| 第116回例会の内容紹介 |
♪Quartet「楽」によるモーツァルトとシューベルトの弦楽四重奏曲
2010.1.24(日)14:00〜17:00 鎌倉商工会議所ホール(第116回)
出 演
Quartet「楽」
依田 真宣(1st Vn) 竹内 弦(2nd Vn)
冨田 大輔(Va) 市 寛也(Vc)
曲 目
モーツァルト作曲
♪ 弦楽四重奏曲第4番 ハ長調 K.157
♪ 弦楽四重奏曲第16番 変ホ調 K.428
シューベルト作曲
♪弦楽四重奏曲第14番 ニ短調 D810 「死と乙女」
当日のプログラムより
|
| 曲 目 解 説 |
井上 太郎 ・吉野 忠彦
♪ 弦楽四重奏曲 第4番ハ長調K.157
オペラ「ルーチョ・シッラ」の初演のためにミラノへ赴いた16歳のモーツァルトは1772年末から1773年の初頭にその地で6曲の弦楽四重奏曲を作曲した。ここではまだその道の先達ハイドンの弦楽四重奏曲の影響を全く受けておらず、形も内容も明るい「イタリア風」の構成で、この第4番は3楽章からなり、ソナタ形式の2つの楽章を軽快なロンドの終楽章が結んでいる。その前後のK156、158、159と同様に、第2楽章が短調で善かれており、多感な少年の感情の露出が実に強い印象を残す。
第1楽章アレグロ ハ長調、4分の4拍子。
第2楽章アンダンテ ハ短調、8分の3拍子。
第3楽章プレスト ハ長調、4分の2拍子。 (吉野 忠彦)
♪ 弦楽四重奏曲 第16番 変ホ長調 K.428
弦楽四重奏曲を20余り残しているモーツァルトがハイドンに捧げた6曲のセットは、最も有名なもので代表作と言える。モーツァルトがウィーンに居を定めた翌年、1782年の4月にハイドンの新しい弦楽四重奏曲の6曲セットが作品33として、モーツァルトとも関係の深いウィーンのアルタリアから出版された。モーツァルトが10年ぶりに弦楽四重奏曲の作曲を始めたのは、これに大いに刺激されたからであろう。第1曲は1782年の大晦日に書き上げられるが、全6曲の完成には2年もの歳月をかけた大変な労作となった。
それらは1785年9月1日、ハイドンへの献辞を添えてアルタリアから作品10として出版された。この献辞には6つの作品を自分の息子に譬えて「彼らはまことに長く辛い労苦の結実」としている。
モーツァルトがこのように言っている作品はほかには無く、また自筆楽譜にはおびただしい改訂の跡が残っていて、モーツァルトがこの6曲にかけた執念が、いかにすさまじいものであったことが読み取れる。
K428は1783年半ばに完成されたと考えられるが、出版された時には4番目だった。しかし作曲年代順に、今はハィドン・セットの第3曲とされている。モーツァルトはこの曲の第1、2楽章で、当時の常識を超えた和声の可能性を追究している。
第1楽章の冒頭、ユニゾンで始まる第1主題からして調性感がぼかされており、展開部では減7の和音と呼ばれる特殊な和音が多く使われている。
第2楽章は8分の6拍子のアンダンテ・コン・モート。ここの和声の微妙な動きには約1世紀後のワーグナーの楽劇「トリスタンとイゾルデ」を思わせる所さえある。
第3楽章のメヌエットはそれまでとは全く異なった趣の明解な曲だが、トリオの短調の旋律が魅力的。
第4楽章のアレグロ・ヴィヴァーチェも引き続き活発な曲。ハイドンを思わせるユーモラスな曲想で終始している。
(井上会長が以前書かれたものを短縮)
♪ 弦楽四重奏曲第14番 ニ短調 「死と乙女」 D810
フランツ・シューベルト(1797−1826)は1820年代初めに、いくつかのオペラの上演の失敗や上演拒否の憂き目にあって失望の時が続いていたが、加えて健康の衰えをも自覚する。こうした中で1824−26年には彼の代表作ともいうべき弦楽4重奏曲が2曲作曲された。一つは13番の「ロザムンデ」で、もうひとつは珍しく2年もかけて書いたすべての楽章が短調で当時のシューベルトの絶望的な心境が色濃く反映されたものであった。それは第2楽章主題に有名な自作の歌曲の伴奏部分が取り入れられているところから「死と乙女」という名で呼ばれ親しまれるようになったが、生前には出版されなかった。曲は以下の4つの楽章からなる。
第1楽章アレグロは、ソナタ形式からなり、ブルックナーを予告するような3主題制が見受けられる(それぞれニ短調、ヘ長調、イ長調)。第13番、第15番の四重奏曲および弦楽五重奏曲の開始楽章と並んで、シューベルトの室内楽では最も規模が大きい。
第2楽章アンダンテ・コン・モートは、ト短調による変奏曲。1817年に作曲された歌曲「死と乙女」D531のピアノ伴奏部分を主題とし、それに6つの変奏とコーダが続く。
第3楽章スケルツォ:アレグロ・モルトは、スケルツォというよりシューベルトの得意としたひなびた農民の踊りレントラーのようだ。
第4楽章プレストは、タランテラのリズムによる切迫した楽章。コーダで短調から長調に転じ、盛り上がって駆け抜けるように終わる。
(吉野 忠彦)
|
◎演奏者のプロフィール
依田真宣(よだ まさのぶ) (第一ヴァイオリン)
東京生まれ。ヴアイオリンを岡山潔、ジエラール・プーレ、オレグ・クリサの各氏に師事。第4回東京音楽コンクール弦楽部門第2位ほか、数多くのコンクールにて入賞を果たす。「福島賞」、「安宅賞」を受賞。ソリストとしては仙台フィルハーモニー管弦楽団、東京フィルハーモニー交響楽団、東京交響楽団等のオーケストラと協奏曲を共演。2007年にはソロ・リサイタル開催、大阪フィルハーモニー交響楽団、東京フィルハーモニー交響楽団のゲストコンサートマスターも務めた。現在、東京芸術大学大学院音楽研究科に在学中。
竹内 弦(たけうち げん) (第ニヴァイオリン)
香川県生まれ。4歳よリヴァイオリンを始める。東京芸術大学卒業。同大学院音楽研究科修士課程修了。緑の風奨励賞受賞。2006〜2007年、シモン・コールドベルク・メモリアルセミナー参加。2007年、アドヴェントセミナー&クリスマスコンサートに参加。旧奏楽堂コンサート、芸大ラヴェル・プロジェクト、芸大室内楽定期演奏会などに出演。
これまでヴァイオリンを藤野妙子、服部芳子、原谷百代、岡山潔、松原勝也の各氏に師事。現代古楽団体、Ensemble Boisメンバー。現在、東京芸術大学非常勤講師(芸大フィルハーモニア)。
冨田大輔(とみた だいすけ) (ヴィオラ)
東京芸術大学音楽学部を卒業。同大学院修士課程修了。第3回みえ音楽コンクールヴィオラ部門第1位。第13回日本クラシック音楽コンクール弦楽部門全国大会第4位。小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクトや東京オペラの森に出演のほか、草津夏期国際音楽祭やアフイニス音楽祭などに参加。大学院に在学中、原村室内楽セミナーでは最優秀で「緑の風音楽賞」を受賞。大阪センチュリー交響楽団・関西フィルハーモニー管弦楽団・神奈川フィルハーモニー管弦楽団では客演首席奏者、横浜シンフォニエッタでは首席奏者として活躍中。これまでに野上阜三博、兎束俊之、岡田信夫の各氏に師事。
市 寛也(いち ひろや) (チェロ)
福岡市出身。東京重術大学音楽学部を経て同大学院修士課程修了。別府アルゲリッチ音楽祭、アフィニス夏の音楽祭などに参加。室内楽では、JTが育てるアンサンプルシリーズ、六花亭・期待の若手シリーズなどに出演。原村室内楽セミナーに参加し、「緑の風音楽賞」を受賞。08年夏、アンサンプルグループ「Ensemble楽市楽座」を立ち上げ活動中。チェロを関原弘二・秋津智承・宮田浩久・苅田雅治・林俊昭・河野文昭、室内楽を山崎伸子・松原勝也・岡山潔・山口裕之・市坪俊彦・故ゴールドベルク山根美代子の各氏に師事。
|
|
|