第126回例会の内容紹介


渡辺 克也と仲間たちによる室内楽

2011.9.4(日)14:00〜17:00 藤沢リラホール(第126回)

出演:
渡辺 克也(Ob)   大塚 能夫也(Fl)  チェ ヨンジン(Fg) 
吉永 雅人(Hn)   小田井 郁子(Pf)

曲目:                         
サリエリ作曲  
♪フルートとオーボエのための協奏曲  ハ長調
                 (ピアノ伴奏版)
パスクッリ作曲  
♪ドニゼッティのオペラ「ラ・ファヴォリータ」の主題によるオーボエのための協奏曲  
                 (ピアノ伴奏版)
モーツァルト作曲
♪フルート、オーボエ、ファゴット、ホルンのための協奏交響曲 変ホ長調 K.297B
      (R・レヴィン再構成によるもののピアノ伴奏版)



当日のプログラムより

曲 目 解 説

                                            吉野 忠彦
♪サリエリ:フルートとオーボエのための協奏曲 ハ長調 

 ウィーンの宮廷楽長として楽界最高の権威者でありまたベートーヴェンやシューベルト等の師としても名高いアントニオ・サリエリ(1750-1825)は1766年にウィーンの宮廷作曲家ガスマンにその才能を見いだされヴェネツィアからウィーンに連れて来られ、直ちにヨーゼフ2世に気に入られてそのオーケストラの一員となり、皇帝の音楽の練習にほぼ毎日つきあっていた。69年ごろからはオペラの作曲に本腰を入れるようになり、74年には楽長ガスマンの死に伴って24歳の若さで宮廷室内作曲家兼イタリア・オペラの指揮者に昇任、その直後にこれまた皇帝の特別のはからいで意中の女性とも結ばれるというとてつもない幸運に恵まれる。彼の作曲の本領はオペラと宮廷教会用の宗教音楽とにあり、残された交響曲や協奏曲は少ないがこの74年に作曲された協奏曲はウィーン古典派の伝統によって書かれたサリエリの器楽曲の代表作とも言うべき作品で、皇帝の寵愛を受け、結婚できた幸せな気分に満ちた実に明るい作品である。初演の詳細は不明だが、多分皇帝の命により宮廷楽団の演奏会用に作曲されたものと思われる。因みにモーツァルトの方は前年3回目のイタリア旅行から帰ってすぐにウィーンに来てマリア・テレジア皇后に謁見を賜っているが、期待していたヨーゼフとの面会は留守で叶わず、宮廷での就職はできず、ザルツブルクへ引き揚げている。この頃彼が協奏曲の分野で書いたのは初めてのクラヴィーア協奏曲第5番(K.175)である。また両者の「葛藤」は81年にモーツァルトがウィーンに定住した後、サリエリの本領であるイタリア・オペラへの進出を図ったところから生じたものと思われる。

♪パスクッリ:ドニゼッティのオペラ「ラ・ファヴォリータ」の主題によるオーボエのための協奏曲

アントニオ・パスクッリ(1842-1924)はシチリア島のパレルモ出身の当時最も著名なオーボエ・ヴィルトルオーゾ。14歳にして欧州各地を演奏旅行して名声を馳せ、18歳で故郷パレルモ音楽院の教授となったほどの演奏家で後に指揮者としての活動も行った。自分の演奏会用の曲目として特にドニゼッティ、ベッリーニ、ヴェルディなどのオペラの名作の旋律を用いてオーボエ協奏曲などに編曲している。「ラ・ファヴォリータ」はガエターノ・ドニゼッティ(1797-1848)が1840年暮にパリでフランス語で初演したグランド・オペラで14世紀のスペイン宮廷での騎士と王の愛人との悲恋物語。この曲はそのオペラの中からテノールのハイC音が出ることで有名な第4幕の「やさしい魂よ」を含む美しい抒情的な旋律と速く細かい音符の連続するパッセージの交代が印象的な難曲で、渡辺氏の超名人技をお楽しみください。

♪モーツァルト:協奏交響曲 K.297B
1778年3月、マンハイムでの就職活動に失敗したモーツァルトは母とともにかって「神童」ともてはやされたパリに到着したが、最早人々の関心を引くことは出来なかった。その中で公開演奏会「コンセール・スピリチュアル」の監督ル・グロはそんなモーツァルトに目を付けて、当時流行していた協奏交響曲というジャンルの曲を注文した。たまたまマンハイムで親交のあったヴェンドリンク(Fl)、ラム(Ob)、リッター(Fg)の3人がパリに滞在中であったためそれにもう一人ホルンの名手プントを加えた4つの管楽器をソロとする曲を彼は4月5日から2週間で書き上げた。しかし、何故かこの曲は演奏されず−−モーツァルトはカンビーニという流行作曲家の妨害を疑っている−−、挙句の果てはその騒ぎの中でオリジナルの楽譜が失われてしまうという不運に見舞われた。その後19世紀半ばになって研究家オットー・ヤーンの遺品の中から筆写譜と思われるものが発見されたが、そこでのソロ楽器編成はオーボエ、クラリネット、ファゴット、ホルンに変わっており、今日これが一般的にK297bとして演奏されている。しかし、この曲のフルートが入ったオリジナルを聴きたいというファンも多く、多くのモーツァルトの未完成作品の補筆で名高いアメリカの音楽学者ロバート・レヴィン(1974-)が統計的な手法を用いて復元した。今日はその本当に珍しい復元版をピアノ伴奏版でお楽しみ頂くことにしたが、この版によってこの曲の新たな魅力を発見される方がおられることを期待している。


◎演奏者のプロフィール

渡辺 克也(わたなべ かつや)オーボエ 

東京藝術大学卒業。在学中に新日本フィルハーモニー交響楽団に入団。90年日本管打楽器コンクール・オーボエ部門で優勝し大賞も受賞。91年よりドイツに渡り、ヴッパータール響、カールスルーエ州立歌劇場管、ベルリン・ドイツ・オペラ歌劇場管の首席奏者を歴任し、現在はソリスツ・ヨーロピアンズ・ルクセンブルクの首席奏者を務める。ソリストとしてもこれまでハンガリー放送響、スロヴァキア・フィル、都響、神奈川フィル他と共演。世界水準の美音と、超絶技巧を誇る。

大塚 能夫也(おおつか のぶや) フルート
桐朋学園大学を経て、マンハイム音楽大学大学院終了。プラハ芸術大アカデミーで研鑽を積み、在学中から南西ドイツ放送オーケストラ、フランツ・リスト室内合奏団等と多くの公演を行った。2000年以来、国内でも活動を積極的に行い、東京オペラシティや東京文化会館でのリサイタル(ボヘミアン・ロマンティック)シリーズは、高く評価されている。

小田井 郁子(おたい いくこ)ピアノ
桐朋女子高等学校音楽家を経て桐朋学園大学音楽学部ピアノ科卒業。その後、シュトットガルト音楽大学大学院卒業。現在、ベルリン音楽大学講師を勤める傍ら、室内楽を中心に演奏活動を行っている。これまでにピアノ・デュオとして、数々の国際コンクールに入賞、また伴奏ピアニストとしても、マルクノイキルヒェン器楽コンクール(ドイツ)で2度にわたって最優秀伴奏者賞を受賞。

チェ・ヨンジン ファゴット
韓国釜山生まれ。釜山芸術高等学校、韓国芸術総合学校、ハノーバー大学ソリストクラス最高課程修了。国内外有数のコンクールで入賞する。釜山市立交響楽団副首席奏者としてプロとしての活動を始め、ノルウェー・トロントハイム・シンフォニー・オーケストラ首席奏者を経て、2005年から東京フィルハーモニー交響楽団首席奏者。

吉永 雅人(よしなが まさと)ホルン
東京音楽大学付属高等学校を経て同大学卒業。その後、ミュンヘン市立リヒャルト・シュトラウス音楽院に留学。現在、新日本フィルハーモニー交響楽団首席ホルン奏者活躍する傍らソリストとして東京ホルンクヮルテット、オイロス・アンサンブル等のメンバーなどとして多方面で活躍中。東京音楽大学、桐朋学園大学、桐朋学園芸術短期大学、各講師。





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