第91回例会の内容紹介


クレイン弦楽四重奏団によるモーツァルトとベートーベンの室内楽

平成17年10月23(日)午後2時より   藤沢リラホール
 
出演
   クレイン弦楽四重奏団


プログラム


モーツァルト作曲

♪弦楽四重奏曲第1番 K.80
 
♪弦楽四重奏曲第17番「狩」K.458

ベートーベン作曲

♪弦楽四重奏曲第4番 Op.18-4


当日のプログラムより

                               

曲 目 解 説    井上太郎

♪モーツァルト:弦楽四重奏曲 ト長調 K.80

 彼が初めて書いたこの弦楽四重奏曲の自筆楽譜には「1770年3月15日夜7時ローディにて」という書き込みがある。これほど時間と場所が詳しく書かれている曲はない。ローディとは、ミラノからボロー二アへ向かう途中の町で、最初のイタリア旅行の時に泊まったところである。
モーツァルトはこのとき14歳であった。彼はこの曲に強い愛着を持っていたらしく、8年も後に父への手紙に、「ローディの宿屋で夕刻に作った四重奏曲」とこの曲のことを書いている。
 この曲は第1楽章がアダージョ、第2楽章がアレグロ、第3楽章がメヌエットで、第4楽章のロンドは4年後に付け加えたものらしい。 私はこの第1楽章に、あるおだやかな夕暮れを想像せずにはいられない。

♪モーツァルト:弦楽四重奏曲 変ロ長調 K.458

 ≪狩≫という愛称で呼ばれているこの曲は、1785年にハイドンへの献辞を添えて出版された6曲のセットの中の1曲である。いわゆる「ハイドン・セット」と呼ばれるこれらについて、モーツァルトは献辞の中に「まことに長くつらい労苦の結実」と言っている。彼はこのセットで弦楽四重奏曲の真の作曲法を会得したのである。ハイドンはそれを高く評価したのであった。
 セットの中でこの曲が最もポピュラーなのは愛称のせいばかりではなく、明るく親しみやすいからだろう。
 第1楽章は8分の6拍子のアレグロで、一点の曇りもない、心の弾む音楽である。第2楽章はチャーミングな主題のメヌエット。第3楽章のアダージョは、この曲の中で最も深い表現を持っている。第4楽章はハイドン風の軽快な曲だが、その中に対位法の技術の見事な展開が見られる。 

♪ベートーヴェン:弦楽四重奏曲 ハ短調  作品18-4
 
 1770年ボンで生まれたベートーヴェンが1787年にウィーンへ行った時、モーツァルトに会い、教えを受けたかどうかはハッキリしない。その時の滞在期間がわずか2週間だったことは、母の危篤の知らせを聞いたからである。ウィーンへ再び行ったのはモーツァルトが死んだ翌年の1792年のことだった。彼はハイドンに師事したが、師というよりも追い抜くべき存在だったのである。
 彼はハイドンとモーツァルトの弦楽四重奏曲を筆写し、徹底的に研究した。そして初めてこのジャンルの作品を書き始めるのは1798年のことである。そして作品18として6曲がまとまったのは1800年だった。その最後に書かれたのが、このハ短調の曲である。
 ベートーヴェンの作品18の6曲の弦楽四重奏曲の中で短調のはこれだけである。ハ短調という調は交響曲第5番を始めとする代表作に使われており、彼にとって特別意味があったと考えられる。
 この曲は4つの楽章よりなるが、緩徐楽章が無い。強いて言えば第2楽章だが、これはスケルツォで、テンポの指定はアンダンテ・スケルツォーソ・クヮジ・アレグレットである。第1楽章はハ短調の重厚な主題で始まる。第2楽章はハ長調で、同時期に書かれた交響曲第1番の第2楽章に似ている。第3楽章はハ短調のメヌエットだが、3拍目を強調する指定なので、通常のメヌエットの優雅さを否定しているような趣きを持つ。トリオは変イ長調で第1ヴァイオリンが3連音を続ける。第4楽章はハ短調のアレグロ。最後はプレスティシモという非常に早いテンポになって曲を結ぶ。



出演者のプロフィール


クレイン弦楽四重奏団

 1991年結成。CD"気軽にSQクラブ"「#4弦楽四重奏による松任谷由美 作品集II」「#5竹内まりや 作品集」「#6山下達郎 作品集」、角川映画「アルスラーン戦記I,II,III,IV」、NHK新日本紀行「火の国阿蘇」等コンサート、録音、放送で活躍中。また2002年から、ベートーヴェンの作品を中心とした自主公演を年数回開催している。

メンバー紹介

飯島 多恵(第1ヴァイオリン)

武蔵野音大卒、同大学院終了。兎塚龍夫、ルイ・グレーラー、A・リシー、R・マスターの各氏に師事。現在、室内楽、ソロコンサート、録音等で活躍中。武蔵野音大講師。

増田 加寿子(第2ヴァイオリン)

武蔵野音大卒、同音楽院終了。宮内洸、田中千香士、萩原耕介、レイ・ハークス、ロバート・ダヴィドヴィッチの各氏にヴァイオリンを、ウルリッヒ・コッホ氏に室内楽を師事。現在、武蔵野音大講師。

宇佐美 久江(ヴィオラ)

桐朋大学在学中、ヴァイオリンからヴィオラ科に転科。鈴木京子氏にヴァイオリンを、ヴィオラを江戸純子、ミルトン・トーマス氏に師事。現在、ソロ、室内楽、放送録音等フリー奏者として活躍中。

前田 善彦(チェロ)

武蔵野音大卒。フォルトゥーナ弦楽四重奏団のメンバーでもあるが、クラシックの活動に止まらず、グループ「アコースティック カフェ」参加のほか、様々なジャンルのアーティストと共演し、録音も多い異色の演奏家。武蔵野音大講師。




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