| 第92回例会の内容紹介 |
平成17年11月20(日)午後2時より 藤沢リラホール |
| 曲 目 解 説 井上太郎 |
♪モーツァルト: アダージョ ホ長調 K.261 モーツァルトは1775年にヴァイオリン協奏曲の2番から5番までを一気に書いているのだが、このアダージョの自筆譜には「1776年」とあるので、ザルツブルクの宮廷楽団のコンサートマスターだったブルネッティのために、第5番の協奏曲の第2楽章の代替楽章として書かれたものと考えられている。弱音器をつけたヴァイオリンと管楽器に先導されて独奏ヴァイオリンが同じ主題を奏して始まる。中間にロ短調の部分があるが、全体におだやかなホ長調の曲調が実に美しい。最後の近くにカデンツァもついている。 ♪モーツァルト: ディクシットとマニフィカト ハ長調 K.193 ディクシットとマニフィカトいうのは、カトリックの聖務日課で日没のときにおこなわれるヴェスペレ(晩課)の6つの章の最初と最後の2つの章のことである。 モーツァルトには全6章に音楽をつけたものが2曲ある(K.321, K.339)が、この曲のように最初の章と最後の章に曲をつけたのは、これだけである。 作曲年代は1774年7月で、ザルツブルクの大聖堂で初演されたものであろう。編成はソプラノ、アルト、テノール、バスの独唱者と、混声合唱。オーケストラはトランペット2、トロンボーン3、ティンパニ、ヴァイオリン2部、バス、オルガンの編成で、歌詞はダビデ作「詩篇110」よりとられたものである。 ディクシットはハ長調のアレグロで始まる。途中にイ短調のアンダンテが入るが、全体に明るい曲想で書かれており、複雑な多声の処理が見事である。 マニフィカトは新約聖書の「ルカによる福音書」の中にある「マリアの賛歌」が歌詞で、この曲では二重フーガが多く使われており、18歳にしてすでに教会音楽の技法を完璧にこなしているのである。 ♪レーオポルト・モーツァルト: トランペット協奏曲 二長調 モーツァルトの父のレーオポルト(1719-87)の作品で知られているのは≪おもちゃの交響曲≫くらいであろう。彼は1756年、つまり息子アマデウスが生まれた年に、名著といわれる『ヴァイオリン教程』を出した。そして翌年にザルツブルク宮廷の室内作曲家に任命されている。それ以後、交響曲や教会音楽などを作っているが、息子の教育を第一と考えてそれに全力をそそいだ。そのため作品の数は少ない。このトランペット協奏曲は全9楽章よりなるセレナードから第4,5楽章を採ってトランペットの名手シャハトナーのために作ったものである。 ♪モーツァルト:自動オルガンのためのアダージョとアレグロ へ短調 K.594 自動オルガンとは時計に組み込まれたオルガンのことで、小さいパイプを使った甲高い音しか出ない。しかしこの曲にはそのような音が出てこないので、この曲は自動オルガンを使って苦労して書いているとモーツァルトがフランクフルトから妻宛てに送った手紙に触れている曲ではなく、1791年にラウドン元帥の霊廟で鳴らされた葬送音楽だろうというのが、最近の定説となっている。へ短調のアダージョの静かな部分が前後にあるが、核心は中間のへ長調のアレグロの部分であろう。 ♪モーツァルト:ミサ曲 ハ長調「戴冠式ミサ」K.317 1777年から1年半にわたるパリ、マンハイム旅行から帰ったモーツァルトは、宮廷オルガニストに任命される。彼はまずザルツブルクの大司教の気に入るミサ曲の作曲にかかる。これが3月に完成したこのミサ曲なのである。この曲の特色はフーガなどの難しい技法を一切使っていないことで、4人の独唱者の活躍する部分が多くあり、オペラ的なところもある。つまりミサ曲としては大変親しみやすいので、こんにちでも演奏の機会が多い。 この曲は19世紀以来、ザルツブルク近郊のマリア・プライン巡礼教会でのマリア像の戴冠記念に結びつくものとされ、「戴冠ミサ」と呼ばれていたが、最近になって1791年に行われたレーオポルト2世か、翌年のフランツ2世の戴冠式にこのミサ曲が演奏された可能性が高いとされ、「戴冠式ミサ」とよばれるようになった。 編成は4人の独唱者に混声合唱。オーケストラはオーボエ2、ホルン2、トランペット2、トロンボーン3、ティンパニ、ヴァイオリン2部、バス、オルガンである。 第1章キリエは「主、哀れみたまえ」である。 第2章グローリアは「神の栄光の賛歌」は輝かしい。 第3章クレドは「信仰宣言」で最も長い。 第4章サンクトゥスは「感謝の賛歌」。 第5章ベネディクトゥスは「主への賛歌」。 第6章アニュスデイは「神の小羊」だが、この章はソプラノの独唱で始まる。そして最後は合唱で終わる。 ♪モーツァルト作曲:教会ソナタ ハ長調 K.278 ミサの切れ目に演奏される教会ソナは、ザルツブルク独特のものだったという。通常グローリアとクレドの間で演奏されたらしい。小型のオルガン協奏曲の趣きを持つ。 |
| 出演者のプロフィール |
指揮 牧野成史 武蔵野音楽大学、オーストリア国立モーツァルテウム音楽大学を経てスイス・バーセル音楽大学、同大学院を最優秀で卒業。声楽と室内楽のディプロム並びに、国家演奏家資格を取得。1986年にハンブルク国立歌劇場と客演契約を結ぶ。現在、ザルツブルク大聖堂専属ソリスト・客演指揮者、同フランチスカーナ教会・客演指揮者、所沢バッハ・アカデミー、横浜モーツァルト・アカデミーの音楽監督・常任指揮者をつとめる。 指揮 小津準策 国立音楽大学声楽科卒業。現在、桐朋学園大学指揮教室生。声楽と合唱指導法を牧野成史氏に、指揮法を上杉隆治、紙谷一衛の両氏に師事。横浜モーツァルト・アカデミー、所沢バッハ・アカデミーの指導アシスタントとして研鑽中。 ソプラノ 石田美樹子 国立音楽大学卒業。声楽を牧野成史、大石正治、鈴木比都美の各氏に師事。2000年に劇団四季オーディションに合格。「オペラ座の怪人」に出演。現在、所沢バッハ・アカデミー研究生として研鑽中。 メゾソプラノ 小関奈々 国立音楽大学声楽科卒業。卒業後ウィーンへ留学、ケイ・ウィリアムス氏に歌曲を学ぶ。ロバート・ホル氏による当地マイスタークラスでデュプロマ(宗教曲・歌曲)を取得。帰国後、主に教会音楽のソリストとして活躍している。声楽を牧野成史氏に師事。バッハ協会(山田康弘主宰)専属ソリスト。 テノール 坂本貴輝 桐朋学園大学声楽科卒業。同大学研究科修了。二期会オペラスタジオマスタークラス修了。修了時に優秀賞を受賞。数々のオペラに出演。宗教曲やオラトリオなどのソリストとしても活躍している。現在、桐朋芸術短期大学嘱託演奏員、東京アナウンス学院講師、フェリス女学院大学音楽学部副手、東京ミュージック&メディアアーツ尚美助手。二期会会員。 バリトン 井口和彦 国立音楽大学声楽科卒業。声楽をクルト・ヴィドマー、牧野成史の両氏に師事。バッハの教会カンタータや宗教曲のソリストとして、多数のコンサートに出演。またカザルスホールにおいて、テレマンの「マルコ受難曲」イエス役をつとめ好評を博す。現在横浜モーツァルト・アカデミー、所沢バッハ・アカデミーの指導アシスタント。 ヴァイオリンソロ・コンサートマスター 浜野考史 東京音楽大学卒業。国内外の音楽祭や数多くのアンサンブルのメンバーとして出演。1997年より東京シティフィルハーモニック管弦楽団に在籍しコンサートマスターを務めた。現在ソリスト、室内楽奏者、ゲストコンサートマスターなど幅広い演奏活動を行っている。 トランペット 築地徹 東京芸術大学音楽学部器楽科卒業、1994年オーストリア政府給費留学生としてウィーン国立音楽大学(現ウィーン大学音楽学部)に留学。トランペットをJ.Pomberger、W.Singer、H.P.Schuh、北村源三各氏に師事。現在、シンフォニッシェ・アカデミー東京、ミュージック・エンライトメント・アカデミー、東京ヒストリカルブラスのメンバー。 チェンバロ・オルガン 刈屋公延 国立音楽大学卒業。在学中より伴奏者として多くの演奏会に出演。オルガンを故カール・リヒターの高弟、竹前光子氏に師事し、伝統的ドイツ・オルガン奏法を学び、活躍の場を広げている。 1999年より所沢バッハ・アカデミーの第一ピアニストに就任した。 バッハ・アカデミー管弦楽団 1999年所沢バッハ・アカデミー(音楽監督・常任指揮者牧野成史氏)の定期演奏会を期にスペシャリストをそろえ本格的な活動を開始。毎回高度な演奏を提供している。特に宗教曲など合唱ならびに声楽との演奏経験が豊富なメンバーは在京オーケストラのトップ奏者およびソリストから構成されている。合唱団との共演に加えて、教会音楽に関係するジャンルでの試みも注目されている。 横浜モーツァルト・アカデミー 1997年10月設立。音楽監督の牧野成史氏のもと約50人の混声合唱団である。モーツァルトの教会音楽を中心に演奏のされることの少ない作品など広く紹介研究していくことを目標としている。1998年5月の創立演奏会では「グレートミサ」を演奏。同年11月第2回定期公演ではドイツの宗教音楽の権威レオ・クレマー氏を招きレクイエムを熱演。 1998年よりメンバーはザルツブルク音楽祭に参加、毎回高い評価を受けている。 |
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