三つの小品》と名づけられたのである。彼にとって従来のソナタと異なるこのような自由に楽想を展開できる小品のジャンルは、彼特有のロマン的な音楽的資質を十分に発揮しやすいものだったに違いない。
 第1曲のアレグロ・アッサイは、変ホ短調という稀な調の落ち着きのない主部に対して、アンダンテとアンダンティーノの二つのエピソードが挟まれるABACAの形式を取っているが、この二つのリリカルなエピソードが作曲者のロマン性を顕著に表わしており、大変美しい。  (吉野忠彦)

♪シューベルト:ピアノ・ソナタ イ短調 D.537 作品164
 このソナタの書かれた1817年には、20歳のシューベルトは独立した作曲家への道を歩んでいた。教職も辞め、作曲の恩師サリエリの許を去った。この年にかけ3年間で《野バラ》、《鱒》など代表作を含む300にのぼる歌曲を作曲し、3月から8月にかけ、6曲のピアノ・ソナタを書いている。
 ただ彼の場合、モーツァルトやベートーヴェンなどの諸先輩とは異なり、そのピアノ曲は彼のピアニストとしての腕前を聴衆に示すためのものではなく、あくまでも仲間内での楽しみや当時音楽界を支えるまでになった市民階級(アマチュア)向けに出版することを目的としていたように思われる。
 このソナタ(第4番)は、彼の初めて完成されたソナタで、第1楽章は、冒頭など、崇拝するベートーヴェンを思わせる激しい部分もあるが、美しくシンプルな第2楽章の主題は、歌詞をつければそのまま歌曲になりそうである。   (吉野忠彦)

出演者のプロフィール
宮田 理生 みやた りう

東京に生まれ、4才からピアノを始める。桐朋女子高等学校音楽科、桐朋学園大学に学ぶ。1991年渡仏し、パリ国立高等音楽院に学び、ピアノ科、室内楽科ともにプルミエ・プリ(1等賞)を得て卒業。その後マルメゾン音楽院の国際コンクール準備課程にて学ぶ。山田富士子、ジェラール・フレミー、ジャン=フランソワ・エッセー、ベルナール・リンガイセン、セルジオ・ペルティカローリ、クリスチャン・イヴァルディの各氏に師事。

若いソリストのためのヨーロッパ・ピアノコンクール(92年)、エピナル国際ピアノコンクール(95年)、トビリシ国際ピアノコンクール(97年)等で上位入賞、ブゾーニ国際ピアノコンクールにてファイナリスト、ディプロマ受賞(97年)、トリエステ国際室内楽コンクールにてファイナリスト(01年)。

パリ・ショパン協会主催ショパン・フェスティバル、ラックドリヨン音楽祭、ゲレ音楽祭、メラノ音楽祭(ソロ・リサイタル賞受賞)、ケビレー音楽祭、モンペリエ・ラジオ・フランス・フェスティバル他多数出演し、ソロ、室内楽においてヨーロッパを中心に幅広い演奏活動を展開中。

このところ毎年、日本でリサイタルを開いているが、2002年7月、アレクサンドル・ヴェデルニコフ指揮のロシア・フィルハーモニーとラフマニノフの2番を協演し、好評を博した。現在パリ在住。