第102回例会の内容紹介


OEKのメンバーによるモーツァルトの室内楽

平成19年9月9日(日)午後2時より   藤沢リラホール 



プログラム

出演

   松井 直(Vn)  竹中 のりこ(Vn)  石黒 靖典(Va)
   内山 隆達 (Va)  大澤 明(Vc)
   ゲスト出演:ルドヴィート・カンタ(Vc)

曲目
♪ 弦楽5重奏曲 変ロ長調 K.174
♪ 弦楽5重奏曲 ハ長調 K.515
♪2つのヴァイオリン、2つのヴィオラ、2つのチェロの為の協奏的大六重奏曲  変ホ長調 
  (原曲: ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲 変ホ長調 K364)


当日のプログラムより

                                     井上 太郎 

曲 目 解 説

 ♪弦楽五重奏曲 変ロ長調 K.174

 この曲はモーツァルトが1773年にイタリアから帰国して間もなく、ザルツブルクの同僚であったミヒャエル・ハイドンの作品に刺激されて書いたものである。当時17歳であったモーツァルトは、先輩のやり方をただ真似するだけでなく、独自のものを作ろうと苦心したらしく、第3楽章のトリオと、第4楽章の初稿が残っている。これと決定稿とを比較すると、彼の作曲がどのようにおこなわれたかがわかる。
 後年の傑作のもととなったこの作品で顕著なことは、第1ヴィオラを第1ヴァイオリンと対比させるところが多いことで、第2楽章がそうである。
 第1楽章では弦楽四重奏にヴィオラが加わったという感じだが、仕上がりはすばらしい。第3楽章のメヌエットもよいが、第4楽章のアレグロが特に優れている。
 なお彼は後年になってもこの作品に愛着をもっていたらしく、筆写譜を作って知人に送っている。

♪弦楽五重奏曲 ハ長調 K.515

 この曲はモーツァルトの器楽曲の中で最も長大な曲で、1149小節もある。交響曲第41番「ジュピター」を200小節もしのいでいるのだ。筆写譜には訂正箇所が多く、それだけに充実した内容をもち、彼の室内楽作品の中で最高傑作のひとつと言ってよい。
 完成の日付は1787年4月19日である。彼はこの作品に続いてト短調K.516の弦楽五重奏曲を書いているのは、いわゆる「3大交響曲」のように、3曲まとめて出版しようと考えていたからであろう。しかし3曲目は旧作のハ短調の管楽八重奏のセレナードK.388の編曲で間に合わせている。それというのも彼はこれの出版で、借金を返すつもりだったからである。しかし新聞に出した予約者募集の反響はわずかで、出版は延期せざるをえなかった。
 しかしこの曲をハイドンをまじえて演奏したと考えられる記録があるのだ。
 第1楽章は壮大な趣きの傑作である。
 第2楽章では第1ヴァイオリンと第1ヴィオラの対話が聴きどころである。
 第3楽章は全音階的なメヌエットと半音階的なトリオの対比が面白い。
 第4楽章はハイドンへのオマージュであろう。

♪2つのヴァイオリン、2つのヴィオラ、2つのチェロ
  のための協奏的大六重奏曲 変ホ長調 


 この曲は「ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲 変ホ長調 K.364」の編曲である。編曲者はわからないとのことなので、解説は原曲によることをお断りする。
 作曲はパリ旅行から帰って半年ほどたった1779年の夏と考えられる。彼はパリで「フルート、オーボエ、ホルン、ファゴットのための協奏交響曲 K.Anh.9(297B)」を書いたのだが上演されず、楽譜も失われる結果となってしまった。
 しかしパリやマンハイムで流行していたこのジャンルの曲をぜひ作りたいと考え、早速取り掛かったと思われる。原曲は2本のオーボエと2本のホルンが入っている。オーケストラのヴァイオリンの部分が第1と第2に分かれているのは通常のものと同じだが、ヴィオラが第1と第2に分かれているのは珍しい。チェロとコントラバスはオクターブの平行で演奏される。
 ソロのヴァイオリンは変ホ長調の指定だが、ヴィオラの楽譜はニ長調になっている。つまり半音低い調で書かれているのである。従って演奏者は4本の弦を半音高く調弦しなくてはならない。これによりヴィオラの音が通常より輝かしくなるのである。
 この曲が協奏曲の中でも異色の傑作とされているのは、それ以前に書かれたヴァイオリン協奏曲より重厚な趣きをもっているからである。第1楽章と第2楽章にはカデンツァがついているが、ハ短調で書かれた第2楽章のそれは、悲劇的なオペラの二重唱を思わせる。これはパリ旅行で死んだ母への思いの表れであろうか。

◎演奏者のプロフィール

松井 直 (第1ヴァイオリン)
1988年桐朋学園大学音楽学部を首席卒業。89年同学研究科を修了。91年イタリア・キジアーナ音楽院夏期コースに奨学金を得て参加、ディプロマ名誉賞を取得。89年よりオーケストラ・アンサンブル金沢団員。94年コンサートマスターに就任。

竹中 のりこ (第2ヴァイオリン)
東京音楽大学を首席で卒業、同大学研究科修了。03年第1回東京音楽コンクール入選、ハノーファー・サマーフェスティバルに招待出演。05年オーケストラ・アンサンブル金沢に入団。
石黒 靖典 (第1ヴィオラ)昭和音楽大学卒業。ヴィオラを兎束俊之氏に、室内楽を菅野博文、川上久雄の両氏に師事。1988年よりオーケストラ・アンサンブル金沢に所属し、室内楽の演奏も積極的に行っている。

内山 隆達 (第2ヴィオラ)
 富山市出身。15歳からヴァイオリンを故大澤和夫氏に師事。愛知県立芸術大学にヴィオラで入学。98年第三回若手奏者のためのコンペティション(現名古屋国際コンクール)室内楽部門(弦楽四重奏)第1位併せて県知事賞受賞。

大澤 明 (チェロ)
  1960年富山市生まれ。京都市立芸術大学音楽学部卒、安部賞受賞。フィレンツェ・ケルビーニ音楽院で学ぶ、86年斎藤秀雄賞受賞。(故)黒沼俊夫、上村昇、フランコ・ロッシ、ハーヴィー・シャピロの各氏に師事。

ルドヴィート・カンタ (チェロ:特別出演)
 1957年生まれ。生地スロヴァキア共和国のブラティスラヴァやプラハの音楽院で勉学後、87年、スロヴァキア・フィルのソロ奏者に就任。90年以来オーケストラ・アンサンブル金沢の首席チェロ奏者を勤め、以来ソリストとしてNHK交響楽団など多くのオーケストラと協演している。



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